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国内初、「PEファンドの公募ST」を設定=デジタル技術で小口化、個人投資家のPE投資を可能に=SBI証券と東京海上アセット

2026年04月24日 07時30分

(松村氏)(松村氏)

 東京海上アセットマネジメントは、非上場株(プライベートエクイティ、PE)に投資する受益証券発行信託「東京海上・日本プライベートエクイティ戦略ファンドST」の運用を開始した。公募セキュリティ・トークン(デジタル証券、ST)を活用した個人投資家向けのPEファンド運用商品は、国内初だ。

 当商品は、同社とSBI証券、新生信託銀行、ITベンダーのBOOSTRYの4社が共同で開発した。SBI証券が2025年12月8日から26年1月26日まで募集し、募集額は約25億円に達した。SBI証券のネット利用の個人投資家や、IFA(独立系ファイナンシャル・アドバイザー)から対面で説明を受けた個人投資家が購入した。現在は、募集を終了している。

 当商品について、SBI証券 執行役員 商品企画部管掌の松村一也氏と東京海上アセットマネジメント ビジネス戦略部 開発グループ部長の⻆井浩司氏に話を聞いた。

◆投資家の声に応えて組成

-設定の経緯は

松村氏 機関投資家向けには数多くのPEファンドが提供されているが、個人投資家向けの商品はこれまでなかった。

 ただ、少額投資非課税制度(NISA)や個人型確定拠出年金(iDeCo)を通じて個人投資家の投資に関する関心が広がり、金融リテラシーが向上する中で、機関投資家が利用している商品にも投資してみたいという声を、個人投資家からいただくようになった。

 こうしたお客さまの声に応えるため、PEファンド投資で優れた運用実績を誇る東京海上アセットマネジメントに声をかけて、当商品を組成した。

◆個人投資家にPE投資の扉を開く

-当商品のポイントは

松村氏 ポイントは三つある。1点目は、これまで個人投資家がアクセスできなかった非上場株式に投資できることだ。

 2点目は、東京海上アセットマネジメントが、PEファンド投資で豊富な実績を持ち、PEファンドを目利きする高い運用力を有していることだ。

 3点目は、ブロックチェーン(分散型管理台帳)を活用したセキュリティ・トークン(ST)にすることで、小口化したことだ。1口単位で、100万円から申し込みが可能になった。機関投資家や富裕層を対象としたPEファンドの投資単位は、5000万円~1億円程度が一般的だ。

◆高い期待リターン、長期投資が前提

-ファンドの仕組みは

松村氏 当商品は、PEに直接投資するのではなく、複数のPEファンドに投資するファンド・オブ・ファンズの形式を取っている。東京海上アセットマネジメントが、当商品の運用方針に沿ったPEファンドを厳選することで、安全性に配慮しつつ、投資収益の確保を目指す。

-PEと上場株の違いは

松村氏 PEへの投資は、上場株式の投資に比べて、相対的に高いリターンが期待できる。反面、市場で売買できないために流動性が低く、投資成果を得るまでに時間を要することから、長期投資が前提になる。また、創業間もない企業など、未成熟な非上場企業に投資を行う場合、リスクが相対的に高くなる傾向がある。さらに、PEの評価額は、主に決算時点の純資産価値(NAV)や業績等を基に算定されるため、日々市場で価格が形成される上場株式に比べ、価格の透明性は低い。

◆バリューアップ、イグジット

-PEファンドの特徴と投資の流れは

松村氏 PEファンドでは、投資先企業の「バリューアップ(企業価値の向上)」を行う点が大きな特徴だ。また、投資先企業の成長タイミングに合わせてM&A(合併・買収)やIPO(株式公開)を行って「イグジット(投資収益を回収)」し、その都度、それぞれの元本と収益を投資家に分配していく点も、上場株に投資するファンドと異なっている。

 具体的にPEファンドの投資行動を見ると、PEファンドはまず、1年ぐらいかけて投資家を募集し資金を集める。次に、3年ぐらいの期間をかけて投資案件を発掘し、一つ一つ吟味しながら、順次投資を開始する。さらに、投資後3~5年は「バリューアップ期間」として、経営に関与して企業価値の向上を図る。その後の「イグジット期間」では、株式売却によって資金回収したり、投資先企業から配当を獲得したりして、元本部分を含めて、投資家に分配する。

 当商品では、PEファンドを通じて100社程度の非上場企業に分散投資する予定だ。大きなリターンを生み出す「ホームラン案件」や「ヒット案件」が期待される一方で、投資に失敗する案件も出てくることが想定されるが、全体として相対的に高い収益の獲得を目指してポートフォリオを組み、成長が期待される企業に分散投資していく。

-東京海上アセットの強みは

(⻆井氏)(⻆井氏)

⻆井氏 東京海上アセットマネジメントのPE運用チームは、前身である東京海上日動火災保険時代から、約30年にわたってPEファンドへの投資実績がある。2024年12月末時点で13人の投資プロフェッショナルを擁し、運用責任者2人の平均経験年数は20年になる。これまでに国内外の250以上のPEファンドに投資し、運用残高は海外PEを含めて1.4兆円に及ぶ。

 PEファンドは公開情報が少ないことから、長年にわたる情報収集の積み重ねや人的なネットワークが大きな力になる。当社は、たくさんあるPEファンドについて、それぞれの運用目的や強み、過去の運用成績や運用担当者の移動などを把握している。PEファンドと投資家の間に立って、その運用状況を「翻訳」する機能を果たしてきた。

