〔商品ウオッチ〕電力先物、関西の取引が活発化=猛暑で現物価格急騰
2020年10月07日 14時08分
東京商品取引所の電力先物取引で9月、これまで低調だった西(関西)エリアの取引が急増した。同エリアの出来高合計は前月比3.0倍の327枚(電力量換算859万4400キロワット時)で、電力先物の出来高全体の25.0%に達した。欧州エネルギー取引所(EEX)のサービスを使った取引でも、「関西エリア」の商品が初めて成約。関西地域での取引活発化は、猛暑による現物価格の急騰が背景にあるとみられる。
西エリアの取引はこれまで、東(東京)エリアに比べて極めて少なく、昨年9月の試験上場から今年8月末までの累計出来高は771枚と、全体の9.1%しかなかった。西日本は、日照時間が長く、太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーの普及が進んでいることから、現物の電力価格が東日本より安い傾向にある。業界内では「先物でヘッジをする必要性がない」(新電力)と考えられてきたことが要因の一つに挙げられる。
しかし、9月は3~8日にかけ、西エリアの日中ロード9月当ぎりが立ち会い外取引で、計300枚約定。立ち会い取引の出来高も9、10月きりで計17枚あった。納会した8月きりの最終決済高も含めた合計は327枚。上場以来の月間では、今年1月(357枚)に次ぐ大きさになった。
市場関係者からは「西日本の現物市場でスパイク(急騰)があったから」(電力トレーダー)との見方が出ている。日本卸電力取引所(JEPX)の1日前(スポット)市場では8月以降、全国的に猛暑により冷房使用が増えた影響で価格が上昇。特に、関西エリアをはじめとする西日本では、太陽光発電の供給が減る夕方の時間帯の価格が急伸した。9月1日には、翌日渡しの午後4時半~5時の価格が今年度最高値の1キロワット時当たり50円30銭を付けた。猛暑で電力需要が伸びる一方、降雨などもあって太陽光発電の供給が減り、需給が引き締まったようだ。
これらを背景に、9月上旬、足元の同月きりのヘッジニーズが高まり、西エリアの日中ロードを中心に、商いが増えたとみられる。
EEXでも、関西エリアのベースロードで10月物が372万キロワット時、11月物が360万キロワット時、それぞれ成約した。EEXの高井裕之・日本担当上席アドバイザーは「関西エリアで初めての成約があったことは、大きな進歩だ」と話している。(小代田・10月7日)