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投資家と企業の信頼構築に貢献=議決権プロセスの電子化で=ブロードリッジのCEOが来日

2025年10月02日 08時00分

(左から、今給黎氏、ゴーキー氏、ランエイカース氏)(左から、今給黎氏、ゴーキー氏、ランエイカース氏)

 米国の金融テクノロジー会社、ブロードリッジ・フィナンシャル・ソリューションズとマネックス証券はこのほど、米国株を対象にした議決権行使サービス提供に向け、契約を締結した。

 マネックス証券の顧客は、日本の個人投資家として初めて、ブロードリッジ社の議決権行使プラットフォームを利用し、オンラインでの米国株議決権行使が可能になる。サービス開始は2025年の冬ごろの予定だ。

 このほど来日したブロードリッジ・フィナンシャル・ソリューションズ最高経営責任者(CEO)のティム・ゴーキー氏と、アジア太平洋地域担当プレジデントのデヴィッド・ランエイカース氏、ブロードリッジ社と東証が折半出資するICJ(本社東京)社長の今給黎成夫氏に、議決権電子行使の現状や意義を聞いた。

◆金融テクノロジーのプラットフォームを提供

-ブロードリッジ社の事業内容は

ゴーキー氏 当社は、グローバルに金融テクノロジーのプラットフォームを提供している。北米におけるコーポレートガバナンンス(企業統治)に関する事業は、マーケットシェアが第1位だ。投資家が株主総会に関する資料を受け取り、議決権を行使するプロセスを、電子化によりサポートしている。

 米国では、機関投資家だけでなく、個人投資家も利用できる便利な議決権の電子行使プラットフォームが発達してきている。アプリケーションを使って議決権を行使したり、株主総会の資料をワンクリックで入手したりすることができる。

◆東証と折半出資、議決権の電子行使プラットフォームを運営

-日本株における展開は

ゴーキー氏 日本では2004年7月に、当社と東証が折半出資でICJを設立し、日本株について議決権の電子行使プラットフォームの運営を始めた。コーポレートガバナンスを良好に保ち、情報の透明性を高めることは、企業が投資家から信頼を獲得する上で非常に重要なことだと考えている。

 日本の株式市場は、海外投資家の声が企業に届きづらいという課題を抱えていた。しかし、コーポレートガバナンス改革等を通じて、企業と海外投資家の対話が拡充し、株式市場において企業のフェアバリュー(適正な価値)がより反映することが期待される。

◆日本から米国株へ議決権行使、初の取り組み

-日本におけるサービス拡大は。

ランエイカース氏 マネックス証券を通じて、日本から米国企業に議決権を行使するソリューションの提供を、今冬にスタートする計画だ。株主総会の資料について、日本語で通知され、電子プラットフォームを通じて、議決権を行使することができる。日本の個人投資家にとって初めてのことであり、とてもエキサイティングな経験になるだろう。

◆企業活動や資産形成に良い効果

-投資の民主化の意義は

ゴーキー氏 投資の民主化は、これまで何十年と続いてきた大きなトレンドだ。より多くの投資家が、より多くの金融商品にローコストでアクセスできるようになった。株式市場ではイノベーション(技術革新)が起きてきた。

 資本市場が強くなることで、経済成長が拡大する。企業の資金調達が容易になり、設備投資や雇用も生まれるだろう。一方、人々の資産形成においても、老後資金や住宅資金、教育資金の確保など、さまざまな面で良い効果が期待される。

 当社は、企業と投資家のコミュニケーションの透明性を高め、アクセスを容易にすることで、経済活動に貢献していきたいと考えている。

◆日本の証券市場のインフラに成長

-ICJの活動は

今給黎氏 当社が誕生した背景には、株式の相互持合いの解消が進み、その受け皿となった機関投資家の存在が株式市場で高まる中で、多くの銘柄を保有することとなった機関投資家がどう議決権を円滑に行使するか-という課題があった。日本では、株主総会が一時期に集中する傾向があるので、機関投資家が保有する銘柄のそれぞれの議案について分析を行い、議決権を行使することが時間的に非常に大変になっていた。

 ブロードリッジ社は、グローバルに議決権の電子行使プラットフォームを運営していたので、東証とブロードリッジ社が合弁でICJを作り、設立から約1年経過した2005年12月に機関投資家向けに議決権の電子行使サービスをスタートした。

 その後、スチュワードシップ・コードやコーポレートガバナンス・コードが制定され、改革が進む中で、機関投資家が議決権を行使し、株主総会の議案に意思表示することの重要性が意識されるようになった。この結果、上場会社と機関投資家のいずれも、プラットフォームへの参加が増加している。

 プラットフォームは、企業と機関投資家をつないでおり、株主総会の招集通知などがデジタルデータで届く。機関投資家の議決権行使は、電子化され、ストレートに上場企業に送られる。

 それまでは、紙面と郵便で処理していたので、中間に入る金融機関が処理する時間が必要となり、株主総会の10日ぐらい前に議決権行使を締め切っていた。今では株主総会の前日まで締め切りが延長され、機関投資家が議案の内容を検討できる期間が大幅に拡大した。

 ICJの設立から20年が経過し、議決権行使の電子プラットフォームは、日本の証券市場のインフラになった。 

 

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