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日経平均3万円回復、23人中20人が予想=経済正常化や米金利安定で-時事・市場参加者アンケート

2021年06月01日 14時00分

 時事通信は5月下旬、市場関係者23人を対象に先行きの株価に関する初のアンケート調査を行った。3カ月後の日経平均株価について、新型コロナウイルスの影響で停滞した経済活動の正常化や米長期金利の安定を前提に、3万円を回復する可能性があるとの予想が20人を占めた。

 一方、下値の条件については、コロナ情勢や米国の物価・金利動向が株価下振れのリスク要因として多く挙げられた。東京五輪・パラリンピック開催による感染拡大を警戒する向きもあった。米国と中国の対立に対する警戒感も根強かった。

市場参加者アンケート



◇日経平均の予想レンジと上昇・下落条件

 市場関係者へのアンケート結果は以下の通り。①は9月1日時点の予想レンジ、②はレンジの上値実現の条件、③は下値実現の条件。予想レンジには9月1日までの上値、下値の回答も含まれる。



◆新井洋子・三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフ・グローバル投資ストラテジスト

①2万3500~3万4000円

②国内でのワクチン普及ペース加速により、集団免疫の獲得が前倒しされる。米国などの財政支出で経済成長率が上振れる一方、米インフレ率上昇は一時的で金融緩和策の長期化観測が強まる。こうした中、企業業績の見通しが市場想定以上に拡大し、事業構造改革の効果が顕在化、日本企業のバリュエーションが一段と切り上がる。

③国内のワクチン普及が遅れて集団免疫の獲得がずれこみ、そうした状況で政治リスクが高まっていく。最初の緊急事態以上の移動制限がかかり、日本企業の業績見通しが大幅に悪化。投機資金による商品市況の上昇やコロナ禍による供給サイドの問題長期化で企業の利益率が低下し、業績見通しが悪化する。インフレ懸念が高まり米国の金融引き締めが加速するとの見通しが強まる。また、中国も金融引き締めを強化し、米中を中心に経済が失速する可能性が浮上する。



◆益嶋裕マネックス証券マーケット・アナリスト

①2万6500~3万3000円

②日本国内でワクチン接種が順調に進み、感染者数が収束に向かう。それに伴い企業業績がさらに回復する。来期以降の訪日客受け入れ等の議論が始まり、さらに業績回復の期待が高まる。米連邦準備制度理事会(FRB)のテーパリング(金融緩和縮小)議論が本格化せず、足元の金融緩和状態が継続する。

③国内のワクチン接種のペースが遅く、新規感染者が収束せずコロナによる経済停滞がさらに長期化する可能性が高まる。米労働市場回復やインフレが加速し、テーパリングに向けた議論が本格化する。



◆三宅一弘レオス・キャピタルワークス経済調査室長

①2万9000~3万2500円

②米国でテーパリング議論が正式開始される時期だと推察されるが、ハト派的ムードが持続。日本でもワクチン接種が進展し、景況感が好転。企業収益見通しに上方修正の流れ。世界的にワクチン接種が進展し、特に先進国で集団免疫を獲得。世界の景況感や企業収益は堅調。米国を筆頭に世界的な株高、リスク選好の動きが出る。日本株はキャッチアップ相場で、相対的に優位化。

③変異種が日本や先進国・世界で猛威を振るい、コロナ禍が継続。景況感や企業収益が改善しない。米欧の早期テーパリング・利上げ懸念が台頭し、米国などの長期金利が上昇、世界的に株価が停滞する。



◆押久保直也・三井住友トラスト・アセットマネジメントシニアエコノミスト

①2万8000~3万2000円

②国内で想定以上に速いワクチン接種が普及。米インフラ政策の成立を背景に米株が史上最高値を更新する。リベンジ消費の盛り上がりが出る。

③国内でのワクチン接種の遅れ。東京五輪後の新型コロナ変異株拡大。米中摩擦の激化、米ジャクソンホールでFRB高官がテーパリングを示唆。米インフレ率の高止まり。



◆大谷正之・証券ジャパン調査情報部部長

①2万7000~3万2000円

②ワクチン接種が進めば、経済正常化が見えてくる。米金利についても、FRB高官は「インフレは一時的」と強調している。

③経済指標に過熱感が表れ、米長期金利が2%に近づく。



◆福田理弘・フィデリティ投信インベストメント・ディレクター

①2万7000~3万2000円

②企業業績が好調に伸び、米金利上昇が適度に収まる。

③市場が何かの拍子に米緩和引き締めを織り込みに行き、FRBも事後対応的に手を打つ。ただし、一時的な混乱にとどまる。



◆伊井哲朗・コモンズ投信社長

①2万7500~3万1500円

②国内ワクチン接種が順調に進み、海外投資家の買いが入る。

③世界的な経済活動の再開によるインフレ懸念を背景に米金利が上昇。



◆服部誠・丸三証券専務

①2万6500~3万1500円

②米実質金利がマイナス0.5%~マイナス1.0%程度の範囲内で推移。米株市場が足元の水準以上で推移。日本のワクチン接種率が進展。菅政権の支持率回復。海外投資家が改めて買い越しに転じていること。

