リターン獲得と社会課題解決の両立を目指す=「子どもたちによりよい社会を残す」=三井住友DSアセットの「日本株インパクト投資戦略」
2026年04月23日 07時00分
(左が熊谷氏、右が芳村氏) 三井住友DSアセットマネジメントは、「日本株インパクト投資戦略」の最新状況をまとめた「Impact Report 2025-2026」を公表した。この運用戦略は、「次世代を担う子どものためによりよい社会を残す」ことを理念に掲げ、関連する社会課題の解決に貢献する企業に投資することで、インデックスを上回るリターンの獲得と社会的インパクトの創出の両立を目指し、自己資金で運用している。
レポートでは、この運用戦略に加えて、独自開発した分析ツール「SMDAMインパクトマップ」を紹介している。AIを活用して、社会課題とそれを解決する企業や事業のデータベースを作成した。さまざまな社会課題に対応するインパクト投資の候補企業を容易にリストアップできる。
運用部バリューグループ企業価値型プロダクト シニアファンドマネジャーの芳村俊平氏と責任投資推進室室長の熊谷茜氏に話を聞いた。
◆「社会課題=大きな事業機会」
-「日本株インパクト投資戦略」の概要は
芳村氏 この運用戦略は、「投資リターンの獲得」と「社会的インパクトの創出」を同時に達成することを目的としている。この二つをトレードオフ(両立不可能な関係性にあるもの)と考える人もいるが、私は両立できると考えている。
なぜなら、社会課題は、企業にとって非常に大きな事業機会になるからだ。社会課題の解決に資する「高い競争力を持った企業」に厳選投資することで、社会課題の解決に貢献できるし、リターンの獲得も期待できる。「高い競争力を持った企業」を厳選することが、この運用戦略のポイントだ。
-インパクト投資に取り組んだ経緯は
芳村氏 当社は「Quality of Lifeに貢献する最高の運用会社へ。」を経営理念に掲げ、品質の高いパフォーマンスを提供するとともに、このビジネスを通じて持続可能な社会の実現に貢献することを目指している。インパクト投資は、経営理念に合致した運用手法だ。
当社は企業調査に基づきファンドマネジャーが投資先を厳選するアクティブ投資の運用力で評価されており、そうした強みを活かすことができる。
◆次世代を担う子どものためによりよい社会を残す
-この運用戦略のポイントは
芳村氏 この戦略では「次世代を担う子どものためによりよい社会を残す」を運用の理念に掲げた。日本経済は、デフレ環境下で「失われた30年」と言われるような低成長の時代を経験してきた。こうした時代を、将来に引き継ぐことのないように、世の中を変えていきたいと考えた。
その上、この理念を実現するために、より重要度の高い社会課題として、「人口構造の変化」、「社会インフラの老朽化」、「気候変動と災害防止」の三つを選定した。これらは、非常に規模の大きなテーマであり、社会のサステナビリティの向上に重要なだけでなく、企業の事業機会にもなり得る。
例えば「人口構造の変化」であれば、労働人口の減少により人手不足が深刻化することから、省人化設備など生産を向上させる投資の必要になる。また、育児や介護と仕事を両立させるため、働き方改革も重要だ。さらに、地域社会の衰退を防ぐ施策や、医療・介護サービスの質と量の確保も課題になる。この運用戦略では、こうした社会課題の解決に貢献する企業の中から、「高い競争力を持った企業」に厳選投資する。
◆競争優位性や柔軟に判断できる経営陣
-投資先対象企業の選定方法は
芳村氏 企業を選定する際には、三つの要件を注視している。①このファンドで掲げた三つの社会課題から生じる問題の解決に資する事業を行っている ②該当する事業が、長期にわたって社会的インパクトを与え続けられる競争優位性を持ち、リスク管理体制が構築されている ③ステークホルダーと対話する姿勢があり、それを踏まえて柔軟な経営判断を下せる優秀で柔軟な経営陣がいる-だ。
◆AIを活用、スクリーニングを容易に
-運用プロセスの工夫は
芳村氏 投資先企業の選定に当たって、AIを活用している。
インパクト投資の難しさは、候補銘柄のスクリーニングが大変なことだ。例えば、高配当株なら配当利回りで企業を絞り込んだり、バリュー株ならPBRを基準にしたりすることができるが、インパクト投資にはそうした物差しがない。
この運用戦略では、AIが有価証券報告書など膨大な開示情報を分析し、その企業がどのような事業をやっていて、どのようなインパクトが生み出されるかを特定し、それを使って、この運用戦略に適した候補銘柄を抽出している。その上で、ファンドマネジャーである私自身が、ボトムアップの調査に基づいてそれぞれ企業の競争力やインパクトを生み出す力を分析して、投資先企業を厳選している。
AIの良い点は、客観性、網羅性に加えて、再分析を頻繁にできる点が優れていると感じている。上場企業は約4000社に上る。人間の作業には限界があるし、それを何回も繰り返すことは難しいが、AIであれば、短い時間で再分析できる。
例えば、機関投資家から、新しいインパクトテーマでの分析を要請されたときに、お客さまのニーズにあった企業群を抽出することができる。お客さまと一緒にテーマを設定して、新たな運用を開始することが容易になる。
◆日本の社会課題に対応したツールを独自開発
-SMDAMインパクトマップは
芳村氏 これは、インパクト投資の分析ツールだ。グローバルに見ると、SDGsに紐づけた分析ツールなどが存在するが、日本の社会課題に特化したツールは整備されていなかった。SMDAMインパクトマップは、少子高齢化やインフラの老朽化など、日本が世界に先行して直面する課題を盛り込んでいる。
官公庁が発行している日本経済や社会に関する文書などをAIに読み込ませて、日本において解決すべき社会課題を抽出し、目指すべき姿や必要な対応をまとめた。次に、実際に投資に使えるように、企業調査と掛け合わせて、企業がどのような事業をやっていて、どのような事業がこれらの社会課題の解決に貢献しうるかを特定した。
AIが作成したデータは、ESG投資やエンゲージメントを担当する責任投資推進室のメンバーが、専門家の観点でチェックした。
◆ファンドマネジャーが手腕を発揮する環境

熊谷氏 日本株のインパクト投資はこれまで、銘柄選択がネックになることが多かった。責任投資の知見を使って、トップダウン的な視点で銘柄を抽出すると、投資企業が似てしまうなどの課題があった。
この運用戦略は、AIを活用することで、投資候補となる企業を網羅的にチェックしている。ファンドマネジャーは、より幅広い銘柄群から投資先選択を厳選することができ、その手腕を発揮しやすい環境を整えた。競争優位性があり、経営がしっかりした企業を厳選投資することで、パフォーマンスもついてきている。
責任投資推進室では、インパクト戦略の運用内容をどのように投資家の皆さまに開示していくか、工夫を凝らしたレポートを出していきたい。
日本には、重要度の高い社会課題がたくさんあり、多くの企業が社会課題の解決に挑戦している。投資機会も、候補企業も多いので、その中から「高い競争力を持つ企業」を厳選することで、社会課題解決のインパクトとリターンの両方を獲得することが期待される。



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