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暗号資産高騰、マーケットは調整へ=国際通貨研究所・志波氏

2020年11月27日 08時59分

AFP時事
AFP時事

 国際通貨研究所の志波和幸主任研究員は26日、時事通信の書面インタビューに応じ、高騰する暗号資産(仮想通貨)の先行きについて「マーケットは過熱気味であり、調整局面に入る」との見方を示した。その上で、他の金融市場に比べた市場規模の小ささを指摘し、投資家は資金の動き次第で相場が振れやすい点に留意すべきだと話した。

 ―代表的なビットコインの高騰をどうみているか。

 ビットコインは10月初めには1単位当たり1万~1万1000ドル付近で取引されていたが、直近では一時1万9000ドル台に達し、2017年12月に付けた2万ドルに迫った史上最高値をうかがう勢いだ。原因は二つ考えられる。

 第一に、新型コロナウイルス感染の経済対策の一環で、各国の中央銀行が相次いで金融緩和政策の実施や継続を発表したことだ。金融緩和政策の解除は当面ないとの見方から、投資資金は利回りが低下した国債から、株式などのリスク資産へとシフトし、一部が暗号資産に流入している。

 ―もう一つは。

 新型コロナ拡大を受けた各国の大規模な財政出動で、公的部門の累積債務の対GDP比が急速に悪化している点がある。将来の債務返済の不確実性が増したことは事実だ。通貨の希薄化観測から、各国の金融・財政政策に縛られない暗号資産への資金シフトが起きている。

 ビットコインの価格はまだ史上最高値に届いていないが、時価総額は過去最高を更新した。これは、過去3年間にマイニング(採掘)によって追加発行されたためだ。ビットコインが独り勝ちというわけではなく、他の暗号資産にも資金が流入している。実際、市場全体の時価総額に対するビットコインの比率は1月以降、60%前後で推移している。

 ―価格高騰に対しては。

 今のマーケットはいささか過熱しているのではないか。暗号資産は安全資産とされる金にたとえて「デジタル・ゴールド」と呼ばれることもある。その金価格を見ると、8月に1トロイオンス=2000ドル台の高値を付けた後は徐々に値を切り下げており、暗号資産との足並みがそろっていない。暗号資産も調整局面に入るのではないか。

 ―今後の展開をどうみるか。

 ワクチンの接種によってコロナ感染者が激減し、金融政策が超緩和状態からの脱却を見込めるようになった場合、暗号資産の価格は調整局面入りするだろう。半面、公的債務残高の増加はすぐに解決できるものではないため、より長期的な見地に立てば、主要先進国のデフォルトをにおわせるような情報やデマが発生した場合に、暗号資産価格が大きく変動する可能性が、今まで以上に高まるだろう。

 ―投資家が留意すべき点は。

 昨今の急騰によって暗号資産市場の時価総額は約60兆円に膨らんでいるとはいえ、他のマーケットに比べれば、依然として小さな世界である点だ。主要国の通貨流通量と比べればはるかに小さい。円は現金の流通量だけで110兆円ある。株式でもアップルなどは時価総額が約200兆円と、1銘柄で暗号資産全体を上回る。わずかな資金の流入や流出で、相場が大きく変動することを再認識してほしい。(了)

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