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パウエルFRB議長の冒頭発言=FOMC後の記者会見(16日)

2020年12月17日 10時34分

AFP時事AFP時事

 パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が16日、連邦公開市場委員会(FOMC)終了後に行った記者会見(ビデオ会見)の冒頭発言は以下の通り。

 こんにちは。FRBにおいて、われわれは議会から与えられている雇用最大化と物価安定という金融政策目標の実現に強くコミットしている。新型コロナウイルスの世界的流行(パンデミック)が始まって以来、われわれは救済と安定を施すため、また景気回復をできる限り確実に力強くするため、さらに経済への長期的なダメージを抑えるため、強力な措置を講じてきた。本日、FOMCに参加する私の同僚と私は、政策金利に関する断固としたフォワードガイダンスを再確認し、われわれの資産購入に関する追加的なガイダンスも提示した。これらの措置は共に、景気が完全に回復するまで金融政策が引き続き経済を強力に支えることを保証することになる。

 経済活動は落ち込みが激しかった4~6月期の水準から引き続き回復した。経済の実質的な再開は活動の急速な回復につながり、7~9月期の実質GDP(国内総生産)は年率換算で前期比33%増となった。しかし、ここ数カ月間に関しては、改善ペースは鈍化している。モノに対する家計消費、特に耐久財に対する家計消費は力強い伸びを示し、パンデミック前の水準を上回って推移。これに対し、サービス支出は引き続き低迷しており、特にそれは一般的に人々が集まって密にならざるを得ない旅行業や接客業などのセクターで顕著だ。家計支出全般の回復は、多くの家計や個人に重要な支援をもたらしている連邦政府による景気刺激給付や失業給付拡大などのおかげだ。家計分野は低い住宅ローン金利などに支えられ、悪化局面から完全に復活した。設備投資も回復した。こうした回復はおおむね予想されていたよりも速いペースで進展し、FOMC参加者による2020年の経済成長率予想は9月の経済見通し(SEP)から上方修正された。とはいえ、経済活動全般は依然としてパンデミック前を完全に下回っており、今後の(景気回復)軌道も引き続き極めて不透明だ。

 労働市場では、3月と4月に2200万人の雇用が失われたが、その後多くの人々が職場に復帰できたことから、その半分以上の雇用が回復した。ただ経済活動全般と同様に、労働市場の改善ペースは鈍化している。雇用の伸びは11月に24万5000人に鈍化。また、失業率は低下を続けたが、なお6.7%で高止まりしている。労働市場参加者は依然パンデミック前の水準を著しく下回っている。労働市場では春以降、大幅な改善が見られたが、われわれは数百万の米国民が依然失業中であることを見過ごさない。先行きに関しては、失業率は引き続き低下するとFOMC参加者は予想している。その予想中央値は21年末には5%、23年までには4%を下回る見通しだ。景気の悪化はすべての米国民に平等に降りかからず、最も負担に耐えられない人々が最も激しい打撃を受けた。特に失業の高水準はサービス業の低賃金労働者や、アフリカ系およびヒスパニック系の労働者の間でひときわ深刻だった。経済の混乱は多くの人々の生活に大きな打撃を与え、将来に関しても多大な不透明感をもたらしている。

 パンデミックはインフレ率にも大きな痕跡を残している。消費者物価は春には大幅下落したが、夏の間に回復した。しかし、ごく最近は横ばい状態となっている。パンデミックによる悪影響を最も受けたセクターでは、物価は極めて低迷したままだ。全体的に見ると、インフレ率は前年比ベースで2%の長期目標を依然下回っている。FOMC参加者によるインフレ率の予想中央値は、20年の1.2%から21年には1.8%に上昇し、23年には2%に達する見込みだ。

 われわれがパンデミック期間を通じてずっと強調している通り、景気の先行き見通しは極めて不透明であり、それはウイルス感染状況に大きく左右される。ワクチンに関する最近のニュースは極めてプラスの材料として受け止められた。しかし、ワクチンに関しては普及のタイミングや生産、配布の問題はもとより、さまざまなグループにおける効き目の違いに大きな課題や不確実性が残っている。ワクチン普及のタイミングやその動向がもたらす経済的な影響度合いを判断するのは依然難しい。米国内外で新型コロナウイルス感染者数が現在も急増し続けていることは非常に懸念材料で、今後数カ月間が極めて困難な時期になる公算が大きい。パンデミックに対するわが国の対応ではわれわれ全員が役割を担っている。ソーシャルディスタンス(他者との距離)を適切に保つよう、また公の場ではマスクを着用するよう求める公衆衛生分野の専門家らのアドバイスに従うことは、経済を最大限の力で回復させることに役立つ。景気の完全回復は、人々が幅広い活動に再び関わっても安全だと確信できるまで実現しそうもない。

 以前に発表している通り、われわれは今やFOMC声明と同時にSEPの包括資料全体を発表する。これらの資料の中には2つの新たな添付資料が含まれており、その資料ではFOMC参加者の先行き不透明感やリスクに対する評価バランスが経時的にいかに展開されているかが示されている。パンデミックの発生以来、FOMC参加者のほぼ全員が景気の先行き不透明感レベルは上昇していると引き続き判断している。先行き見通しリスクに関しては、FOMC参加者の一部はリスクバランスが9月時点よりもダウンサイドに傾いているとみている。FOMC参加者の半分強が経済活動を脅かすリスクはおおむねバランスが取れていると判断しているが、それと同数の参加者がインフレリスクに関しては引き続きダウンサイドに傾いているとみている。

