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EU離脱、月内合意は困難か=英首相が新提案も―ニュースを探るQ&A

<2019年10月11日>

2019/10/05 16:12

 

ジョンソン英首相=8月21日、ベルリン/EPA時事
ジョンソン英首相=8月21日、ベルリン/EPA時事

 ジョンソン英首相が欧州連合(EU)に離脱案の代替策を提出した。17、18両日のEU首脳会議で承認を目指すが、合意の可能性は低いという見方が多い。

 -離脱案を変えるの。

 メイ前首相が昨年11月にEUとまとめた離脱案は、英国とEU加盟国アイルランド間の国境管理をめぐる解決策に批判が集まり、英議会で3度否決された。後任のジョンソン氏は、このままでは議会通過は不可能だと考え、代案をまとめた。

 -どんな内容?

 メイ氏の解決策は、対アイルランド国境を税関も国境検査もない開かれた状態に保つため、英国がEUの関税同盟に残留する選択肢を明記した。一方、ジョンソン氏は関税同盟の脱退と、国境から離れた場所での税関検査実施をうたっている。

 -見直しの背景は。

 関税同盟に残ると英国の意思で関税率を変更できず、EUの決定に従うことになる。離脱後の最大の目標とされる米国との自由貿易協定(FTA)締結は実現が遠のく。ジョンソン氏は2016年の国民投票で「EUを離脱して主権を回復しよう」と訴え、離脱派を勝利に導いた。「関税同盟に残るなら、離脱は無意味だ」と主張している。

 -従来案は間違い?

 そうとも言えない。アイルランドと地続きの英領北アイルランドでは、英国への帰属維持か、アイルランドとの統一かをめぐって紛争となり、1960年代以降に3600人以上が犠牲になった。98年の和平合意は北アイルランドの英帰属を確認する一方、将来的なアイルランドとの統一にも道を開いている。開かれた国境は和平の象徴だ。しかし、英国が関税同盟から抜けると、税関業務を復活せざるを得ず、開かれた国境、ひいては和平が台無しになると懸念されている。メイ氏は和平を優先し、断腸の思いで関税同盟をのんだ。

 -首相案の評価は。

 EUからの独立を重視する英国の強硬離脱派らは大歓迎だが、野党は「メイ氏の離脱案より悪い」と批判している。EUも否定的だ。

 -英国は譲歩するの。

 首相は単一市場に関する部分で既に妥協したと主張している。さらに譲れば強硬派の支持を失うリスクがあり、動ける余地は少ない。もっともEUは首相の妥協を「わな」と考えているようだ。

 -どういうこと?

 首相はメイ氏同様、北アイルランドに限ってEUの単一市場に残留することを容認したが、地元の同意が前提だという新たな条件を課した。首相に閣外協力している民主統一党(DUP)は単一市場に反対で、北アイルランド議会の複雑な議決手続きを利用すれば拒否権を発動できる立場にある。北アイルランドが関税同盟と単一市場から脱退すると、アイルランドとの一体的な地域経済が分断されるのは必至で、EUには受け入れ難い。

 -今後どうなるの。

 英政府が代案を修正しなければ、EUは突っぱねる構えだ。物別れの場合、政府は野党発議で成立した法律に基づき、月末の離脱期限を来年1月末まで延長するようEUに要請することになる。ただ首相は「10月末にEUから出る」と繰り返しており、「あの手この手で合意なき離脱を強行する」という観測もある。何が起きるかは分からない。(ロンドン時事)

 

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