国内産業界、米の環境規制を注視=温暖化対策、強化の可能性
2020年11月09日 20時02分
米大統領選でバイデン氏の勝利が確実となり、米国が温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」に復帰する見通しとなった。今後、米の環境規制が強化される可能性があり、自動車メーカーなど日本の産業界は動きを注視している。
自動車各社は既に、欧米各国の環境規制強化を前提に、電気自動車(EV)など電動車の販売比率を引き上げる目標を掲げている。それでも、規制強化に積極的なバイデン大統領が誕生すれば、「規制が極端に振れることが一番危惧される」と自動車大手幹部は警戒。「(2035年にガソリン車の販売を事実上禁止する)カリフォルニア州のように、EVしか売ってはいけない州が出始めると事業コストが跳ね上がる」(別の自動車大手)と話す。
鉄鋼大手JFEホールディングス<5411>の寺畑雅史副社長は9日、電話会議形式の決算記者会見で「新たなエネルギー戦略、北米の自動車の電動化は注視したい」と指摘。また、環境破壊を懸念し、バイデン氏が地中深くに埋蔵されたシェールオイルやガス開発の規制に踏み切った場合、「市況への影響は大きい」(杉森務石油連盟会長)とされ、原油価格の値上がりも予想される。
今後、温室効果ガスの排出を減らすため「脱炭素化や再生可能エネルギー拡大を加速する必要が生じる」(電力業界関係者)ことは避けられない。一方、EV向け機器を手掛ける電機大手は「環境負荷の小さい技術や製品にとって、規制強化はプラスだ」と歓迎している。
国内でも菅政権が「50年までに温室効果ガス排出実質ゼロ」を表明。日本のCO2総排出量11億3800万トン(18年度)のうち、産業、運輸部門や発電所などで6割以上を占める。企業は世界規模で取り組みの加速を求められることになる。(了)