◆「スタートアップ」と「バイアウト」

-ポートフォリオの構成は

⻆井氏 当商品は、創業間もないスタートアップ企業に投資する「ベンチャーキャピタルファンド」に約3分の1を、成熟した企業に投資してバリューアップを図る「バイアウトファンド」に約3分の2を、それぞれ投資することを基本方針としている。「ベンチャーキャピタルファンド」に比べて相対的にリスクの低い「バイアウトファンド」の比率を高めることで、PEファンドの中では、相対的に、マイルドでリスクを抑制したポートフォリオにする計画だ。

 当社は、今後3年程度かけて、ポートフォリオを構築していく。PEファンドはいつでも資金を募集しているわけではない。PEファンドのマネジャーと面談するなどして運用内容を詳細に調査しながら、募集のタイミングに合わせて、順次、投資を開始する。

◆バリューアップには、年単位の時間が必要

-PE投資で知っておくべきことは

⻆井氏 PEファンドは、経営指導をしたり、営業網を紹介したりして、投資先の企業価値を高める「バリューアップ」を行う。こうした成果が出るには、年単位の時間がかかる。3~5年後にM&AやIPOにつながっていくので、投資家は長期投資のスタンスで臨むことが大切だ。

 PEファンドでは、投資先企業が順調に成長し、M&AやIPOしてイグジットすると、株式売却によって回収した資金を、別の案件に再投資するのではなく、収益および元本の払い戻しを原資として積極的に投資家に分配する。当商品の信託期間は約15年後の2041年5月1日までだが、投資先企業のM&AやIPOの進捗状況によっては、それを待たずに元本が払い戻され、予定より早く償還する場合もあるだろう。

◆中途解約は不可

-解約の制約は

松村氏 当商品は、原則として、信託期間中に中途解約できない。投資家の都合で、投資先の非上場企業から資金回収することは、できないためだ。ただ、投資家にご不幸があったり、災害があったりした場合など、特別解約事由が発生した場合は、特別解約を請求できる。その場合、信託財産留保額は純資産の20%相当額になる。

 将来的には、STの二次流通市場として、「大阪デジタルエクスチェンジ(ODX)」が運営する市場で、このSTを取り扱うことを検討している。

◆STで小口化が可能に

-デジタル技術の活用は

松村氏 当商品はBOOSTRYが開発を主導するセキュリティ・トークンのコンソーシアム型ブロックチェーン基盤「ibet for Fin」で管理している。STとは、ブロックチェーンなどの最先端の技術基盤を用いて電子的に発行・管理されるデジタル有価証券だ。当商品は、PEファンドを主な投資対象とする集約LPS(投資事業有限責任組合)の出資持分を裏付け資産としている。

 STで発行することで、1口以上1口単位(1口当たり発行価格:100万円)から申し込みが可能になった。これまで機関投資家や一部の富裕層しかアクセスできなかったPEファンドに個人投資家も小口で投資できる。

 また、プライベート市場とSTは相性が良いと感じている。運用状況などを、ブロックチェーン上に記録された投資家だけに、的確に情報公開できるためだ。一定程度の金融リテラシーのある投資家を念頭に、より専門性の高い情報を伝えることが可能になる。

◆特定口座で管理、申告分離課税に対応

-税制上の扱いは

松村氏 非上場株式やPEファンドの投資は、原則、総合課税だ。一方、このファンドは、金商法の2条第1項の有価証券なので、税制上は「特定受益証券発行信託」に該当する。このため、株式や投資信託と同様に、特定口座での購入が可能で、申告分離課税を選択できる。

◆想定顧客を明示、全問正解が条件

-販売上の工夫は

松村氏 当商品の募集に当たっては、一定程度の金融リテラシーや投資経験、資産額をお持ちで、かつ15年の信託期間にわたり長期保有が可能な方を対象とした。

 ご購入いただく際には、こうした項目を画面上でお尋ねして、条件を満たした方に、次の画面に進んでいただいた。次の画面では、当商品に関する10数問の質問を設けて、全問正解しないと購入できないようにした。こうした仕組みを設けることで、適切なお客さまに販売することができたと考えている。

-お客さまの反響は

松村氏 いろいろな声をいただいた。「こうした商品を待っていた」というお客さまや「(原則解約不可で)15年という信託期間は長い」というお客さまもいました。

 日頃からPEファンドにアクセスできる富裕層のお客さまからは「マイルドな商品内容になっていて、自分には合わない」という声もいただいたが、当商品はそうした富裕層のお客さまではなく、徐々にリテラシーが向上してきた新しい投資家層を想定しているので、適切なお客さまに投資していただいたという印象を持っている。

◆新たな産業を育成する資金循環に貢献

-当商品は「東京金融賞オーディエンス賞」や「Japan Financial Innovation Award 2026」大賞などを受賞している

松村氏 国内初の「PEファンド投資の公募ST」ということもあるが、スタートアップ企業や非上場企業に資金を供給する、新しい「蛇口」となり、個人投資家からスタートアップに資金を供給できるようにしたことが評価されたポイントだと思っている。

 個人投資家の資金を、PEファンドを通じて非上場企業に提供することで、新たな産業を育成し、日本経済の成長に貢献することができる。同時に、投資家に魅力的なリターンをお返しし、豊かな生活を実現し、新たな投資に結び付ける-。こうした、すばらしい循環を作っていきたいと考えている。

 

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