〔記者ノート〕堂島商取を国際金融センターの中核に=北尾SBIHD社長
2020年12月09日 13時12分
▼「大阪・兵庫に次世代の国際金融センターを誘致したい。その中核を担う大阪堂島商品取引所は総合取引所化を進めるべきだ」―。こう訴えるのはSBIホールディングス(HD)の北尾吉孝社長。まずは堂島商取の株式会社化を後押しし、現物取引所の立ち上げや持ち株会社化、クリアリングハウスを設置。さらに、農産物・鉱物資源などのコモディティーなどを金融商品化し、指数先物・天候デリバティブなどを総合的に扱う取引所に発展させる。同時に、大阪・兵庫に国際金融センターを誘致し、「首都機能型」の東京と「クロスボーダー型」の大阪をすみ分け、国内外から投資資金を呼び込むことで、堂島商取を日本取引所グループ(JPX)に伍(ご)する総合取引所に育てたい考えだ。
▼北尾社長は2日、自民党商品先物取引推進議員連盟の総会に招かれ、「商品先物市場活性化による国際金融都市構想について」と題して講演。居並ぶ国会議員や関係省庁幹部の前で、自身の構想を語った。参加したのは、同議連の竹本直一会長や平将明事務局長ら複数の国会議員に加え、金融庁、農林水産省、経済産業省の担当者ら数十人。日本商品先物振興協会も招待され、多々良実夫会長(豊トラスティ証券会長)は「国際金融都市構想を滞りなく進めるためにも、堂島商取は一日も早く株式会社化しなければならない」と強調。竹本会長は「堂島の株式会社化を後押しし、将来の堂島を応援していく」と、北尾構想にエールを送った。
▼堂島商取は、29日の臨時総会で株式会社化を正式に決める。7日の臨時理事会では、中塚一宏・元金融担当相(SBIHD顧問)ら3人を取締役候補に選出、1株当たりの価格を出資金の1口分の資産価値と同水準の約25万円に決めた。当初の資本金は10億円で、SBIHDが15%、ジャパンネクスト証券が20%、豊トラスティ証券と岡安商事がそれぞれ15%を保有する。残りの35%は会員から募った上で、第三者割当増資を実施。増資引受先には、農業関連団体や政府系金融機関、国内メガバンク、海外取引所、大手メーカーと幅広い業者を見込み、株式会社に来年度から移行する方針だ。
▼北尾社長はかねて、先物取引発祥の地とされる歴史的背景を強みに持つ堂島商取の活性化策を模索していた。大阪府も「デリバティブ取引の成長力を取り込むため、アジアのデリバティブ市場をけん引する一大拠点を創設したい」との考えを示しており、「堂島商取を国際金融センターの中核に育てるとの思いは官民で共有できている」(市場関係者)という。先物振興協会の多々良会長は「現在の日本(の金融市場)はJPXが独占している。競合する総合取引所が出現すれば、互いが刺激し合い、(投資家への)サービス向上につながるはずだ」と指摘する。
▼堂島商取の将来を見据え、北尾社長は「次世代の金融商品(デジタル資産)であるセキュリティートークンも取り扱う新たなPTS(私設取引システム)を設立したい」との構想も持つ。「政府と民間の協力による大規模ベンチャーキャピタルファンドの立ち上げ、預貯金中心の個人金融資産を資産形成にシフトさせる税制面での優遇措置などが必要。世界から投資資金を呼び込むには、税負担の軽減やビザ要件の緩和、行政プロセスの英語化、ロンドン取引所との連携なども急ぐべきだ」とし、今後も粘り強く関係方面に働き掛けていく。<鹿>
国際金融都市
東京以外にも国際金融センターを目指す動きが出てきた。SBIホールディングスの北尾吉孝社長は大阪・兵庫地区での整備を提唱。福岡県は産学官が連携 …
総合取引所
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