2024年のIPO市場、「改革の成果が現れる」=時期が分散、初値は抑制-三井住友DSアセットの金子氏に聞く
2024年12月06日 09時30分
三井住友DSアセットマネジメントは、「2024年のIPO(新規株式公開)動向と展望」をテーマに勉強会を開催した。運用部リサーチアクティブグループの金子将大シニアファンドマネージャーは、「公開時期が分散し、初値高騰が抑制されるなど、改革の成果が現れており、2024年は『健全なIPO市場に向かい始めた年だった』と言えるのではないか」と評価した。
◆やや抑えめの件数に
-24年のIPOは
金子氏 年間のIPO件数は90件弱と、前年(96件)と比較すると、やや抑えめになる見通しだ。これは、グロース(成長株)市場が軟調だったことに加え、大型上場を控えてスケジュールをずらした可能性がある。また、東証は資本コストを意識した企業改革を要請しており、こうした対応に時間を要しているのかもしれない。
-IPO改革とは
金子氏 スタートアップ企業の活性化に向け、IPOの価格決定プロセスが見直された。具体的には、日本証券業協会は23年10月、上場承認日から上場日までの期間短縮や、上場日の柔軟な変更を可能にした。また、東証は23年6月、IPO銘柄の初値決定日までの成行注文を禁止した。
◆時期が分散、初値は抑制
-見直しの成果は
金子氏 一つ目は、IPOの時期が徐々に分散していることだ。これまでは四半期末月に集中する傾向があり、「銘柄数が多いために、1銘柄に十分な資金を投資できない」「調査が追い付かない」といった弊害があった。
二つ目は、初値高騰(いわゆる「IPO Pop」)が収まりつつあることだ。24年第2四半期以降、平均の初値騰落率は公募価格の2割程度に落ち着いている。
◆スモールIPO問題は残る
-IPOの規模はどうか
金子氏 大型と小型の二極化が進んでいる。2024年は、タイミー(215A)、東京地下鉄(9023)、リガク・ホールディングス(268A)などの大型IPOが前年より増えたが、小型のIPOも多かった。
-24年の評価は
金子氏 IPO企業規模の小さい「スモールIPO問題」はまだ残っているが、ここ数年で議論が進められてさまざまな施策が導入された結果、2024年は、「健全なIPO市場に向かい始めた年だった」と言えるだろう。
また、大型IPOとなった東京地下鉄は、上場時に7000億円だった時価総額が、初値時は9500億円に上昇し、その後も値を維持している。今後のIPOに良い影響を与えそうだ。
◆東証の市場改革、クロスオーバー投資
-25年の注目点は
金子氏 3点ある。一つ目は、東証の市場改革の動きだ。グロース市場の上場維持基準が厳格化されれば、「上場企業数が多すぎて資金が分散してしまう」という問題が緩和され、新興市場の盛り上がりにつながる可能性がある。
二つ目は、非上場段階から上場後まで継続して株式を保有する「クロスオーバー投資」が拡大していることだ。2024年は、公募投信でクロスオーバー投資が可能になり、新規ファンドが設定された。非上場株市場に、機関投資家やファンドが参入することは、IPOにとっても、企業にとってもポジティブなことだ。
三つ目は、形式基準がなく柔軟に上場できる「TOKYO PRO Market」の銘柄数が増加していることだ。信用力向上のメリットを活かしながら、ガバナンス体制などを強化し、将来的に一般市場にステップアップ上場を目指す「IPO予備軍」が増えることを期待している。
-25年のIPO市場の展望は
金子氏 グロース市場や中小型株は軟調な相場が続いており、グロース・小型IPOへの逆風が続くかもしれないが、大型IPOが増えていく可能性に注目している。