エンゲージメントで企業価値を向上=インフレで改革機運が高まる-フィデリティ・日本バリューアップ・ファンド
2026年01月26日 07時30分

資本コストや株価を意識した企業改革を追い風に、日本株が上伸している。「フィデリティ・日本バリューアップ・ファンド」は、エンゲージメント(企業と投資家の建設的な対話)を通じてこうした改革を促し、企業価値を高めることで、長期的な投資信託財産の成長を目指す、日本株のファンドだ。
フィデリティ投信 インベストメント コミュニケーション部 日本株式 インベストメント ディレクターの今井菜穂子氏は、エンゲージメントの最前線の動向について「日本経済がデフレを脱却しインフレが定着してきたことで、多くの企業は投資を先送りせず、成長分野を定めて選別投資を進めると同時に、低成長事業の見直しや余剰資産の処分など、緊迫感を持って攻めの経営に取り組んでいる。経済環境の変化が、企業改革の機運を高めている」と話している。主なポイントは以下の通り。
◆エンゲージメントで企業価値を高める
-運用の考え方は
今井氏 このファンドは、株価が割安に放置されている銘柄に着目し、その企業価値を高めるエンゲージメントによって、バリュエーションの修正に加えて、企業価値向上によるリターンの獲得を目指している。
運用に当たっては、実力がありながらも割安な銘柄を探し出す「企業調査力」と、投資先企業に対して、企業の成長力や資本効率、規律ある経営などの面で改善を促す
◆ボトムアップの長い歴史とグローバルな連携
-「企業調査力」の特徴は
今井氏 フィデリティ投信が所属するフィデリティ・インターナショナルは、徹底的な企業調査に基づいたボトムアップ・アプローチで投資を行う、独立系のグローバルな運用会社だ。1969年に外資系運用会社として初めて日本に拠点を設け、長年にわたって日本企業を調査してきた。これが一つ目の強みだ。
企業調査では、財務情報だけでなく、ビジネスモデルを深く理解し、経営者に会ってその資質や実行力を把握した上で、企業文化や業界構造、事業環境など、あらゆる面から企業にアプローチしてきた。
もう一つの強みは、フィデリティ・インターナショナルのグローバルな運用・調査体制のネットワークだ。日本に19人、北米および欧州に309人、アジア・パシフィックに121人を擁している。(2024年12月末時点)
多くの日本企業はグローバルにビジネスを展開している。このため、日本のみの調査ではその実態が見えてこない。グローバルな情報連携によって、海外のライバル企業の動向を知ったり、製品の競争力や成長性を把握したりできる。
◆対立ではなく、長期の視点で企業に寄り添った対話
-「対話力」の特徴は
今井氏 長期の視点でエンゲージメントを行っている。一部のアクティビストに代表されるような、自社株買い等の短期的な株価上昇策の要求にとどまることなく、企業が抱える問題を根本的に解決するための対話を実施している点が特徴だ。
こうしたエンゲージメントは、企業の価値向上を促すとともに、運用者にとっては、企業をより深く知り、投資に対する確信度を高める機会になる。
フィデリティは日本株式市場で長く投資してきたことで、企業から信頼していただき、中期的な経営戦略や株式市場との向き合い方について意見交換を行うケースも多い。企業と対立するのではなく、「自ら変わろうとする企業」に寄り添って、対話を実施してきた。
◆「もったいない企業」を見つける
(出所)フィデリティ投信「フィデリティ・日本バリューアップ・ファンド」月次運用レポート(2026年1月)(クリックで表示)
-投資先企業の選定手法は
今井氏 「成長力」「資本効率」「規律ある経営」の三つの切り口に着目することで、高い実力があるのに、課題を抱えているために評価されていない「もったいない」企業を特定している。
フィデリティ投信では、初めに企業改革の「気づき」につながる提案をした後、継続的に対話を通じてエンゲージメントを深めている。その結果、企業自身がおのずと「持続的に成長できる状態」になることが、エンゲージメントのゴールだ。
エンゲージメントのチームについても、グローバルに連携しており、海外の優れた事例を日本企業の経営に取り入れる提案を行っている。
このファンドは、改革を「自走」できるようになった企業について、さらなる企業価値向上や株価上昇が見込める場合は、継続して株式を保有している。
◆フィデリティの提案が奏功、好事例も
-対話の具体例は
今井氏 電力インフラ系に強みを持つ総合電線メーカーのSWCC(旧昭和電線ホールディングス)は、フィデリティ投信が提案した事業ポートフォリオの開示手法を採用することで、企業評価が高まった事例だ。東証から「資本コストや株価を意識した経営に対応した好事例」として紹介された。その内容については、このファンドの月次運用レポートでも紹介している。
SWCCは2019年から、投下資本利益率(ROIC)の向上を考慮した経営を行っていたが、十分に投資家から評価されず、株価純資産倍率(PBR)が1倍割れで推移するなど、「もったいない企業」の一つだった。
これに対してフィデリティ投信のエンゲージメント・チームは、事業ごとの戦略的な位置付けを整理し、成長事業の投資と利益貢献の見通しを具体的に示すことを提案した。事業ポートフォリオを適正に開示したことで、マーケットの評価が高まった。
「フィデリティ・日本バリューアップ・ファンド」の月次運用レポートでは、このほかにも企業との対話の具体的な事例を掲載し、四半期ごとに更新している。「ステップ1、『もったいない』企業に課題を伝える段階」「ステップ2、企業が課題に取り組む段階」「ステップ3、株価や財務指標の改善を確認する段階」と、3段階で対話の進捗状況をモニタリングし、結果を棒グラフで開示している。
(出所)フィデリティ投信「フィデリティ・日本バリューアップ・ファンド」月次運用レポート(2026年1月)(クリックで表示)
◆さらに進む企業改革
-企業改革を受けて日本企業の動向は
今井氏 日本の企業改革は、2023年の東証の要請を受け、大きく動き始めた。大企業も敵対的な買収提案を受ける事例が出てきており、多くの企業が危機感を持って、企業改革に取り組むようになっている。
東証は、要請の中でPBRという分かりやすい指標を打ち出した。KPI(Key Performance Indicator、重要業績評価指標)を掲げる経営が、日本で浸透した意義は大きい。
企業改革は、これからも長く続く、重要なテーマだ。PBRが1倍を超えたから終わりではない。さらに今後は、大企業から、中小型の企業に広がっていくことが期待される。
日本企業はデフレ下では、投資を控えて「守りの経営」をしてきた。しかし、日本経済がインフレに転じたことで、投資を先送りするともっと多くの投資資金が必要になることから、成長分野を定めて選別投資を進めると同時に、低成長事業の見直しなどの構造改革を進めるなど、多くの企業が緊迫感を持って「攻めの経営」に取り組んでいる。経済環境の変化が、企業改革の追い風になっている。
◆中長期の視点で、企業改革に取り組む企業を応援
-投資家にアドバイスは
今井氏 このファンドは、企業が持つ本質的な価値を見極めることで、割安に放置されている企業を見つけ、ギャップを埋め、企業価値を高めて行こうとするファンドだ。このファンドは、長期の資産形成を目的とする投資家に役立つファンドだと考えている。
投資には、企業や社会を育てる力がある。企業改革には時間がかかるので、自ら変わろうとする企業を応援する気持ちで、長期の目線で投資をしていただきたい。



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