〔時事:日銀決定会合3つの視点〕柔軟対応は可能なのか
2020年06月16日 17時39分
日銀は16日の金融政策決定会合で、現行緩和策の維持を決めた。新型コロナウイルスの感染対策として各種措置を講じた後でもあり、当面は現状維持を続ける見込みだ。ただ、感染「第二波」に見舞われるリスクは高い。これについて、黒田東彦総裁は会見で、「(政策対応は)柔軟に考える」と表明したが、実際の対応余地は少ない。
◆「極めて厳しい」情勢だが…
日銀は今回の決定会合で、景気認識は「内外における新型コロナウイルス感染症の影響により、きわめて厳しい状態」との判断を示した。4月時点における「判断を維持した」(黒田総裁)わけだが、足元では緊急事態宣言の解除で経済活動は再開しつつあり、それを先取りした形で内外の株価は上昇。日銀としても、当面は現状維持を続けながら、コロナ感染が収束するかどうかを見守る構えとみられる。
◆「第二波」への備えは
だが、米国では経済活動を再開した一部の州で感染者が増加。中国でも感染者が増加したと伝えられる。市場でも「いずれ感染『第二波』に見舞われる恐れがある」(銀行系証券アナリスト)との懸念は強い。黒田総裁は「(現状では)全体として第二波となっていない」としながらも、第二波も含めたコロナ感染の長期化に備え、「新しい方策を柔軟に考える」との認識を示した。
◆実際の対応余地は乏しい
だが、日銀はすでに政策手段を多様化させ、「新たな方策」と言えるほどの画期的な方策があるわけではない。追加緩和は「利下げ」だが、短期金利はマイナス圏にあり、下げ余地は少ない。黒田総裁は「長短金利の引き下げ」を排除していないが、一方で金融機関経営がコロナ感染で受ける影響は「注視する」としている。緩和強化となればマイナス金利の深掘りだが、金融機関経営への打撃は大きい。「柔軟対応」をうたいながらも、実際の対応余地は「なきに等しい」(大手邦銀)と言えよう。(窪園博俊解説委員)(了)
緊急事態宣言
新型コロナウイルス対策の特別措置法32条に基づく措置。コロナのような感染症が「全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を …