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ESG投資、日米の潮流に=民主党バイデン氏が勝利宣言、菅首相は脱炭素宣言

2020年11月09日 09時42分

 環境・社会・ガバナンスを重視するESG投資に対する関心が日米で高まっている。日米の企業や投資家は、欧州に比べてESGの対応が遅れているとされてきたが、日本では菅首相が所信表明演説で「脱炭素社会」を宣言し、米国では環境や社会問題に熱心な民主党のバイデン氏が大統領選に当選確実になったことで、ESG投資が日米の新たな潮流になりそうだ。

◆ESG重視が顕著に=アムンディ

7日、米東部デラウェア州ウィルミントンで演説し、大統領選の勝利宣言をするバイデン前副大統領(EPA時事)
7日、米東部デラウェア州ウィルミントンで演説し、大統領選の勝利宣言をするバイデン前副大統領(EPA時事)

 米大統領選は8日午前(日本時間)、民主党のバイデン氏が勝利宣言した。
 仏系運用会社のアムンディ・ジャパンは10月末に公表したリポート「米国株式市場におけるESG投資の新潮流」で、「民主党が大統領で勝利し、議会で主導権を握れば、ESG重視の流れは、より顕著になる」とする分析を示している。
 具体的にみると「環境(E)」では、バイデン氏は、気候変動を選挙活動の主要なテーマにしてきたことから、規制や課税強化によって化石燃料のコストを引き上げる一方で、補助金などを通じて、再生可能エネルギーの生産コストを押し下げ、化石燃料離れを促進させることが期待されるという。
 「社会(S)」でも、バイデン政権の登場は、顧客に対して公正な金融機関にとって追い風になるだろう。また、労働改革はバイデン氏の政策課題の中核になっており、労働者を優先する企業は、明らかにESGの評価が上がるだろう。
 この結果「(運用会社などは)ESGを投資プロセスに適切に取り入れて『ESGインプルーバー(ESGへの取り組みを重視する企業)』を選定していくことが、今後ますます重要となり、従来のベンチマークに対して、より良好なリスク調整後リターンとアウトパフォーマンスが得られるようになる」と分析している。

◆企業が行動を変えるきっかけに=日興AM・神山氏

参院本会議で所信表明演説をする菅義偉首相=10月26日午後、国会
参院本会議で所信表明演説をする菅義偉首相=10月26日午後、国会

 「わが国は2050年までに温室効果ガスの排出をゼロにする」-。菅首相は、10月26日の衆院本会議で行った所信表明演説で、こう宣言した。
 日興アセットマネジメントの神山直樹チーフストラテジストは、動画コンテンツ「KAMIYAMA Second!」で、首相の脱炭素社会宣言について「(政府が)政策を変えて目標時点を決めたのは驚きだ」と評価するとともに、「時期を切って『こうなるべきだ』という未来像を示し、そこから『今やるべきこと』を考えるという、ESG投資の趣旨に合った政策になりそうだ」と期待を表明した。
 菅首相は、演説の中で「温暖化への対応は経済成長の制約ではない。積極的に温暖化政策を行うことが、産業構造や経済社会の変化をもたらし、大きな成長につながるという発想の転換が必要だ」とする基本理念を示した。
 神山氏は、投資家に対して「政府の姿勢の変化が、企業の行動を変えるきっかけになることを考慮するタイミングだ」と注意を喚起するとともに、「(ESG投資が)一時的ブームに終わることなく、持続的に市場の興味となることを期待する」(神山氏)と強調している。
(了)

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