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東証リート指数に上値余地=ニッセイ基礎研・岩佐氏

2021年03月01日 12時57分

 ニッセイ基礎研究所の岩佐浩人不動産調査室長は、1900台半ばと節目の2000に迫る東証リート指数について「これまでの割安な状態が修正され、おおむねフェアバリュー圏に入っている」と指摘。その上で「東証リート指数は東証株価指数(TOPIX)に比べて30%ほど出遅れている」と述べ、上値余地があるとの見方を示した。

 東証リート指数は東京証券取引所に上場する全リート(不動産投資信託)の時価総額の加重平均で、2003年3月の基準日を1000とする。昨年はコロナ禍の急落から回復後、1600~1800でもみ合っていたが、今年1月下旬に上値抵抗の1800を超え、2月16日には1994の高値を付けた。主なやりとりは次の通り。

 ―足元の上昇の原因は。

 好調の株価につられた形だが、リートの保有不動産価格が下落しなかったことも大きい。2008年のリーマン・ショック後、物件価格は5年間で22%下落した。昨年3月19日、東証リート指数が大底の1145を付けた時は、理論上は24%の下落を織り込んでいた。

 しかし、20年6~11月期(Jリートは半年決算)の保有不動産価格は、19年12月~20年5月期に比べ、ホテルが3.7%下落となったものの、全体では0.2%下落とほぼ横ばいだった。

 ―不動産はなぜ下落しなかったのか。

 リーマン・ショック後、不動産売買市場では買い手不在の中、価格が大きく下落した。今回は大規模な金融緩和など、中央銀行や政府の対応が迅速で、パニックは起こらなかった。

 また、日本は欧米に比べコロナ禍の影響が比較的小さいとの見方から、特に欧米の不動産ファンドの投資意欲が高い。電通や日本通運の本社ビルのような大型物件の売却が続く可能性もあるが、買い手の資金は潤沢だ。

 ―現状のファンダメンタルズは。

 Jリートの半数以上が、株の株価純資産倍率(PBR)に相当するNAV(ネット・アセット・バリュー)倍率で1を超え、全体では1.07と、過去平均の1.10倍に近づいた。NAV倍率1.10の水準は、東証リート指数では2000となる。

 ―利回り面では。

 コロナ禍に伴う賃料の減免を受けて一部リートは分配金を下方修正した。全体の分配金水準はピークから7%下がったが、足元では底打ち感が出ている。

 Jリートの平均利回りと長期金利の差「イールドスプレッド」の過去平均は3.4%。現状の利回りは3.7%、イールドスプレッドは3.6%なので、利回り面ではもう少し上値余地がある。

 ―ファンダメンタルズ以外の要因は。

 世界的な金融緩和で株高となり、余剰資金がJリートに流入し、市場心理が好転している。しかし、過去1年の騰落率では、東証リート指数は東証株価指数(TOPIX)に比べて30%ほど出遅れている。

 ◇五輪開催ならポジティブサプライズ

 ―下落リスクは。

 東京オフィス市場では空室率が上昇し、賃料は下落局面に入った。オフィス市況のサイクルは一つひとつの波が大きく、直ちに回復することはない。併せて在宅勤務が定着する中、新年度から働き方を見直してオフィス面積を削減する動きが本格化する可能性がある。住宅では東京からの人口流出に注意が必要だ。

 また、米国の長期金利の上昇に警戒したい。これをきっかけに世界的に株価が調整すれば、リート市場への影響も避けられない。

 ―東京五輪への期待は。

 市場は中止をある程度織り込んでいるのではないか。開催できるのであれば、むしろポジティブサプライズとなる。

 コロナ禍ではインバウンド(訪日外国人)だけでなく、ビジネス出張需要が減少し、ビジネスホテル中心のホテルリートにとって厳しい環境が続いている。インバウンドが戻るまでの2、3年間をどうしのぐかは重要な課題だ。(了)

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