 FRBによるコロナ危機への対応は、金融システムの安定化を図るための責務と並んで、米国民のための雇用最大化と物価安定を図るための使命に導かれている。「長期目標と金融政策戦略に関する声明」で指摘している通り、われわれは雇用最大化を広範囲にわたる包括的な目標とみなしている。今後数年のうちに雇用最大化を実現できるかどうかは、長期のインフレ期待が2%でしっかり固定されるかどうかに大きく左右される。本日の声明でも繰り返しているように、インフレ率が持続的に2%を下回っているため、われわれはインフレ率が長期間で平均2%になるようにするため、また長期のインフレ期待が2%でしっかり安定するようにするため、当面は2%を緩やかに上回るインフレ率の実現を目指す。われわれは、これらの雇用とインフレ率に関する成果が得られるまで緩和的な金融政策スタンスを維持する見通しだ。政策金利に関しては、労働市場環境がFOMCの雇用最大化に関する評価と一致した水準に達し、インフレ率が2%に上昇して当面の間2%を緩やかに上回る軌道に乗るまで、われわれは引き続きフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を現行の0~0.25%に据え置くのが適切とみている。

 加えて、本日の声明で指摘している通り、われわれは引き続き、雇用最大化と物価安定の目標に向けて大きく一段と前進するまで国債保有を少なくとも月に800億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)保有を少なくとも月に400億ドル増やす。われわれは今年のバランスシート拡大が金融環境の実質的な緩和をもたらし、経済をかなり支えていると確信している。

 FF金利のフォワードガイダンスと相まって、バランスシート拡大のガイダンスは、景気回復が進展しつつあっても金融政策スタンスが引き続き極めて緩和的であることを保証する。われわれのガイダンスは成果に基づいており、雇用とインフレに関する目標実現に向けた前進と関連している。このため、目標に向けた前進が遅れるようであれば、FF金利のより低く予想される軌道を通じ、またバランスシートのより高く予想される軌道を通じ、ガイダンスは政策調整を強化するという意図を伝えるだろう。全般的に言えば、われわれの政策金利とバランスシートのツールは経済を強力に支えることになり、それを持続的に行うことになる。

 FRBは経済における家計向けをはじめ、大手企業および中小企業向け、州政府および地方自治体向け融資の流れを一段と直接支えるため、広範囲で強力な措置も講じてきた。融資の流れを維持することは経済へのダメージを和らげる上で、また力強い景気回復を促す上で重要だ。われわれのプログラムの多くは財務省の支援を必要とし、現在目の当たりにしているような極めて異常な環境においてのみ利用できる緊急貸し出し権限に依存している。これらのプログラムは主要な信用市場の補完装置としての役割を果たし、通常のルートを通じて民間の貸し手による融資の流れを回復させるのに役立っている。われわれはこうした貸し出し権限を前例のない範囲にまで広げており、大部分は議会や財務省による金融支援や支持によって可能となっている。コロナウイルス支援・救済・経済安全保障法(CARES法)に基づく資金は12月31日以降、新規の融資および新たな資産購入を支えるためには利用できないが、必要であれば財務省が為替安定化基金を通じて緊急貸し出しファシリティー向け支援を認めることができる。コロナ危機が過ぎ去り、(景気回復がしっかり軌道に乗る)時期が来れば、われわれはこうした緊急ツールを道具箱の中に戻す。

 私が以前から指摘している通り、これらは貸し出し権限であり、支出権限ではない。FRBは特定の受益者に資金を供与できない。われわれは融資を返済できる見込みの支払い能力のある事業者に対して融資できる広範な権限を有したプログラムないしファシリティーを設けられるにすぎない。多くの借り手は経済全般と同様にこれらのプログラムの恩恵を受けている。しかし、他の多くの事業者にとって返済が難しい可能性のある融資を獲得するには、これらのプログラムでは解決策にならないかもしれない。そうしたケースでは、直接的な財政支援が必要になるかもしれない。特定の当局が課税や支出の権限に加え、共同資源を社会的に割り当てるべきかどうかについて決定する権限を有している。これまでに講じられてきた財政政策的な措置は全米の家計や企業、地域社会に決定的な違いをもたらしている。とはいえ、現在の景気悪化はわれわれの生涯において最も深刻な事態だ。今年初めに見られていた経済活動や雇用のレベルに戻すには、しばらく時間がかかる。そして、それを実現するためには金融政策と財政政策の両面から継続的な支援が必要かもしれない。

 最後に、われわれは自分たちの行動が全米の地域社会や家計、企業に影響を与えると理解している。われわれの行動すべてが、公的使命への奉仕だ。われわれは景気を下支えするため、また難局からの景気回復をできる限り確実に力強くするため、あらゆるツールを活用することにコミットしている。

 ご清聴ありがとう。質問を受け付けたい。(了)

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