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<マーケット見通し>債券に投資妙味=日本株は中立を維持-ブラックロック地口氏

2022年12月21日 14時00分

ブラックロック地口氏

 ブラックロック・ジャパンは、「新しい局面を意識した投資指針」をテーマに、2023年のマーケット見通しに関するメディア勉強会を開催した。地口祐一チーフ・インベストメント・ストラテジストは、各アセットの評価で「債券の『利回り』に投資妙味が生じつつある」と指摘した。また、日本株について「インフレの下、相次いで値上げを打ち出すなど、大きな構造転換の中にある」と評価し、「中立」を維持した。主なポイントは以下の通り。

◆米利上げ、経済へのインパクトはこれから

-米国経済とマーケットの見通しは。

地口氏 米国の中央銀行は、1972年以降で2番目に早いスピードで利上げを実施している。実体経済に対するインパクトはこれから出てくるだろう。米国の統計は、同国経済が好調なことを示す内容が多いが、これが急変して景気減速やリセッション(景気後退)に向かうかどうかは、現時点では判定しづらい。先行きについて慎重に見守っていきたい。

 こうした中、株式市場は、利上げに対して楽観的に反応しているように見える。また、現在の株価は、楽観的な業績見通しを元に形成されている可能性がある。もし経済が本格的にスローダウンする局面が来れば、株式等のリスク性資産にとって、短期的に好ましくないことを留意しておく必要があるだろう。

◆投資適格社債を選好

-アセットの評価は。

地口氏 先行きが見通しにくい状況の中で、最適な投資対象は、債券ではないかと考えている。キーワードは「利回り」と「デフォルト・リスクが低い」「高いクオリティ」だ。米国、英国、欧州の短期国債は、これまでの利上げの効果で、利回りに投資妙味が生じつつある。われわれは投資適格社債を選好したいと考えている。これから、景気減速に入る可能性がある中でクレジット・リスクに配慮した。

◆インフレになりやすい経済に

-中長期の経済見通しは。

地口氏 コロナショックの前までの「低インフレ・低成長」の経済に戻ることはないだろう。経済以外の二つの要因でも、インフレになりやすい環境に移行した。1点目は、労働参加率が上昇していないことだ。もう1点は、地政学リスクが台頭し、国際商品市況の上昇を通じて、インフレになりやすいことだ。

 企業がコストを製品価格に転嫁し、消費者がそれを受け入れて消費活動を普通に行うようになれば、一定程度の物価上昇の下で、経済が成長する社会に移行するだろう。

◆投資にあたって「選別」が重要に

-中長期の投資でのインプリケーションは。

地口氏 インフレで恩恵のあるアセットクラスや業種を選ぶアプローチが大切だ。これからは、単に株式や債券を保有するのではなく、「選別する投資」が必要になる。アセットでは、商品や不動産、株式の投資妙味が増すだろう。また、コストをしっかり転嫁できる企業に、投資チャンスを見出すことができるだろう。

 インフレになりやすい経済下では、中央銀行は金融引き締め方向にバイアスがかかりやすく、マーケットはショックを受けやすいので、機動的に対応できる投資スタンスも必要だと考える。

-日本株式は。

地口氏 各資産の短期見通しで、米国など先進国の株式を「アンダーウエイト」にする一方、日本株式は「中立」を維持した。

 日本はインフレが明確になってきたが、コストを価格に転嫁した企業の株価は上昇している。日本は30年間にわたってデフレが続いてきたが、多くの内需企業が値上げに動き出すなど、構造転換の中にある。

一方、製造業などの外需企業も、これまではサプライチェーンの混乱などで振るわなかったが、現在は生産数量が増加しており、良い環境に入ってきている。

 

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