〔商品ウオッチ〕シカゴ大豆の取組、100万枚の大台視野に=24年半ぶり
2020年09月28日 13時45分
シカゴ穀物市場で、大豆相場の取組高が90万枚台後半まで拡大、100万枚の大台回復が視野に入った。大台替わりとなると約24年半ぶりとなる。
米主産地の天候不順による収量減少見通し、米中通商合意の履行に伴う中国の買い付け急増を背景に、相場は節目の10ドルを突破。上昇過程で、投機筋の資金が大量に流れ込んだとみられる。ラニーニャ現象の発生で、今後は南米の乾燥天候も懸念されることから、リスクに敏感なファンドマネーの流入は当面続きそうだ。
シカゴ大豆の24日時点の取組高は96万5230枚。ここ数年は70万~80万台で推移していたが、9月に入り増加が顕著になった。100万枚超えは、1996年2~3月までさかのぼる。この時は、前年の95年が米中西部の長雨による記録的な作付けの遅れで、大幅減産となった。
市場人気が盛り上がりを見せた主因は、米産大豆の減産予想だ。中西部が8月にハリケーンや高温乾燥に見舞われ、当初の豊作観測が一変。その後も、土壌水分の不足が顕在化し、実が成長する9月の着さや・結実期への影響が不安視されている。
米農務省調べによる20日時点の生育状況は、主産地アイオワ州で「優」と「良」の合計比率が48%と、主要18州平均の63%を大きく下回った。
また、米中が8月下旬に、米農産品の輸入を大幅に増やす貿易協定「第1段階合意」の履行を確認。米中貿易摩擦を受け、それまで低調な取引が続いていただけに、投機筋の買いを刺激したようだ。
農務省によると、中国向け大豆の輸出成約高は、17日までの累計で1924万トン。前年同期は206万トンで「成約ペースはかなり早い」(商品アナリスト)という。9月に入り、10万トン以上の大口成約の報告が相次いだ。
◇コロナ禍での大豆に割安感
こうした中国の輸入動向に加え、ファンドを勢いづかせたのは、そもそもの割安感。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受け、国際経済が変調を来した2月下旬以降、株式や商品相場は3月から4月にかけて急落した。コロナ前の直近の高・安値を比較した下落率は、米ダウ平均が38%、ニューヨーク金先物が15%。NY原油(WTI)先物に至っては54.5ドルから史上初のマイナス価格(40.32ドル)となった。
シカゴ大豆も10%下落したが、食料という側面から消費の減退は起こりにくく、相場の振れは限定的だった。世界の経済活動が再開し、再び資金が株や原油に向かい、値戻しが誘われる中、大豆は8月前半まで8ドル台で上値を抑えられていたが、足元は期近ベースで10ドル台を回復、約2年3カ月ぶりの水準で取引されている。
米商品先物取引委員会(CFTC)調べの22日時点のシカゴ大豆の建玉状況は、ファンドのポジションが21万8566枚の買い越し。買い越し幅が20万枚を超えたのは18年5月以来2年4カ月ぶり。フジトミの齋藤和彦チーフアナリストは「株、原油、金への投資が一巡し、大豆が行き場を失った資金の受け皿になった」とみる。
米主産地では、乾燥・低温予報が出ており、収量に影響を与える早霜リスクへの警戒が高まっている。また、ドイツで発生したアフリカ豚コレラ(ASF)により、有力な豚肉輸入国の中国が、米国産に調達先を切り替えるとともに、養豚業者向けの飼料用大豆の輸入を増やすとの観測がもっぱらだ。
さらに、天候不順の原因とされるラニーニャの発生は、南米の天候が少雨・乾燥になるといわれ、10月から種まきが始まる新穀大豆への作柄不安が漂い始めている。資源・食糧問題研究所の柴田明夫代表は「経験則からラニーニャは来年の米中西部に干ばつをもたらす可能性もあり、ファンドは弱気にはなれないだろう」と指摘している。(小田・9月28日)