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日銀、副作用軽減で新制度=黒田総裁:機動的に利下げ―ETF購入目安撤廃

2021年03月19日 20時37分

 日銀は19日の金融政策決定会合で、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う大規模金融緩和の長期化に備え、政策修正を決めた。上場投資信託(ETF)は年間6兆円の買い入れの目安を撤廃、市場環境が良好であれば購入を控える。また今後の利下げの際に、金融機関の収益圧迫という副作用を軽減する新たな制度を導入。記者会見した黒田東彦総裁は「より機動的な長短金利の引き下げが可能になる」と意義を強調した。

 日銀は会合後に公表した声明で、効果的な追加緩和の手段として「長短金利の引き下げは重要な選択肢」と指摘。その上で、利下げに伴う副作用を軽減するために「貸出促進付利制度」を創設した。

 新制度は、現在マイナス0.1%の短期政策金利を引き下げる場合は、融資実績に応じて、同金利に連動する形で日銀から民間金融機関が受け取る利息が増える仕組み。金融機関の収益悪化を埋め合わせることで、「必要があればマイナス金利の深掘りもちゅうちょなくやる」(黒田総裁)環境を整えた。

 株価をゆがめるとの批判が根強いETFの購入は、コロナ禍を契機に導入した年12兆円の上限を感染症収束後も維持する。黒田総裁は「買い入れを減らす考えは全くない」と強調した。

 一方でETF購入の対象から日経平均株価連動型を除外し、東証株価指数(TOPIX)連動型のみとした。これを受け19日の東京株式市場では、日経平均が急落した。

 長期金利は0%程度への誘導を継続しつつ、プラスマイナス0.25%の変動を許容することを明記。これまで黒田総裁らが述べていた「0.1%の倍程度」から変動幅を事実上拡大した。これに関し黒田総裁は、これまでの解釈を具体化したものであり「変動幅の拡大ではない」と説明した。

 コロナ禍による経済の低迷で、物価上昇率は前年比マイナスの水準に沈んだ。日銀が目標とする2%の物価上昇は一段と遠ざかっているが、黒田総裁は「(政策修正により)持続性と機動性を増した金融緩和を粘り強く続けることで達成できる」と語った。

 ◇日銀決定のポイント
一、長期金利の変動幅を上下0.25%程度と明記し、事実上拡大
一、上場投資信託(ETF)購入目標6兆円を撤廃、上限の12兆円は維持
一、ETFは東証株価指数(TOPIX)連動型のみ買い入れ
一、追加緩和の手段として長短金利の引き下げは重要な選択肢
一、マイナス金利の副作用軽減へ追加利下げ時などに金融機関に支払う金利を上乗せ
一、副作用軽減策によって機動的に長短金利の引き下げが可能

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