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AIエージェント・トークン化で国際連携=安心と信頼の日本モデルに注目-GFTN Japanの鬼頭氏に聞く

2026年03月11日 08時00分

Global Finance & Technology Network (GFTN)提供Global Finance & Technology Network (GFTN)提供

 世界のフィンテック業界の連携と技術革新を推進するグローバル・ファイナンス&テクノロジー・ネットワーク(GFTN)は、2月24日~27日まで、「GFTN Forum Japan 2026」を開催した。金融庁主催のJapan Fintech Week 2026の公式イベント。

 72の国と地域から5000人以上の政策立案者や金融業界のリーダー、投資家、創業者などが一堂に会し、金融エコシステムの未来を見据えて、「エージェントAIによる金融サービスの進化」「資産のトークン化の最前線」「13兆ドル規模の資本フローと日本のリーダーシップ」をテーマに、議論が交わされた。

 GFTN Japanの共同創業者・代表取締役の鬼頭武嗣氏に話を聞いた。

◆イノベーションと法整備が進行

-AIエージェントやトークン化の進化は

鬼頭氏 生成AIは既に、多くの人の日常生活や仕事にも取り入れられており、人間とAIが会話する形でさまざまなアウトプットが得られるようになった。AIエージェントは、そこに自律性が加わり、AIが人間の代理人(エージェント)として、取引やコニュニケーションを行う世界が始まろうとしている。

 一方、暗号資産(クリプトトークン)は、2017年の資金決済法の改正により、決済の手段として使われるようになった。また2020年には、金融商品取引法の改正により、株式などの有価証券の性質を持ったセキュリティ・トークンが法律で規定された。さらに2023年には、法定通貨等と連動するステーブルコインの規制ができた。

このように、①決済手段としてのトークン ②有価証券としてのトークン ③ステーブルコイン-というように、法的な整備が進んできた。

◆動き始めた分散型金融

-金融システムの将来像は

鬼頭氏 次の進化として、DeFi(ディファイ)と呼ばれる「中央の管理者がいない金融システム」に向かっている。Decentralized Finance(分散型金融)の略語だ。

 例えば、現在の金融システムは、銀行という中央管理者が口座を管理して、システムを運営している。預金や借入残高は、口座と紐づいて銀行で管理される。一方、トークンは、トークンそのものの中に、所有者や残高の記録がある。トークンのデータベースの元となる技術が、ブロックチェーン(分断型台帳技術)だ。

 トークン化した金融商品は、一般の人への浸透も進んできており、暗号資産のビットコインを決済手段として利用する人も増えてきている。不動産や社債などのリアル・ワールド・アセット(現物資産)をトークン化した金融商品も、取引されるようになってきた。

◆金融サービスの民主化に貢献

-トークン化やAIエージェントのメリットや意義は

鬼頭氏 決済の速さ、効率性に加えて、流動性の向上、ポートフォリオの最適化などが考えられる。

 AIエージェント、DeFiの世界では、自律性が共通のテーマになっている。中央の管理者がいないので、取引はプロトコル(通信ルール)に則って自律的に実行される。AIエージェントも、人間の手を離れて、AIエージェントが自律的に取引する。自律性によって、流動性が向上し、利便性が高まる。

 ただ、トークン化されたサービスや商品が、既存システムを塗り替えるのではなく、徐々に浸透する中で相互に補完し合いながら、新しいマーケットが作られていく姿をイメージしている。

 トークンやDeFiの世界は、中央の管理者がいないので、自己責任が大きくなる。自己責任だからこそ、中央の管理者なしに取引ができるためだ。ただ、全ての人が、こうした世界になじむとは思われない。「管理者がいる金融システム」と補完し合いながら、住み分けが進んで行くだろう。

 トークン化により、企業や個人が規模や資産額に関わらず、さまざまなサービスにアクセスできるようになり、「金融サービスの民主化」が進むだろう。また、AIエージェントが取引するからこそ、これまでになかった金融商品が生まれるかもしれない。さらに、ユーザー体験の面でも、新しい世界が開けていくだろう。

◆安心、信頼、政策の一貫性

-日本に期待されることは

鬼頭氏 米英は、判例を重視する「コモン・ロー」の社会だ。一方、日本や欧州は、明文化された法律に基づいて判断すす「シビル・ロー」の世界だ。あらかじめ法律を作って、それを変化させながら、新しい金融サービスを社会に導入していく流れになる。

 そうしたシビル・ローの社会において、日本は先んじて動いており、2017年の法改正を手初めてに、最近では、日本円ステーブルコイン「JPYC」の実装が、アジアや欧州と比較して早く進んでいる。

 日本の金融当局は、投資家保護の視点から、規制が早く導入しつつ、イノベーションにも積極的だ。規制は負担になることもあるが、透明性が高く、明快な規制であれば、それに基づいて事業を行うことで、大きな事故を避けることができるだろう。日本モデルは、民間と規制当局がコラボレーションしながら、業界を作っていく姿になっている。安心や信頼性、政策の一貫性の観点からも、日本モデルは注目されている。

◆グローバルな連携が不可欠に

-「GFTN Forum Japan 2026」の意義と成果は

鬼頭氏 「GFTN Forum Japan」は、もともと「Japan Fintech Festival」という名前で2023年にスタートした。今回で4回目になる。

 目標(ゴール)の一つは、日本の金融システムへのテクノロジーの実装や、官民の国際連携の推進を通じた日本の金融業界のアップデートだ。日本は、言葉の問題もあって、国内志向が強いマーケットだが、AIエージェントやトークン化は、グローバルなサービスだ。国境を越えて、AIエージェント同士が取引し、トークン化された商品は全世界で売買される。国際的な議論が不可欠だ。

 「GFTN Forum Japan」の参加者は、海外と日本が半々ぐらいだ。講演の登壇者もさまざまな国から招へいした。国際的な場で、日本が抱えている問題や、グローバルなアジェンダを議論し、次のアクションにつなげる流れができているように思う。

 議論ための議論ではなく、インパクトを生み出したいと考えている。そこから生まれる事業機会や、企業間のアライアンスを積極的に促進していきたい。

 

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