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〔フランクフルト金融観測〕ECB、主要政策を維持へ=ワクチン接種迅速化が焦点

2021年01月19日 11時19分

AFP時事AFP時事

 欧州中央銀行(ECB)は21日に定例理事会を開き、主要な金融政策の維持を決定する見通しだ。主要国は新型コロナウイルスの感染封じ込め措置を強化しているものの、ラガルド総裁は先週の講演で、2021年のユーロ圏成長率見通しを維持した。欧州ではワクチン接種をめぐり問題も生じているが、変異種も含めた今後の感染動向や、接種の迅速化がユーロ圏経済の先行きを左右する。

 ◇ワクチン供給の遅れに懸念

 オランダ金融大手INGのエコノミスト、カールステン・ブルゼスキ氏は、12月の理事会での決定を踏まえれば「ECBが様子見姿勢を取りたいのは明らかだ」と指摘する。短期的なユーロ圏経済の行方は「追加緩和ではなく、コロナウイルス、ワクチン、都市封鎖(ロックダウン)、財政刺激策によって決まる」と分析する。

 ECBは昨年12月、21年のユーロ圏成長率を3.9%と予測した。ラガルド総裁は今月13日の講演で、同予測では1~3月期の都市封鎖の継続を想定していたと説明。ワクチン承認や米大統領選をめぐる不確実性などが解消されているため、「懸念されるのは、加盟国が4月以降も封鎖措置を講じる必要があり、接種計画が遅れる場合だ」と語った。

 ただ、ドイツ政府などは15日、米製薬大手ファイザーが欧州委員会に対して今後3~4週間で供給を約束していたワクチンの量を出荷できないと通知したと明らかにした。増産のための同社ベルギー工場の拡張工事が原因だ。欧州委員会のフォンデアライエン委員長は記者会見で、ファイザーのブーラ最高経営責任者(CEO)に電話したところ「CEOは1~3月期に約束した全てのワクチンの出荷を改めて保証した」と強調したが、ワクチンは3週間間隔で2回の接種が必要で、接種計画の遅延に対する懸念が高まった。物流や予約手続きなどでも問題が発生しており、特にフランスでは市民のワクチンに対する高い不信感の払拭(ふっしょく)も大きな課題だ。

 ◇ドイツで2月以降もロックダウン延長へ

 ドイツでは昨年11月から娯楽施設や持ち帰りを除く飲食店、12月中旬以降はほとんどの商店の営業が禁止された。フランクフルトでラーメン店を経営する山本真一さんは「持ち帰りメニューを春のロックダウン時よりも増やすなど工夫をして、営業を続けている」と話す。

 サービス業は感染拡大による打撃を特に受けているが、製造業は底堅さを示している。ドイツ連邦銀行は18日公表した月報で、1月に延長・強化された制限措置が、景気回復を著しく後退させていないことを期待できる兆候が見られると分析した。ただ、感染が大幅に抑制されず、現在の制限措置が延長され、一段と厳しくなれば「大幅な景気後退につながる恐れがある」と警戒する。

 国内では感染による1日当たりの死者数は14日に1244人と過去最多を更新し、変異種に対する警戒感も高まっている。メルケル首相は当初の予定を前倒しして19日に州首相らと会談し、2月以降のロックダウンの期限延長などについて協議する。(フランクフルト支局・1月18日・岩崎万季)

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〔フランクフルト金融観測〕について
ドイツ・フランクフルト駐在記者による欧州の金融・経済テーマを深掘りした記事です。欧州中央銀行の政策や欧州経済の話題を詳しく解説します。

 

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