スマホで投資のハードルを下げる=分かりやすさ、使いやすさを工夫-PayPay証券の番所社長
2024年11月14日 12時00分
スマホ専業証券のPayPay証券(本社東京、番所健児社長)は、日常生活に身近なスマートフォンをベースに、未経験者の投資家デビューに成果を上げている。9月末時点で少額投資非課税制度(NISA)口座数が34.4万口座を突破。10月から提供開始した投信つみたてサービスの「PayPayおまかせ運用」の利用者は、スタートから1カ月で1万人を超えた。番所社長に、投資家の裾野拡大に向けた取り組みなどを聞いた。
-口座数拡大の要因は
番所社長 QR決済最大手のPayPayは6600万人超のユーザーを擁しており、スマートフォンの決済アプリの中でさまざまな金融サービスを展開している。当社は、このPayPayのプラットフォーム上で、そのメリットを生かして、スマホ専業証券として新しい形態の証券サービスを提供している。
NISA口座の開設から「つみたて投資」の設定、さらに本格的な証券取引まで、分かりやすく、使いやすいUIUX(顧客接点・体験)でサービスを提供しており、そのことがお客さまに支持されていると考えている。
-資産形成を取り巻く環境は
番所社長 今年1月に新しいNISA(少額投資非課税制度)がスタートした。制度が恒久化され、運用益が非課税になる投資額が大幅に拡充された。これまで投資経験のなかった人を含めて、全ての方が投資を始める時代がやってきた。
未経験者や初心者でも、スムーズに資産形成を始められるサービスが求められている。コンビエンスストアでPayPayを使って買い物をするのと同じような感覚で、簡単に投信や株式を購入できる体験を提供したい。
-未経験者・初心者向けのサービスは
番所社長 10月初めにスタートした、投信つみたてサービスの「PayPayおまかせ運用」は、利用者数が1カ月で1万人を超えた。多くの方からご好評をいただいており、手応えを感じている。
このサービスは、日常生活で使用するPayPayの決済アプリから4ステップで設定できる。さらに、ファンドの選択肢を2本に絞り込み、「毎日500円のつみたて」を基本設定として提案している。
「NISA口座を開設したが『何を買ったら良いか分からない』『どのような方法でつみたてたら良いか分からない』」という未経験者や初心者の声に応え、選びやすく、迷わない仕組みを工夫した。未経験者や初心者が投資を始めるハードルを引き下げ、「貯蓄から投資へ」と行動変容を促すことを狙っている。
「PayPayおまかせ運用」の内容は、本格的な金融サービスだ。例えば、投資するファンドは、キャピタル・インターナショナルの「キャピタル世界株式ファンド(DC年金つみたて専用)」と三菱UFJアセットマネジメントの「eMAXIS/PayPay証券 全世界バランス」から選択してもらう。前者は長期にわたり優れた運用実績を持つ本格的な株式のアクティブファンドだ。後者は世界のさまざまなアセットクラスに分散投資し、機動的・きめ細やかな自動運用を行うバランスファンドだ。
また、「毎日」積み立てることで、日々の相場の動きを自身の資産形成に取り入れることができる。投資タイミングを分散し、平均購入価格を抑制するという観点から、究極のドルコスト平均法と言えるだろう。
さらに、「1日500円」のワンコイン投資なら、1カ月の投資額は1万5000円程度になる。お客さまにとって受け入れやすく、始めやすい金額で、資産運用を始める人にとって十分な投資額といえるだろう。
-金融教育やアフターフォローの取り組みは
番所社長 金融教育については、お客さまそれぞれの状況に合わせた、金融リテラシーの向上を目指したコンテンツを提供しており、今後も充実していきたい。
具体的には、当社が独自に運営するオウンドメディア「資産運用の1st STEP」で、資産運用の基礎やマーケット情報を配信している。アニメーションや動画を使ったり、グラフィックを活用したりして、スマートフォン上で見やすく、分かりやすいコンテンツになるように工夫している。
アフターフォローでは、例えば8月5日に日経平均株価が過去最大の下げ幅を記録したときなどに、相場急変時の考え方をすぐに配信した。スマートフォンを利用したサービスなので、電車の移動時間など日常生活の空き時間に、気軽に見ていただけるところが強みだ。
スマートフォンの小さな画面の中で、いかに見やすく、分かりやすいコンテンツを提供するかという点は、難しいところであると同時に、当社が強みを発揮できるところだ。ユーザーの声を聞きながら、工夫を凝らしている。当社はたくさんのエンジニアを擁しており、外注せずに、自社内ですばやくアイデアをサービスに反映できる。
このほか、高校での出張授業など、学生を対象にした金融教育を実施している。当社のポイント運用が、資産運用を始めるきっかけの題材として、高校生向けの資料集に取り上げられた。
-PayPay証券が目指す「今までにない証券サービスの姿」とは
番所社長 当社は、「資産運用を誰にとっても当たり前に」をミッションに掲げている。資産運用は富裕層だけのものではない。誰もが、お金の不安を払拭し、より良い暮らしのできる未来を創るために、資産運用の概念をアップデートしたいと考えている。
サービスの提供に当たって「ユーザー・ファースト」を大切にしている。20代のお客さまと、50代のお客さまでは、似ているニーズもあるが、異なる部分もある。また、投資経験によってもお客さまの求めるサービスは違ってくる。当社は、データーとテクノロジーを活用することで、お客さまにごとにカスタマイズした「ワン・ツゥー・ワン(1対1)」のサービスを提供することに挑戦していきたい。
PayPayは、決済を軸に「クレジット」や「銀行/ローン」「資産運用」「保険」を組み合わせた金融エコシステムの構築を進めている。この中で、「資産運用」は、お客さまの資金を預かり、殖やすという機能を担う重要な役割を担っている。
-社長として大切にしていることは
番所社長 私は、ソフトバンクでフインテック領域の新規立ち上げに従事し、PayPayの設立にも参加した。この中で、海外の新しいビジネスモデルと接し、多くの若い経営幹部と交流する機会に恵まれた。彼らは、経営の方針を決めるだけでなく、自ら現場で先頭に立ってリーターシップを発揮していた。そうした姿に感銘を受けた。
私も、現場で率先垂範して行動している。「鳥の目、虫の目、魚の目」を持つことを心掛けている。すなわち、俯瞰して大局を捉え、複眼で多角的に評価し、トレンド(流れ)を見てこの先の変化を想像していきたいと考えている。
当社は、チャレンジャーだ。新しいことをやらなければ意味がない。決して諦めることなく、二の手、三の手を打っていく。うまくいかないことがあっても、やる気を保ち続けるという意味で、知識よりもマインドが大切だ。