ウォール・ストリート・ジャーナル
コモディティコンテンツ

マーケットニュース

米新規上場、6年ぶり高水準=コロナ禍でも活況―20年

2020年12月26日 15時06分

 【ニューヨーク時事】新型コロナウイルス感染拡大で景気が低迷する中、米株式市場では新規上場が活況を呈した。米調査会社によると、活発な取引による株価上昇を背景に、2020年の新規株式公開(IPO)は216件、調達額は781億ドル(約8兆円)となり、いずれも6年ぶりの高水準。ハイテクやヘルスケア関連企業の大型上場が目立った。さらに、自らは具体的な事業を持たない特別買収目的会社(SPAC)の上場も急増した。

 米IPO調査会社ルネサンス・キャピタルが、SPACなどを除いて集計した。新型コロナ感染拡大が深刻化した今春は新規上場の動きが止まったものの、4月以降の株式相場回復とともに急増した。20年のIPO件数は前年比35%増加、調達額は68%増えた。調達額が10億ドル超の大型上場は、過去最高の20件に達した。

 同社のキャスリーン・スミス氏は、米メディアで「低金利環境が、成長の見込める企業にとって有利に働いた」と指摘。金融緩和を背景に、投資家がリスクを取りやすくなり、成長期待が大きい新規上場株に資金が向かったと分析した。新型コロナ拡大を背景としたデジタル化の進展もIT企業への投資を後押しした。

 民泊仲介大手の米エアビーアンドビーは12月、ナスダック市場に上場し、35億ドルを調達。初値は売り出し価格の2倍以上に急騰し、好調なIPO市場を印象付けた。

 20年は、SPACの上場も大きく増えた。ルネサンス社によると、241社が上場し、734億ドルを調達した。SPACは、有望な未公開企業を見つけ出して買収。事業を営む買収先が存続会社となる。上場を目指す企業からみれば、面倒な手続きを省略して上場するための「箱」が大量に用意された格好だ。

 ただ、SPACには、問題のある企業の「裏口上場」を許しているとの批判が絶えない。情報開示に課題があるとの指摘も多く、こうした手法がさらに広がるかは不透明だ。

 ◇新規株式公開(IPO)

 未公開企業が証券取引所に株式を公開し、投資家が市場で自由に売買できるようにすること。上場時に新株を発行して資金を調達するほか、既存株主が保有していた株式を売り出すケースが多い。通常は、証券会社が需給や売り出し価格を調整。新株を引き受け、投資家に販売する。株式市場からの資金調達が可能になり、知名度向上も見込める一方、情報開示などのコストも増加する。(了)

関連記事一覧

SPAC

未公開企業を買収する資金調達だけを目的に設立される「特別買収目的会社」。Special Purpose Acquisition Compan …

 

ウォール・ストリート・ジャーナル
オペレーションF[フォース]