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ピクテ、オルタナティブ投資でカンファレンス=不透明な市況環境を見据えた投資戦略

2024年12月06日 15時00分

萩野琢英社長

 ピクテ・ジャパン(東京、萩野琢英社長)は、「不透明な市場環境を見据えたピクテのオルタナティブ投資戦略」をテーマにカンファレンスを開催した。欧州でオルタナティブ資産を運用する運用マネジャーが来日した。

 ピクテ・ジャパン執行役員商品本部長の横谷宏史氏は「インフレ率が高止まる中、長短金利が逆転したり、株式と債券の相関が高まったりするなど、市場環境は不透明になっている」と分析、「オルタナティブ投資の重要性が高まっている」と指摘した。主なポイントは以下の通り。

◆分断の時代、インフレ率が高止まる

-世界の経済情勢をどう見るか。

横谷氏 2000年代初頭は、経済・金融の「グローバル化」が進んだ。生産性が向上し、インフレが起きにくい状況が続いた。しかし、2022年以降、グローバル化に終止符が打たれ、「分断の時代」が始まった。今後は構造的にインフレ率が高止まる可能性がある。

 こうした中で、長短金利が逆転する「逆イールド」が起きている。インフレ鎮静化のために中央銀行が利上げしたことで、短期金利は上昇し、長期金利は景気悪化懸念で低下したためだ。

 従来であれば、インフレが収まり、利下げ期待が広がるため、逆イールドはすぐに解消することが多かった。しかし、米国では2年近く、逆イールドが続いている。構造的にインフレ率が高止まりし、中央銀行が利下げに踏み切れなかった。

◆債券投資の収益低下、株式と債券の相関高まる

-懸念されることは

横谷氏 3点ある。一つは、債券投資でリターンを得ることが難しくなっていることだ。順イールドであれば、償還が近づくほど金利が低下(債券価格が上昇)することで収益が得られるが、逆イールドでは、こうしたロールダウンによるキャリーが得られず、債券のリターンがマイナスになる可能性がある。

 二つ目は、ヘッジコスト控除後の利回りがマイナスになっていることだ。ヘッジコストは、基本的に日本と海外の短期金利差によって決まる。米国が利下げに転じ、日銀が利上げを始める中で、ヘッジコストは低下することが見込まれる。ただ、市場が織り込んでいる3年後のヘッジコストは、3%台後半と意外に高い水準にあり、ヘッジ付き外債への投資が難しい環境は、しばらく続きそうだ。

 三つ目は、株価と債券価格が同じ方向に動く「順相関」になっており、ポートフォリオにおいて単に株式と債券を保有するだけでは分散効果が低下してきてしまうことだ。過去のデータを見ると、インフレ率が高い局面では、株式と債券の相関が高まりやすい傾向があることが分かる。

 こうしたことを背景に、相対的に高いリターンが期待される「オルタナティブ投資」の重要性が高まっている。

◆欧米の不動産市場、底打ちの可能性

-オルタナティブ市場の状況は。

横谷氏 注目される動きが3点ある。一つ目は、欧米の不動産市場だ。中央銀行の利上げにより市況が大きく悪化したが、2023年から下げ止まりが見られるようになり、今年の初めからボトムアウトが明確化してきたように思う。

 二つ目は、欧米のプライベートエクィティ(PE)だ。利上げによってM&A(合併・買収)やIPO(新規公開株式)の動きが鈍化したことで、既存のPEファンドの運用期間が延長されたり、新規募集が減少したりしていた。そうした中では、しっかりしたパフォーマンスを上げることができるマネジャーの選別が重要になり、共同投資などが注目されるような動きが出ている。ただしこれらは、米中銀が利下げに転じたことで、2025年以降は改善に向かう可能性がある。

 三つ目は、ファンドの集中化が起きている。PEファンドやヘッジファンドの市場規模は拡大しているが、ファンド数は減少しており、大きなファンドがより大きくなっている。

◆顧客のための投資家(Investor for clients)

-ピクテの強みは

横谷氏 ピクテは1805年の設立で、210年以上にわたって、欧州の富裕層の資産を預かり、様々な資産に分散投資してきた。「顧客のための投資家」として、お客さまに代わってファンドを選択する「目利き力」が強みだ。次世代に資産をつなぐ長期的な視点で、戦争や恐慌を乗り越える資産保全を行ってきた。1980年代からPEやヘッジファンドを資産運用に組み込んでおり、有力なファンドマネジャーと長期の関係を築いている。

 

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