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加納ビットフライヤー代表取締役、暗号資産業界に追い風=インタビュー

2025年02月13日 14時03分

インタビューに応じるビットフライヤーの加納裕三代表取締役(2月3日夕、東京都港区)インタビューに応じるビットフライヤーの加納裕三代表取締役(2月3日夕、東京都港区)

 暗号資産(仮想通貨)大手、ビットフライヤー(東京)の加納裕三代表取締役はこのほど、時事通信社の取材に応じ、暗号資産ビジネスは国内外でルール整備の機運が高まり、「間違いなく追い風が吹いている」と語った。その上で、ビットコインなどを原資産とする暗号資産ETF(上場投資信託)の取引が国内でも実現するよう、「証券業者や暗号資産業者が協調して取り組むことが必要」との考えを示した。主なやりとりは以下の通り。

 ◇法整備に期待

 ―米国で暗号資産に親和的なトランプ政権が誕生した。

 米連邦政府の下で統一的な暗号資産法制が整備されることを期待している。米国では現在、明確な合法・違法の判断基準が存在しないため、業者の事業内容の合法性をめぐって、米証券取引委員会(SEC)が大手業者のコインベースや、暗号資産XRPの発行元であるリップル社との間で訴訟を繰り広げている。早く暗号資産の法体系が整備され、事業者に何ができて、何ができないのかを行政が明確にしてくれることを願っている。

 ―日本国内の展望は。

 政府は6月までに、暗号資産の法律上の扱いを再検証するとしている。具体的には、送金や決済の手段として資金決済法の規制下にある現物取引を、レバレッジ取引も含めて金融商品取引法で規制する方向で制度見直しが進むのではないか。これほど大きな規制の変革は、まさにビッグバンと呼ぶべきものだ。

 われわれ事業者は10年以上にわたり、業界団体を通じて金融当局に制度改正要望を重ねてきたが、国会議員の関心も高まっており、間違いなく追い風が吹いている。制度見直しを通じて、日本が再び暗号資産市場のリーダーにカムバックすることもあり得ると思う。

 ―暗号資産の登場当初は「本来無価値であり、早晩消える」という見方もあった。これは間違いだったか。

 結果的にはそう言えるだろう。日本では現在、暗号資産口座が約1100万あり、これは今後さらに増える。世界中の投資家が、オルタナティブアセット(代替資産)の一種として暗号資産を保有しており、金融当局も無視できない存在となった。この流れはもはや逆戻りできない。

 ―暗号資産の普及は金融の仕組みを変えるか。

 2008年のリーマン・ショックの際には、流動性維持のため金融機関を介して市中に「ヘリコプターマネー」と呼ばれる大量の資金供給が行われた。暗号資産を使えば、間に金融機関などを介さずとも、個人のウォレット(財布)に直接、資金を配ることが可能になる。金融政策の効率と自由度が上がるだろう。

 ◇取引業者、大手に集約へ

 ―国内業界の展望は。

 大手業者への集約化が進むのは間違いない。昨年のDMMビットコインの不正流出もあり、顧客資産の安全保管が一段と重要な課題となっている。預かり資産が多い大手業者ほど、ネットワークから切り離された「コールドウォレット」で、いわば「金庫の中に入れたまま」の状態が作りやすくなる。取引の流動性向上で、顧客の利便性も向上する。

 ―値動きの荒さや詐欺などの否定的なイメージはどうか。

 暗号資産の値動きは引き続き大きいものの、近年低下傾向にあり、今ではトルコリラより少し高い程度だ。利用者増で流動性が増せば、さらに下がるだろう。

 不正流出も、件数は減少している。詐欺的な手法は、欧州のように発行者に規制がかけられることで、今後やりにくくなるだろう。

 暗号資産業界は何度も問題に巻き込まれ、それらを乗り越えて進化を遂げてきた。失敗してもまたチャレンジするという風潮が根付いている。

 ◇カストディ業務に参入へ

 ―ビットフライヤーは昨年7月、経営破綻した暗号資産大手FTXトレーディングの日本法人を買収した。

 同年8月に社名を「FTXジャパン」から「カストディエム」へと変更、カストディ(保護預かり)専門業者として参入を狙っている。機関投資家が暗号資産を保有する上でカストディは重要だ。国内でビットコインなどのETFが登場する頃までには、安全性の高いサービスを提供したいと思っている。

 ―暗号資産ETF実現をめぐっては、業者間に思惑の違いがあるのでは。

 証券業界と暗号資産業界の間で、取り扱いルールや税制をめぐり異なる意見があるのは事実だ。しかし国内の原市場に流動性がなければ、ETFも成り立たない。実現に向けて一緒に取り組む必要がある。(自身が代表理事を務める)日本ブロックチェーン協会(JBA)も、関係諸団体と協調しながら、規制緩和や税制改正の要望実現のため活動を続けている。

 ―ビットフライヤーの今後の目標は。

 当社は預かり資産と取引量で国内首位だが、口座数では小口ながら多数の顧客を抱える業者が登場してきた。預かり資産と取引量の首位は死守しつつ、口座数も首位奪回を図り、市場シェア50%を回復したい。法定通貨と価値が紐付いた「ステーブルコイン」の取り扱いも、必要なライセンスを取れれば参入する。将来的には新規株式公開(IPO)を実施した上で、機能ごとにモジュール化された、非中央集権的な組織体制を目指したい。(了)

 

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