SSGA、個人投資家向けファンドを本格展開=最低コストのインデックスF設定、米国上場ETFを追加
2024年02月09日 08時00分
米系大手運用会社ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ(SSGA)はこのほど事業戦略説明会を開催し、個人投資家向けファンドを日本で本格展開する方針を明らかにした。1月に業界最低水準の低コスト・インデックス・ファンド・シリーズ「SSGA インデックス・シリーズ・ライト」を新規設定し、過去5年で最大となる11銘柄の米国上場ETF(上場投信)を追加登録した。今後もさらにサービスを拡充していく。日本法人の代表取締役でチーフ・インベストメント・オフィサーの新原謙介氏らに、事業展開や商品拡充の考え方を聞いた。
◆ETFのパイオニア
-SSGAとは。
新原氏 SSGAは、米国ボストンに拠点を置くステート・ストリート・コーポレーションの運用会社だ。全世界で3.69兆ドル(約550兆円、2023年9月末)の資産を運用している。インデックス運用に強みを持ち、1993年の「米国初のETF上場」を皮切りに、「株式セクター別ETF」や金現物に裏付けされた「金ETF」を初上場するなど、このマーケットのパイオニアとして活躍してきた。これに加えて、高度な数理計算を駆使するクオンツ運用や、特色のあるアクティブ運用などを提供している。
◆リテール商品を拡充
-日本での事業展開は
新原氏 日本では98年に投信投資顧問会社を設立し、主に公的年金や金融機関など機関投資家から29兆円の資金を受託している。岸田文雄政権が政策の柱一つに「資産運用立国」を掲げ、投資家の裾野拡大に本格的に取り組む中で、グローバルから見ても日本への注目が高まったことから、当社は昨年、日本での事業展開の見直し、リテール展開を強化することを決めた。
具体的には、銀行や証券会社を通じて、個人投資家に運用商品を本格的に提供していくため、戦略イニシアティブを立ち上げ、体制を強化した。その成果として、低コスト・インデックス・ファンド・シリーズの新規設定や、11銘柄の米国上場ETFの国内追加届出など、具体的なサービスを紹介できる段階になった。
◆他社にはできない商品を提供
-SSGAの強みは
新原氏 具体的には、銀行や証券会社を通じて、個人投資家に運用商品を本格的に提供していくため、戦略イニシアティブを立ち上げ、体制を強化した。その成果として、低コスト・インデックス・ファンド・シリーズの新規設定や、11銘柄の米国上場ETFの国内追加届出など、具体的なサービスを紹介できる段階になった。
例えば、米国の社債やハイイールド、モーゲージ証券であれば、上場株式とは異なり、店頭での売買になるので、米国に拠点を置く運用会社の強みを発揮できるだろう。日本において「貯蓄から投資へ」を推進する中で、これからは株式だけでなく、インカムが期待できる債券への関心も高まると考えている。
個人投資家の皆さまにも低コストで、クォリティーの高い、他社では提供できない商品を、グローバルな運用会社の強みを活かして、提供できると考えている。
◆ESG、テーマ型など多様なラインナップ
-追加届出した米国上場ETFの内容は
岩崎宏明常務執行役員 日本の投資家の皆さまにより多くの選択肢を提供するため、1月26日に金融庁に11銘柄の米国上場ETFの届出を行い、手続きを完了した。早ければ2月中旬から後半にかけて、取り扱いを決めた証券会社の外国証券口座を通じて、米国株式と同じように、これらの米国上場ETFの売買ができるようになる。
11銘柄を具体的に見ると、ESG(環境・社会・ガバナンス)に配慮したもの、低コスト・コア、株式グローバル配当(増配企業)、インカム関連、テーマ型など、多岐にわたる商品をそろえた。テーマ型ETFは当社としては日本初で、米国のテクノロジー企業のKensho社が人工知能(AI)を使ってスクリーニングしたクリーン・パワーやスマート輸送の指数に連動する投資成果を目指す。
これにより、日本の投資家が購入できる当社のETFは、東証に上場している「SPDR® S&P500®ETF(証券コード1557)」「SPDR® ゴールド・シェア(同1326)」「ABF汎アジア債券インデックス・ファンド(同1349)」の3本を含め、62銘柄になった。
◆2月下旬に売買可能に
-低コスト・インデックス・ファンドは。
岩崎氏 1月11日に低コスト・インデックス・ファンド・シリーズ「SSGA インデックス・シリーズ・ライト」を新規設定し、自己資金で運用を始めた。2月下旬には販売会社での取り扱いが始まり、個人投資家の皆さまにご購入いただけるようになる見通しだ。
このシリーズを設定したことは、日本の個人投資家の皆さまにより多くの選択肢を提供するという、当社グループのコミットメントの表れと理解していただければと思う。日本では、ETFより投資信託を好まれる投資家が多いことから、新NISAの開始に向けて準備を進めてきた。投資未経験者や初心者をはじめ、幅広い投資家の皆さまの資産形成のニーズに応えていきたいと考えている。
◆単純比較できないがETFが低コスト
-海外とコスト比較は。
岩崎氏 日本では、低コストのインデックスファンドが人気だ。一方、海外では、低コストの運用商品と言えばETFが使われる。ETFのコストは「総経費率」だ。これは、インデックスファンドの「信託報酬」と「その他費用」を加えたイメージだ。
インデックスファンドとETFのコストは、単純に比較できないが、一般的にはETFの方が低コストだ。例えば、さきほど紹介した「SSGA インデックス・シリーズ・ライト」の「ステート・ストリートS&P500インデックス・オープン」の信託報酬は、税抜きで0.068%だが、米国上場ETFの「SPDR®ポートフォリオS&P500®ETF」の総経費率は0.02%だ。
◆ファンドで入門、経験を積んでETFへ
-ファンドやETFの普及に向けた戦略は
岩崎氏 インデックスファンドは、銀行が取り扱っている。さらに、基準価額の算出は1日1回なので、株式と同じように市場価格で売買されるETFより分かりやすいと感じる個人投資家が多いようだ。
当社は、インデックスファンドとETFの両方をそろえているので、まずはインデックスファンドで投資をスタートしていただき、SSGAを知ってもらった上で、もっと運用の幅を広げたいと思ったときにETFを使ってもらえればと考えている。
低コスト・インデックス・ファンド・シリーズ「SSGA インデックス・シリーズ・ライト」は、国内外の株式や債券の指数を参照する7ファンドで構成されている。複数のアセットを組み合わせたポートフォリオを構築するパーツがそろっているので、かなり低コストで分散投資が可能になる。そうしたことを訴えていきたいと考えている。
◆ETF、インデックスとアクティブのすき間を埋める
-運用のアドバイスは。
新原氏 インデックス型の投資信託は、典型的な市場全体の値動きに連動するβ(ベータ)の獲得を目指すものが多い。一方、ETFには、テーマ別や産業別のインデックスなど多様性があり、指数を上回る超過収益α(アルファ)を狙うアクティブファンドとのすき間を埋める商品になれるのではないか。個別企業の内容を調べて複数の株式に分散投資するのは大変だが、ETFであれば企業を分散しながら、相対的に低コストで、各自が考えるテーマに沿ったアクティブな運用ができる。
また、若いうちは、例えば、全世界株式を参照するインデックスファンドで資産を積み上げることも有効だと考えるが、年齢を重ね、資産がある程度の規模になったら、資産クラスを分散したポートフォリオ運用を目指すことが必要だろう。その時に、外国株式一辺倒ではなく、日本株式で為替リスクを抑制したり、内外の債券に分散投資する必要性が高まる。