〔マーケット見通し〕米景気の過熱懸念が後退、落ち着いた展開に-三菱UFJ国際・入村氏
2021年06月21日 10時00分
三菱UFJ国際投信の入村隆秀・戦略運用部経済調査室室長=米国の中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)は15~16日、連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、事実上のゼロ金利政策を解除する時期について、2023年に前倒しする見通しを示した。これまでは24年以降としていた。
◆FOMCに冷静だったマーケット
これに対して、発表当日は長期金利が小幅上昇し、ナスダック総合指数が下落したものの、翌日には長期金利は低下、ナスダックは上昇に転じた。マーケットの受け止め方は、予想以上に冷静だった。
◆年末か来年初のテーパリング開始を見込む
今後のマーケットの注目点は、FRBがいつテーパリング(量的緩和の縮小)を開始し、どれくらいの速度で進めていくか-に移る。当社の予想だが、今年末か、来年初にテーパリングを始め、来年末には完了すると見ている。この結果、FRBは再来年(2023年)に利上げを行う環境が整う。
◆テーパリング中も落ち着いた市場を予想
テーパリングが始まってからも、株式や債券の値動きは、落ち着いたものになるだろう。その理由だが、マーケットが恐れているのは、米国が利上げすることではなく、利上げの時期が遅れることだからだ。利上げが遅れれば、物価が高騰し、景気も過熱する。それを抑え込むために、急激で大幅な利上げに追い込まれれば、マーケットが混乱するだろう。今回、FRBがインフレに対して「タカ派」に転じたことで、こうしたリスクは低下した。マーケットはむしろ安心したと言えるだろう。
◆米国は「高圧経済」で活力回復狙う
米国の金融・財政当局は、大胆な政策の見直しを行っている。まず、金融政策だが、予防的にインフレを抑え込むという伝統的な政策手法をやめ、2%のインフレ目標が達成されても直ちに利上げせず、「平均してインフレ率が2%になる環境になったら利上げをする」方針を打ち出している。財政面でも大規模な支出を予定している。極めて緩和的な金融・財政政策により景気を過熱気味にする「高圧経済」によって、物価と賃金を一時的に上昇させ、労働参加率を高めることで、経済の活力を回復させようとしている。
◆年末にかけ1ドル=110円台で推移か
年末に向けたマーケットの見通しだが、ドル・円相場は、明確な方向感は出にくく、1ドル=110円台で推移するだろう。ダウ工業株30種平均は、これからも緩やかなリスク選好が続き、年末には3万5000ドル程度まで上昇するだろう。ただ、マーケットは、米国経済の回復を相当、織り込んでおり、ほかの国々の株価指数に比べると上昇は緩やかなものになろう。(了)