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「今までと全く異なる不確実性」=財政出動の重要性強調―FRB高官

2020年06月08日 08時21分

金融政策会合後にテレビ会議方式で記者会見する米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長=4月29日[FRBホームページより]
金融政策会合後にテレビ会議方式で記者会見する米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長=4月29日[FRBホームページより]

 【ワシントン時事】米連邦準備制度理事会(FRB)は9、10両日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、事実上のゼロ金利と量的金融緩和を維持する見通しだ。高官たちは、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済の急激な収縮で、「今までとは異なるレベルの不確実性を経験している」(パウエル議長)と先行きの見通しづらさに言及している。一方で景気の長期停滞を回避するには、金融政策だけでなく財政政策も重要だとして、追加経済対策の必要性を訴えている。

 〈投票権を持つ参加者〉

 ◇パウエル議長

 「景気回復の足取りがしっかりするまで時間がかかる可能性がある」「新型コロナ危機を乗り越え、景気回復が十分に進むまではあらゆる手段をとり続ける」「FRBは融資を行うことはできるが、成長につながる消費を行う権限はない」「(マイナス金利は)米国では魅力的な金融政策ではない」(5月13日)「われわれは今までとは全く異なるレベルの不確実性を経験している」(21日)「景気低迷が著しく長期化し、回復が弱いものになる」(29日)

 ◇クラリダ副議長

 「経済活動と労働市場が新型コロナの打撃から完全に回復するのは時間がかかる公算が大きいが、景気と失業率は今年後半に改善し始める」「FRBが経済情勢を把握するには時間がかかる」「(景気は)恐らく3月1日から後退に入った」「(イールドカーブ・コントロールを)いつか(議論)するのは当然。(フォワードガイダンスの)自然的な補完」「長期のインフレ期待はFRBが目標とする2%圏の下限」「(財政出動は)経済が回復し出し、再び成長が始まり、失業率が下がり始めるまでの時間稼ぎになる」(5月21日)

 ◇ウィリアムズNY連銀総裁

 「典型的な景気後退とは異なる新たな措置が求められている。財政政策も決定的な役割を果たしている」(5月2日)「われわれは非常に低い金利水準を維持するが、マイナス金利にすることはない」(21日)「景気低迷の点に関しては底入れが近く、うまくいけば数カ月後には上向き始める」「今年下半期にはかなり大幅な回復を見込んでいる」「イールドカーブ・コントロールはいくつかの国が採用しており、フォワードガイダンスや他の政策措置を補完しうるツールかもしれない」「採用国で何が起きたかだけでなく、米国でどう機能するのかも分析している」(27日)

 ◇カプラン・ダラス連銀総裁

 「金利は長期にわたり低水準を維持するだろう。FRBはこの期間を乗り越えるために他の措置に関し、より多くのことを行わなければならない」「年内および来年にかけて刺激策が必要になる。刺激策が講じられれば、成長を早め、失業率を低下させることが可能だ」(5月1日)「秋が過ぎて冬に第2波が来れば景気回復がさらに遅れる」「サービス産業が戻らない限り、経済成長率と失業率は改善しない」(2日)「マイナス金利政策が実際に何かの助けになるのか、金融部門に及ぼす障害を上回る恩恵があるのか疑念を持っている。個人的には好んでもいないし、支持もしていない」(12日)「経済が素早く成長し、失業率が改善するには感染検査と追跡体制を大幅に拡充する必要がある」(28日)

 ◇メスター・クリーブランド連銀総裁

 「今年後半には一部の外出禁止令が緩和されて経済が再び成長を見せ始め、失業率も低下に向かい、回復が来年も続くというのが妥当な基本シナリオ」「(イールドカーブ・コントロールは)将来の議論であって現段階ではない。導入する必要性が将来的にあるとも思わない」「インフレ率は年内いっぱいだけでなく、それ以降も当分は低く維持されると考えている」「経済に長期的なダメージが生じることを避けるために、より多くの直接的な財政支援が必要」(5月12日)

 ◇ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁

 「下半期の回復は1~3月期、4~6月期のマイナス成長を補うには十分ではない」(ゼロ金利は)「しばらくの間は維持されるとみている」(5月7日)

 ◇カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁

 「企業ごとに(活動を)緩やかに再開し、残念ながらペースは鈍いだろう」「V字回復はない」(5月7日)

 〈投票権を持たない参加者〉

 ◇エバンズ・シカゴ連銀総裁

 「金融緩和を継続し、市場が景気を支えるように機能する上でかなりの期間は(実質ゼロ水準に)とどまるだろう」「(インフレ率2%の到達が)近いうちに起きるとは思わない」「(マイナス金利は)景気にどのようなメリットがあるのか理解される必要がある」「巨額の資産購入(を通じた金融緩和)を行っていることもあり(マイナス金利政策を)追求しなかった」「慎重な研究が必要だ」(5月11日)

 ◇ローゼングレン・ボストン連銀総裁

 「完全雇用と物価安定の回復へあらゆる対応をする」「経済的打撃を最小限にするため、金融と財政政策を大胆に活用すべき時だ」「失業率は年末時点も2桁」(5月19日)

 ◇ブラード・セントルイス連銀総裁

 「米国経済の停止ボタンを押すことはできるが、停止ボタンを長く押し続けると、多くの別の問題が発生し、大量の倒産や事業の失敗が始まる可能性がある」「ほとんどが4~6月期の事象となり、その後に回復が始まり下半期中には通常に戻るだろう」(5月1日)「われわれは甘い認識を持っていないと考えているため、第2波が起きた時のシナリオは比較的楽観的だ」(20日)

 ◇ボスティック・アトランタ連銀総裁

 「(マイナス金利は)政策措置の中で弱い手段の一つ」(5月11日)「大ファンではない」(21日)

 ◇バーキン・リッチモンド連銀総裁

 「(景気が)素早く正常な状態に戻ることはないだろう」「政策当局は生産性を高める新たな方法に企業が投資するよう働きかける必要がある」(5月4日)「今が底で、ここから上昇していくと考えている」「4~6月期は当然厳しいが、7~9月期と10~12月期はある程度持ち直すはず。どれだけ早くどこまで回復するかが問題」(12日) (了)

 

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