独ワイヤーカード、帳簿の19億ユーロ「どこにも存在せず」=銀行側と緊急協議
2020年06月23日 07時49分
【フランクフルト、マニラ・ロイター時事】ドイツのオンライン決済サービス大手ワイヤーカードは22日、帳簿に記載されていた19億ユーロがどこにも存在しない公算が大きいと発表した。同社は経営破綻の危機に陥るとともに、独連邦金融監督局(Bafin)への信頼も失墜しかねない事態となっている。
ワイヤーカードは銀行側と、現金逼迫(ひっぱく)を回避するため緊急協議を行っている。各行のワイヤーカードに対する債権は17億5000万ユーロに上る。
ワイヤーカードは、ドイツ発祥のハイテク企業としてもてはやされ、一部の世界的な投資家からも資金を集めていた。ただ、見せかけの取引により築かれた成功との内部告発により、状況は一変した。
ワイヤーカードは先週、大手会計事務所EYが19億ユーロの現金の存在が信託口座に確認できないとして2019年決算への署名を拒んだことを明らかにした。19億ユーロは、同社バランスシートの約4分の1に相当する。
ワイヤーカードは22日の声明で、「取締役会は、銀行の信託口座の19億ユーロが存在しない可能性が高いと判断している」と認めた。
関係者によると、ミュンヘンの検察当局はワイヤーカードのブラウン前最高経営責任者(CEO)とマルザレク前取締役の逮捕状を出すことを検討している。両氏は22日、解任された。
ワイヤーカードをめぐる疑惑は技術立国ドイツのイメージを損なった格好だ。同社の時価総額はここ数日で110億ユーロ失われた。Bafinのフーフェルト長官は疑惑について「大災難」と表現。Bafinなど当局がミスを犯したと認めた。
Bafinはこれまで、空売りを仕掛けた投機筋や、ワイヤーカードの決算を疑問視する報道に関与したジャーナリストらの調査に重点的に取り組んでいた。ワイヤーカードに対して何もしなかったことについて、批判が噴出している。
ワイヤーカードはアダルトやギャンブル関連のサイトの支払いで事業を始め、今やビザやマスターカードなども含めた法人決済を手がける企業に成長した。
ワイヤーカードは今後の選択肢を検討するため、米投資銀行フーリハン・ローキーと契約した。オランダのABNアムロや独コメルツバンクなど10行以上が債権者委員会を結成したという。
失われた資金の追跡は先週、フィリピンで行き詰まった。フィリピン・アイランズ銀行(BPI)とBDOウニバンクは、ワイヤーカードが資金を両行に預金したとの文書は偽造されたものだと指摘。フィリピン中央銀行は、資金が同国に入金されていないようだとの見方を示した。(了)