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日英貿易交渉、EUがカギ=雰囲気は良好、視界は不良

2020年06月09日 17時56分

英国のトラス国際貿易相、2020年3月/AFP時事
英国のトラス国際貿易相、2020年3月/AFP時事

 【ロンドン時事】日英両政府の貿易交渉が、1月末の英国の欧州連合(EU)離脱で互いに関係強化に乗り出す中で始まった。早期妥結に向けて雰囲気は良好だが、肝心の英国とEUの貿易交渉の先行き不透明感が影を落とし、視界は不良だ。

 「きょうは英日の長年の友好関係の中でも特別な日だ」。トラス英国際貿易相は9日、交渉開始をこう歓迎した。日本側も友好ムードで、EU離脱後の激変緩和のための「移行期間」が終了する年末までに合意を目指す方針だ。

 ただ、日本側には懸念も根強い。交渉関係者は「産業界からの要望は『とにかくこれまでと同様に英国で事業をできるようにしてほしい』というものだ」と明かし、同時進行する英EU交渉がカギを握るとの見方を示す。

 日本から英国に進出した企業は約1000社、直接投資もEU域外では米国に次いで2番目に多い。英EU交渉が決裂し、来年1月から新たに関税が生じることになれば、英国に進出した日本企業はサプライチェーン(部品供給網)を寸断されるなどし、大きな打撃を被る見通しだ。

 英最大の自動車工場を中部サンダーランドに構える日産自動車<7201>のグプタ最高執行責任者(COO)は今月3日、BBC放送で「もし現在と同じ関税が維持されなければ、事業を継続できない」と警告している。

 しかし、英国とEUは6月上旬までの4回の交渉で既に行き詰まっており、双方の責任者が互いを非難し合う展開に発展している。英国での事業環境は不透明感が強まるばかりで、多くの日本企業の関心も日英より英EUの交渉に向かっている。(了)

 

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