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加速する企業のESG対応=CGコード改訂、東証市場再編で―三井住友DSの藏本氏に聞く

2021年06月17日 10時00分

三井住友DSアセットマネジメント藏本祐嗣・責任投資オフィサー三井住友DSアセットマネジメント藏本祐嗣・責任投資オフィサー

 ESG(環境・社会・ガバナンス)に関する企業の情報開示や対応が加速する。コーポ―レートガバナンス・コード(CGコード、企業統治指針)の改訂や、東証の市場再編により、基準が強化されるためだ。投資家にとって、持続可能性の高い企業を見つけるチャンスが広がるなど、投資しやすい環境が整備される。

 運用各社は、株主総会等でESG情報の開示要請を強める一方、投資家に対して欧州基準を満たしたレベルの高い運用報告ができるように準備を進めている。三井住友DSアセットマネジメントの藏本祐嗣・責任投資オフィサーに話を聞いた。

◆取締役会の多様性を重視

―CGコード改訂で、ESG関連の注目点は。

 藏本氏 日本証券取引所は6月11日、上場企業の行動規範となるコーポレートガバナンス・コードを改訂した。その狙いは、不確実性・複雑性が高まる厳しい環境に対応できる、強い経営者を育てることにあると考える。それにより、グローバルな競争に勝てる企業を生み出し、日本の株式市場に海外資金を流入させることができる。

 ガバナンス(G)では、取締役会の多様性を推進することが重要だ。ジェンダーや国際性、職歴、年齢などで多様な人材を集めることで、取締役会の議論の質を高め、厳しい競争に勝ち残る経営判断ができるようにする。独立社外取締役についても、弁護士や学識経験者を入れて形式的に人数をそろえるのではなく、他社での経営経験を有する人を加えるなど実効性のある対応を求めている。

◆環境はビジネスのど真ん中の経営リスク

―環境と社会の注目点は。

 藏本氏 環境(E)については、それぞれの会社が生き残るうえで、まさにビジネスのど真ん中の経営リスクそのものになっている。例えば(二酸化炭素の排出削減など)脱カーボンに対応できるかどうかが、企業の将来を左右する。気候変動など地球環境問題に対して、積極的・能動的な対応と情報開示を求めている。

 社会(S)では、人権の尊重、従業員の健康や労働環境への配慮、公正・適切な取引などに取り組むことが重要だ。女性や外国人、中途採用者の管理職への登用については、その考え方を明らかにし、測定可能な指標を示して継続的に開示すべきだ。

◆環境開示は世界共通の枠組みで-プライム市場

―東証市場再編で、ESG関連の注目点は。

 藏本氏 東証は現在、企業規模に応じて市場第1部など4市場に分かれている。2022年4月から、最上位の「プライム市場」、中堅企業向けの「スタンダード」、新興企業を対象とする「グロース」の3市場に再編する。プライム市場は、グローバルに開かれた資本市場をコンセプトに、一段高い基準を設けている。

 例えばプライム市場に上場する企業に対して、サステナビリティに関する情報は「TCFDまたはそれと同等の枠組みに基づく開示」を求めている。TCFDとは、先進20カ国(G20)の財務相中央銀行総裁会議の要請で、2015年に設置された「気候変動財務情報開示タスクフォース」だ。気候変動リスクに関して、世界共通の情報開示の枠組みを定めた報告書を公表している。

◆株主提案は内容を吟味して判断-今年の株主総会

―今年の株主総会で、ESG関連の注目点は。

 藏本氏 環境や社会問題に関する非政府組織(NGO)を主体として株主提案が増えている。昨年は、メガバンクの一角に、気候関連データの開示を求める定款変更の株主提案が出て、可決はされなかったが、かなり高い賛成票を集めた。

 当社は5月にプレスリリースした「議決権行使の当面の方針および今度の方針について」の中で、「気候変動や人権等、ESG情報開示に関する株主提案について、株主提案が求める開示内容、範囲、項目が適切と判断できる場合には肯定的な判断を行う」とする方針を公表した。

◆ESGで十分な情報開示を求める-今後の方向性

―来年度以降の株主総会で、ESG関連の注目点は。

 藏本氏 CGコード改訂や東証市場再編を受けて、プライム市場に上場する企業に対しては、株主総会での議案賛否の判断基準を見直す可能性がある。当社は、開示したプレスリリースにて「自社のサステナビリティにかかわる十分な情報開示、ロードマップの策定、経営トップのコミットメントなどがなされない企業に関しては、経営トップの取締役再任案に否定的は判断を行う」と、今後の方向性を示した。実施時期については、改めて企業に伝える予定だ。

◆ESG情報で、投資家への運用説明を拡充

-運用会社にとってESGの重要性は。

 藏本氏 欧州では、「欧州タクソノミー(分類システム)」を設けて持続可能な経済活動を定義したり、資産運用会社を対象としたサステナビリティ関連の開示規則(SFDR)を設定したりして、投資家保護を進めている。

 日本の運用会社も、欧州の運用会社の委託を受けて日本株を運用する場合、SFDRを満たす必要がある。このため、グローバルな投資の対象になる日本企業に対しては、高いレベルの情報公開を求めていく。きちんと情報開示しない企業には、投資できなくなるからだ。

 投資家に対しては、ポートフォリオ全体として、気候関連データがどのように改善しているか、時系列で説明する流れになっており、対応を進めていく。

◆10年先を読むためにESG情報は不可欠

-資産運用にとってESGの重要性は。

 藏本氏 ESG情報は、投資先企業を選定するうえでも重要な要素だ。過去の財務諸表を見ても、10年先の競争力を予想できない時代になっている。われわれ運用会社は、CGコードに盛り込まれた課題に対して「経営者がどれくらい真剣に考えているか」「どの経営者が一番うまく対応できるか」などを見抜くことを求められている。

 将来を展望すると、例えば(二酸化炭素の排出量に応じてコスト負担を求められる)カーボンプライングが始まれば、産業構造や競争環境が大きく変化するだろう。鉄鋼であれば、電気を使う電炉で生産するか、コークスを燃やす高炉での生産を継続するかなどの大きな経営判断を求められる。技術革新が、マーケット・シェアをひっくり返す可能性もある。ESG情報は、投資銘柄を選定するアクティブ運用のファンドマネジャーにとって、欠かせない情報になっている。(了)

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