<マーケット見通し>世界経済、深刻な不況を回避=三井住友DSアセット市川氏
2022年11月25日 14時00分
三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩チーフマーケットストラテジストは、「2023年国際金融情勢の見通し」をテーマに記者勉強会を開催した。その中で、来年の世界経済について「低成長だが、深刻な不況は回避するだろう」とする見通しを明らかにした。また、米国株式は「米国景気の底が来年4-6月期と見ており、株価はその前に底打ちし、上昇基調を回復するだろう」と予想した。ただ、「米国のインフレや利上げが予想以上に長期化した場合は、景気と株価が大きく下振れするおそれがある」と述べた。
◆世界経済=財政支出が下支え
来年の世界経済の成長率は、前年比2.4%(今年は同3.1%の見通し)に低下する見通しだ。米欧の中央銀行が連続して利上げを実施した効果が累積し、成長率は3%を大きく下まわる。ただ、多くの国が、資源高の影響を和らげるために補助金などの財政政策を実施することで、景気は支えられ深刻な不況は回避されるだろう。
地域別に見ると、米国の来年の成長率は前年比0.8%(今年は同1.9%の見通し)に、日本の来年度の成長率は前年度比1.0%(今年度は同1.7%の見通し)に、それぞれ減速すると見ている。ただ、欧州の来年の成長率は前年比マイナス0.2%(今年は同3.2%の見通し)と予想している。
◆インフレ=景気減速で沈静化
インフレは、景気減速により沈静化すると予想した。サプライチェーンの混乱も収束しつつあり、耐久消費財の価格上昇も一服するだろう。地域別に見ると、米国のインフレ率は、前年比3.6%(今年は同5.0%)に、日本は前年度比2.3%(今年度は同2.7%)にそれぞれ低下するだろう。一方、ユーロ圏は前年比6.5%(今年は同8.6%)に高止まると見ている。
◆米国経済=景気の底は来年4-6月期
米国のインフレが落ち着くには、サービス価格と家賃の伸び率の鈍化が必要だ。米連邦準備制度理事会(FRB)は、今年12月に0.5%、来年2月と3月に0.25%ずつ、政策金利を引き上げ、その後は据え置くと予想している。
現在の米国経済は、景気循環の4区分で見ると、減速初期の段階にあると見ている。米国の実質GDP成長率は、来年4-6月期に前期比年率0%に低下し、景気の底を付けるだろう。
その後は緩やかに上昇するものの、来年10―12月期の実質GDPは同1.0%にとどまり、低成長が続くと見ている。再来年(2024年)10-12月期には同1.8%に上昇し、潜在成長率と言われる水準に戻ってくるだろう。
◆米国株式=来年底打ちも、上値の重い展開
米国株式は、しばらく上値の重い展開が予想される。ただ、バリュエーション調整が進行していることから、インフレが沈静化し、利上げが一服し、景気の大幅減速の懸念が後退していけば、景気の底打ち(来年4-6月期を予想)の前に、上昇基調を回復するだろう。
2022年末のダウ工業株30種平均は、ハウスビューとして3万3300ドル、2023年末は3万4600ドルと予想している。また、S&P500種株価指数は、2022年末で4000ポイント、2023年末で4150ポイントと見ている。
◆日本株式=長期上昇トレンドを継続中
来年の日本経済は、海外の景気減速の影響で成長が鈍化するため、日本株式の地合いはあまり良くないだろう。ただ、バリュエーション調整が進んでおり、日経平均株価の長期上昇トレンドは継続中だ。来年春ごろに米国株が上昇基調を回復すれば、日本株式も連れ高することが予想される。
2022年末の日経平均株価は、ハウスビューとして2万8700円、2023年末は3万4100円と予想している。
◆円相場=トレンド転換だが、円高ペースは緩やかに
米国の利上げが来年3月で終了し、米国の10年国債利回りが緩やかに低下することで、大幅な円安トレンドは終了するだろう。だだ、日本の貿易赤字と日銀の緩和継続が予想されるため、円高のペースは緩やかになると見ている。
2022年末の円相場は、ハウスビューとして1ドル=142円、2023年末は140円と予想している。ただ、2023年後半になると、米国の利下げや日銀の緩和修正の思惑が市場に広がり、円高が進む可能性もある。