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長期投資のアドバイザーを日本で育成=米国で培ったノウハウを提供-キャピタル

2022年11月21日 09時00分

小泉社長

 米系大手運用会社キャピタル・インターナショナル(本社東京、小泉徹也社長)は、お客さまの生涯の資産形成をサポートするファイナンシャル・アドバイザー(FA)に対する教育・研修システム「キャピタル・ラーニング」を日本のFAや金融機関に提供する。FAが普及している米国で培ったノウハウを広めることで、自助による長期投資の文化を日本に根付かせる狙い。

 約150人のFAや金融機関関係者が参加するセミナーを開催し、米キャピタル・グループのシニア・バイス・プレジデント、クリス・ガイス氏が「キャピタル・ラーニング」のポイントを説明した。

-キャピタル・グループとは。

小泉社長 当社グループは、米国のアクティブ型ファンドの資産残高でトップだ。この資産残高の約7割は、確定拠出年金(DC)などの非課税投資制度の資金が占めている。長期の資産形成を目的とした資金だ。

 長期継続投資と言ったときに、皆さんはどれくらの時間の長さをイメージするだろうか。私たちは、30年、40年という長期の資産形成をイメージしている。当社の使命は、投資の成功で人々の生活をより豊かにし、幸せな老後やそれぞれの夢の実現をサポートすることだ。

-日本に長期投資を根付かせるポイントは。

小泉社長 日本においても、DCや少額投資非課税制度(NISA)等の非課税投資制度にターゲットを当てて事業を展開していきたい。日本に長期投資を根付かせるために大切なことが三つある。一つ目は、自動的に貯蓄ができるような仕組みを作っていくことだ。例えば、企業型DCや個人型DC、「つみたてNISA」であれば、毎月、自動的にお金を積み立てることができる。DCは60歳まで引き出せないので、長期の資産形成ができる。

 二つ目は、若い人にお金について考える機会を与えることだ。彼らにとって老後はまだまだ先の話だが、どのような人生を送りたいか、夢を実現するにはどのようにお金が必要なのか-といったことを、なるべく早い段階で考えてもらうことが大切だ。

 三つ目は、アドバイザーの育成だ。相場が急落すると誰でも不安になる。そうした時に、マーケットにとどまって、継続的に投資していくことの重要性を助言してくれる人が必要だ。日本において、こうしたアドバイザーをもっと増やしていきたい。

-運用会社の役割は。

40年間積立投資を行なった場合の投資成果40年間積立投資を行なった場合の投資成果(クリックで表示)


小泉社長 30年、40年、さらに親から子へ引き継いで、50年、60年と世代を継承して資産運用を続けるには、長期にパフォーマンスを出し続けるファンドが必要だ。運用会社は、それを可能にする運用体制や経営を実行していくことが大切だ。

 「キャピタル世界株式ファンド」の運用戦略に1981年から2021年までの40年間、毎月1万円を積み立て投資したケースを試算してみた。投資額の480万円に対して、運用額は6387万円になった。同じ期間に、世界株式の代表的なインデックスであるMSCIワールド・インデックスで積み立て投資をしたケースを試算すると2989万円だった。

 一般の勤労者が普通に積み立て投資を行って、こうした成果を享受できるようにすることが大切だ。

-米国のアドバイザーの役割は。

ガイズ氏


ガイス氏 「FAのコア・サービスは、何だと思うか」と投資家に尋ねたところ、「セービング・ミイ・フロム・マイセルフ」という回答が返ってきた。「自分自身から守ってくれる」というものだ。

 2009年のリーマン・ショックで市場は大混乱に陥った。その中で多くの投資家がアドバイザーに助けを求めた。「とても怖い。財産を全て失いたくはない。何かしなければいけない」と言ってきた。これに対して、すぐれたアドバイザーは「ぶれることなく、投資を続けましょう」と助言し続けた。その後、相場は上昇し、マーケットは活況を呈するようになった。この例は「なぜアドバイザーが重要な存在なのか」「キャピタルがなぜアドバイザーに対してコミットしているか」を端的に物語っている。

-相場が急変した時のFAの対応は。

さまざまな市場局面を乗り越えてきた長期の運用実績さまざまな市場局面を乗り越えてきた長期の運用実績(クリックで表示)


ガイス氏 四つのフレームワークに整理した。「問題の特定」「多角的な視点の提示」「目標の再確認」「成功に導く」だ。

 一つ目の「問題の特定」だが、お客さまの話を聞き、悩みに共感し、問題を特定する。例えば「老後の資金だから、無くなっては困る」という話であれば、悩みの原因は「相場が急落したことだ」と分かる。

 二つ目の「多角的な視点の提示」だが、例えば、当社の運用戦略の長期的な実績のグラフを見てもらう。リーマン・ショックなどさまざまな局面があったが、中長期で見れば、数年後には市場はそれを乗り越え、上昇を続けている。

 三つ目の「目標の再確認」だが、改めて自分の資産運用の目的を思い出し、達成度を確認してもらう。四つ目の「成功に導く」だが、FAがリーダーシップを発揮し、具体的なアクションを提示し、お客さまが目標を貫くことができるようにする。

-FAとして成功するには。

ガイス氏 三つのポイントがある。「投資マネジメント」「顧客マネジメント」「ビジネス・マネジメント」だ。30年前は「投資マネジメント」だけが重要だと考えられていたが、ようやく10~15年前になって「顧客マネジメント」と「ビジネス・マネジメント」も同じように力を入れなければいけないと認識されるようになった。米国は、30年かけてこうした知見を得たが、日本は米国の経験を生かすことですぐに実行できる。

 

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