③実質金利が目に見えて上昇。コロナ変異種が猛威を振るう。菅政権の支持率の低迷が継続。海外投資家による日本株売りが継続。



◆市川雅浩・三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト

①2万9000~3万1000円。

②主要国でワクチン接種・経済正常化が進展し、米テーパリング開始の織り込みが波乱なく進む。

③主要国でコロナ感染に収束が見られず、経済正常化が大幅に遅れ、米テーパリングに対する警戒感が強まる。



◆香川睦・楽天証券チーフグローバルストラテジスト

①2万6500~3万1000円

②国内のウイルス感染の収束傾向が鮮明となり、ワクチン接種普及が進む。米金融政策見通しと長期金利が安定し、米国株の堅調トレンドが続く。国内の先行き景況感が改善し、内需系企業も業績回復期待が強まる。

③変異種の影響で感染が収まらず、ワクチン接種も世界比較で遅れ続ける。米インフレ懸念が強まり長期金利が再上昇。国内景気の停滞感が長期化し、内需企業中心に回復後ずれ懸念が強まる。



◆河合達憲auカブコム証券チーフストラテジスト

①2万9500~3万0500円

②日経平均のEPSにPERミッドレンジ15倍を適用。

③緊急事態宣言延長で4~6月の企業活動が低迷し、一株利益も下振れ。



◆仙石誠・東海東京調査センター・シニアエクイティマーケットアナリスト

①2万8500~3万0500円

②ワクチン接種の進展。4~6月期決算が良好なら、上値を試す。衆院解散も株価上昇につながりやすいイベントで注目。

③ワクチン接種が進まない。世界的に金融緩和解除への警戒感が強くなる。



◆野坂晃一・証券ジャパン調査情報部副部長

①2万7000~3万0500円

②米長期金利の安定と国内ワクチン接種の進展。

③インフレ警戒感の高まり。



◆北原奈緒美・内藤証券投資調査部シニア・アナリスト

①2万7300~3万0400円

②7~9月好業績への期待の高まり。

③米長期金利の急激な上昇。



◆井出真吾・ニッセイ基礎研究所チープ株式ストラテジスト

①2万8000~3万円

②国内でもワクチン接種が加速しており、リスク要因が顕在化しなければ、3万円は回復可能。

③米インフレ加速によるテーパリング懸念。市場の想定以上に早く議論が進むと下振れしやすい。米中の対立もリスク。



◆馬渕治好・ブーケ・ド・フルーレット代表

①2万8000~3万円

②景気・収益回復期待が持続し、国内でもワクチン接種が進む。

③米ジャクソンホールのFRB高官の発言などで、市場が勝手にテーパリングへの懸念を高めてしまうこと。



◆小林真一郎・三菱UFJリサーチ&コンサルティング主席研究員

①2万7500~3万円

②新規感染者数の低位安定、ワクチン接種の進展など、新型コロナウイルスの感染状況の落ち着き。および海外の株式市場の一段の上昇などの好材料がそろえば3万円を超える展開も。

③米景気回復期待がはく落し米国株が下落する局面や、変異株拡大による全国での緊急事態宣言発出。五輪開催中止は一時的な売り材料となっても相場の流れを変えるインパクトはない。



◆藤代宏一・第一生命経済研究所主任エコノミスト

①2万7500~3万円

②ワクチン接種が進み、対面型サービスなど国内経済の足かせになっていた業種も改善に向かう。米国のテーパリングを警戒した売りが落ち着く。半導体・電子デバイスのサイクルなどを考えると、けん引役は不在で3万円からさらにレンジを大きく切り上げるのは難しい。

③米経済の改善ペースが加速し、利上げ観測が強まる。日本経済では、半導体需要のピークアウトが下振れ要因になり得る。



◆大塚竜太・東洋証券ストラテジスト

①2万7000~3万円

②4~6月期の決算を受けて業績回復を織り込む動きが出る。バリュエーション面では高くない。

③五輪強行で感染が拡大。海外勢中心に日本経済の正常化が先延ばしになるとの見方が出ている。



◆山本信一・岡三証券シニアストラテジスト

①2万7000~3万円

②国内のワクチン接種の進展。米インフレ懸念の後退。

③国内の政局不安。米雇用回復によるインフレ警戒。



◆村山大知eワラント証券アナリスト

①2万7650~2万9500円

②日経平均の高構成比銘柄の株価回復

③米国株安。特にフィラデルフィア半導体株指数(SOX)の調整。



◆菊池真・ミョウジョウ・アセット・マネジメント代表取締役

①2万4000~2万9500円

②米インフレ加速懸念が沈静化し金利が安定する中、米国株が緩やかな上昇トレンドを継続。東京五輪は完全無観客・完全隔離の下に行われ無事終了。

③米インフレ懸念が加速してテーパリング早期開始観測が台頭し、金利が大幅に上昇する中で米国株が大幅に調整。菅政権がワクチン接種に続き五輪をめぐる政策で良好な結果を出せず、政局不透明感が台頭。



◆窪田朋一郎・松井証券シニアマーケットアナリスト

①2万7000~2万9000円。

②ワクチンの迅速な接種による経済再開が見通せたとき。

③FRBがテーパリング示唆を行ったタイミング。(了)


 

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