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遠藤金融庁長官:地銀トップとリモート面談開始=インタビュー

2020年06月05日 09時44分

インタビューに答える金融庁の遠藤俊英長官=4日、東京・霞が関
インタビューに答える金融庁の遠藤俊英長官=4日、東京・霞が関

 金融庁の遠藤俊英長官はインタビューに応じ、新型コロナウイルス感染拡大により中断していた地域金融機関の健全性検査をめぐり、「リモートで地銀トップといくつか対話を開始した」と明らかにした。主なやりとりは以下の通り。

 ―コロナがもたらす影響をどうみる。

 人と物の移動の自粛は、感染拡大の防止策として人為的にもたらしたもので、経済に当然マイナスの影響を与えている。こうした対応が経済指標を非常に短期間に深く落とした。(政府・日銀による)緩和的な環境のため、金融市場は良い方向に向かっているように見えるが、コロナが収束しているわけではない。世界的に見ると途上国などまだまだだ。経済や金融にどういう影響を与えるか、よくよく見ておかないといけない。金融の状況と実体経済の乖離(かいり)は、何かきっかけがあれば崩れるのではと、みんな一抹の不安を持っていると思う。

 ―コロナが出始めた2月以降、金融庁として講じた対策の評価と課題は。

 金融庁としては資金繰り支援に尽きる。中小企業に対する金融支援を、民間金融機関を通じていかに効率的に幅広く展開していくかだ。リーマン・ショック以降、金融機関に対して量・質ともに自己資本を高く積むよう求めてきた。金融機関の健全性はそれなりに頑健だ。今回の資金繰り支援に大きな問題なく対応できている。

 ―年度末の資金繰りが一つのヤマ場だった。

 中小企業の資金繰り対応で、民間金融機関の果たすべき金融仲介機能は発揮されたのではないか。ただ、条件変更の申請はどんどん増えており、まだ相当強い。足元でもピークアウトしていないという印象だ。民間金融機関での実質無利子・無担保融資の決定は、5月1日からの1カ月で15.2万件、決定額は2.7兆円だ。政府系金融機関の場合は2~5月の4カ月間で37.1万件、6.9兆円だった。民間は一カ月で政府系の半分まで達しており、早晩、政府系の額を抜くだろう。

 ―コロナ感染拡大で止まっていた早期警戒制度での検査は。

 金融機関トップとのコミュニケーションはリモートで徐々に実現している。今いくつかの対話を開始しており、リモートを継続すればいいのではないか。上京する場合もあるが、常に当たり前にするのではなく、リモートでいい。

 業務改善命令などを判断する際、普通であれば立ち入り検査をする。ただ、こういう局面で立ち入り検査がどういう形でできるかは考えないといけないかもしれない。立ち入り検査に入るとしても、当該金融機関の職員に会わなければいい。我々は物さえ見せてもらえればいい。

 ―コロナ対策で、プロパー融資の点検も並行して行う。

 それは、中小企業の状況によっては実質無利子・無担保融資で足りる場合もあるし、足りずに民間金融機関のプロパー融資も借りなければならない状況もある。いかに組み合わせて対応するかだ。従来の事業性評価を踏まえ、企業の状態に応じて適切に融資してください、プロパー融資についてもお忘れなく、ということで要請した。

 無利子・無担保融資を優先させ、プロパー融資が減ることは、企業側の要請でもあり、別に問題だとは思わない。企業にとって必要なファイナンスを考えるべきだ。

 ―無利子・無担保の融資額が増え、金融機関の健全性に対する懸念は。

 金融機関の経営に跳ね返ってくる可能性はもちろん否定できないが、今後融資先企業がどういう形でビジネスを再建していくかが重要だ。金融機関の健全性に響くのはもっと先の話だ。検査はこの緊急の状況が落ち着いてからだろう。秋以降、金融機関がどこまで自分の事としてきちんと融資先企業を支えているかどうか見ていかないといけない。

 ―金融機関の出資規制の見直しについては。

 コロナ前の問題意識と全く変わっていない。銀行法を中心に、IT化の加速や人口減少など、今の状況を踏まえた金融規制をもう一度抜本的に考えないといけない。

 今、コロナ対応で資本注入が必要だと言っている。中小・零細企業の資本注入という話は今までついぞなかったが、コロナ後は、地域経済に残さないといけない中小・零細企業の資本注入の問題が必ず出てくる。

 地域経済活性化支援機構(REVIC)の支援先は、地域の中核企業、俗に言う中堅企業で、中小・零細は恐らく面倒を見切れない。地方銀行や第二地銀、信金・信組の顧客である中小・零細に資本を注入する必要があれば、民間金融機関がやらざるを得ない。だったら、5%ルールとか15%ルールというのは見直す必要が出てくるのではないか。

 ―従来の考え方を変える必要がある。

 これまでは、金融機関が実体経済を支配するのは社会的に望ましくないということだった。これからは、特にそういう小さいところに5%以上の出資をすることは、もちろん恐らく期限を決めてだと思うが、地域企業、地域経済を助けるという意味になる。そういう意味合いを踏まえてどういう規制にするか考えていかないといけない。

 ―金融機能強化法を改正し、申請期間を4年延長した上で支援枠も拡充する。

 金融システムについては極めて安定しており、健全性に問題はない。資金繰り支援の一環として、先を見越した対応を講じた。ただ、実体経済が我々の予想した以上に落ち込み、予想に反して金融機関の体力にも健全性にも跳ね返る可能性も否定できない。

 ―資本注入の必要性が出てくる時期は。

 それは分からない。金融機関の状態がどうなるのか、何とも予想はつかない。

 コロナを起因として資本注入せざるを得ないのであれば、経営責任を問うのは筋としておかしい。ただ、国の資本注入を受けるのは重荷。よっぽどの決断がなければ資本参加という話にはならないだろう。

 ―マイナンバーを銀行口座にひも付ける話が検討されている。

 関係省庁とよく相談しながら、政府全体として検討していくことになるのではないか。全てをひも付けするのはハードルが高いという意見は当然ある。国民の理解を得られるかという議論だ。

 ―預金保険料を健全性に応じて変える可変料率の議論は。

 海外の事例を調査する最中に、コロナ禍となり、欧州での出張調査ができていない。有識者を集めた検討会は7月から開始する来事務年度以降になる。進めている事項もあり、取り組みが完全に止まったわけではない。(了)

 

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