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〔金融観測〕ワクチン先行のイスラエルに注目=脱コロナ波乱相場の引き金に?

2021年01月27日 12時45分

イスラエル・テルアビブ、26日=AFP時事イスラエル・テルアビブ、26日=AFP時事

 金融市場でイスラエルのワクチン接種状況が注目されている。接種で先行する同国がコロナ感染の収束に成功すると、世界的に拡張したマクロ政策の正常化が視野に入り、「脱コロナ波乱相場の引き金になる可能性がある」(大手邦銀)ためだ。同国に着目する第一生命経済研究所の主任エコノミスト、藤代宏一氏は「感染収束によるイスラエル経済の正常化は特に米経済の正常化時期を探る目安になる」との見方を示している。

 イスラエルのワクチン接種は世界最速とされる。同国は、米ファイザー社が開発したワクチンの優先的な供給を受けているため。国民の健康情報を管理する保健維持機構(HMO)に蓄積される接種者の健康状況などのデータをファイザーに供給し、その見返りで優先供給を受けた。昨年12月20日に国民への接種が始まり、今月18日までには人口の20%を超える200万人以上が接種。足元では接種率は40%を超えた模様だ。

 イスラエルの感染状況は重傷者数や死者数はなお高止まりし、人々は日々の活動を制約され、現時点で正常化には程遠い。ただ、新規感染者数は減少に転じ、好転の兆しは出ている。ワクチン接種は二回行う必要があるが、一部の報道によると、「二回接種受けた人々の陽性率は0.01%にとどまる」という。市場では「コロナ収束を強く期待させる結果で、今後の接種状況への注目度は高まる」(先の大手邦銀)との声が聞かれる。

 問題は、イスラエルがワクチン接種でコロナ収束を証明した場合の金融市場の反応だ。収束自体は世界経済には朗報だが、金融市場が好感するかは未知数だ。むしろ、現状では「世界的な株価下落を招き、かなりの波乱要因になる可能性がある」(大手運用機関のファンドマネジャー)との見方が有力だ。

 なぜなら「現在の株高はコロナ対策で拡張した金融・財政政策で生じた過剰流動性によるバブルの色彩が強く、コロナ収束で金融・財政政策が正常化すると、過剰流動性は縮小し、バブル相場は終えんする可能性がある」(日銀OB)からだ。この点では、前述の藤代氏も「イスラエル経済が正常化に向かうと、(将来を先取りする金融市場では)米国の経済と金融政策の正常化が同時に織り込まれ、FRBの緩和修正観測で長期金利に上昇圧力が生じ、株式の打撃になる可能性がある」と予想している。(窪園博俊解説委員・1月27日)(了)

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〔金融観測〕について
金融担当記者による深掘り記事です。日銀の政策運営方針や金融界のホットなテーマなどを解説します。

 

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