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ネット直販に絶対収益型ファンドを追加=成果報酬で低コスト―三菱UFJ国際投信

2020年09月15日 11時18分

ダイレクト・マーケティング部シニアマネジャーの平床賢太氏

 三菱UFJ国際投信は23日、販売会社を介さないインターネット直接販売サイト「mattoco(マットコ)」に、新規設定した日本株ファンドを追加する。市場動向に左右されずにリターンの確保を目指す絶対収益追求型の「百戦錬磨の名人ファンド」だ。株式の「買い」と信用取引の「売り」を組み合わせた特殊な手法で、安定した値動きを期待する投資経験の少ない層に新たな選択肢を提供する。手数料は、運用益の一部を受け取る成果報酬型を採用し、販売会社分の手数料をゼロにすることで低コストを実現した。ダイレクト・マーケティング部シニアマネジャーの平床賢太氏に、長期投資を応援する同社の取り組みを聞いた。

-「mattoco」とは。

mattocoロゴ

 平床氏 投信会社が運用するファンドの大部分は、銀行や証券などの金融機関を介して個人投資家に販売されている。ただ、当社は昨年3月、「投信の製造元」としてファンドやその関連情報を投資家に直接届けたいと考え、投信販売サイトを立ち上げた。「mattoco」はその愛称だ。
 働く世代や女性を主なターゲットに、長期・分散・積み立て投資を実践して、お子様の学資や住宅資金、老後資金を作れるように、例えば業界最低の運用コストを目指すインデックス連動型ファンド「eMAXIS Slim」シリーズといった、中長期の資産形成に適した低コストファンドを、ノーロード(販売手数料ゼロ)で提供している。

-新ファンド追加の狙いは。
 平床氏 スタートから1年半が経過し、当社の直販サイトを利用して、中長期の積み立て投資を実践する現役世代のお客さまが増えてきた。ただ、多様な属性のお客さまに対応することを検討する中で、老後資金を着実な運用で作りたい40代以上の現役層~退職前後層の運用ニーズに応える商品を追加したかった。
 当社でアンケート調査したところ、こうした人たちは三つの特徴を持っていることが分かった。①運用期間として5年を超える期間を許容できる②運用成績が大きくマイナスになることは避けたい③投資する前に運用実績を確認したい-。
 こうした条件に適したファンドを社内で探したところ、機関投資家向けに16年間にわたって年率2%程度の安定運用を提供している絶対収益追求型の私募ファンドがあることが分かった。これをマザーファンドとして、個人投資家も購入できる公募ファンド「百戦錬磨の名人ファンド」を作った。

-「百戦錬磨の名人ファンド」とは。
 平床氏 絶対収益追求型の日本株ファンドだ。具体的には「相対的に魅力のある銘柄群」を買い、証券会社等から株式を借りる信用取引を利用して「魅力のない銘柄群」を売る。「売り」と「買い」のポジションを組み合わせることで、相場全体が上下しても、その影響を低減することが期待できる。一方で、「魅力ある銘柄群」が市場対比で値上がりし、「魅力のない銘柄群が」市場対比で値下がりすることで、「双方の市場対比での価格差」が期待通りに広がれば、そこがリターンの源泉になる。
 このファンドの運用で分析する「株式の魅力」については、計量モデルを用いて割安度や成長性等をスコアにした上で、銘柄ごとの相対的な期待リターンを測定しポートフォリオを構築する。モデルに用いる評価項目は、固定ではなく、市場情勢に応じて変更することが特徴の一つだ。
 過去のマザーファンドの運用実績を見ると、リーマン・ショックで株式市場が急落した2008年も0.2%のプラスリターンを記録した。過去の実績であり、将来を約束するものではないが、5年間保有してもらえば投資開始時期を問わずプラスのリターンを確保してきた。

-運用手法が難しくないか。

三菱UFJ国際投信 ON AIRロゴ

 平床氏 デリバティブ(金融派生商品)を組み合わせた複雑な仕組みのファンドではない。株式の買いポジションと、信用取引の売りポジションを組み合わせたシンプルな仕組みだ。ただ、投資初心者のお客さまには、信用取引と言っても馴染みがないかもしれない。
 ネットで投信を購入するお客さまの特徴は、ご自身の興味でこのファンドを見つけ出し、目論見書等を読んで、ご自身で最終的な判断をして購入を決定している。適切なご判断をいただけるように、ネットを通じてしっかりと情報提供していきたい。
 例えば、「mattoco」では、オンラインのセミナーを開催している。また、当社は7月、資産運用をサポートする動画配信チャンネル「三菱UFJ国際投信 ON AIR」を開局し、動画による情報提供も積極的に行っている。いずれは当ファンドについても動画で分かりやすく紹介していきたい。

-手数料の工夫は。
 平床氏 お客さまに運用パフォーマンスをご享受いただけるように、低コストの設計にした。当社が運営する「mattoco」で販売するので、購入時手数料はゼロだ。また、解約時に発生する手数料や、ファンドに残す信託財産留保額もない。
 次に、運用期間中に発生する信託報酬だ。一般的なファンドでは、運用会社のほか、情報提供やコンサルティングで投資家をサポートする販売会社と、資産を分別管理する受託会社の3者が受け取る手数料を合算している。
 「百戦錬磨の名人ファンド」は、受託会社分の手数料(年率0.04%<税抜き>)以外は成果報酬にした。現存する公募投信では、こうしたファンドはない。具体的には、基準価額が実質的な過去最高値を超えた時だけ、その超過分の15%(税抜き)を成果報酬として運用会社が受け取る。
 成果報酬とすることで、運用成績と手数料の関係が明確になり、お客さまの納得度合いが高まると考えている。また、お客さまが収益を獲得したときに運用会社も手数料をいただくので、お客さまと運用会社が同じ側に立つことができる。
 成果報酬をめぐっては一般論として、ファンドマネジャーが報酬を増やすために高いリターンを挙げようとして運用規律が乱れるのではないかという指摘をされることがある。しかし、このファンドはそもそも大きな値上がりを目指すファンドではないので、そうした懸念は当たらない。安定運用で収益の確保を目指すファンドだ。

-このファンドを購入する際の注意は。
 平床氏 絶対収益追及型のファンドと言っても「値下がりしない」わけではない。基準価額が大きく下がりにくい設計になっていることを理解していただき、5年程度の中長期にわたって保有することを考えていただきたい。
 例えば「日経平均株価に連動して基準価額が動く」といった分かりやすさはないので、基準価額の動きについて、丁寧に情報提供していきたい。(了)

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