コーポレートガバナンス改革を評価=日本株式に魅力的な「逆張り投資」のチャンス-マン・グループのハーゲット氏
2025年11月05日 08時00分

グローバルなオルタナティブ資産運用会社のマン・グループで、欧州最大級の日本株アクティブファンド「Man Japan CoreAlpha」を運用するポートフォリオ・マネジャーのスティーヴン・ハーゲット氏が来日した。
ハーゲット氏は、日本のコーポレートガバナンス改革について「今後数年間、株式市場に大きな上昇余地を提供する可能性がある」と評価した。また、日本株市場の現状について「日経平均株価が最高値を更新しているにもかかわらず、日本株式に魅力的な『逆張り投資』のチャンスが存在している」と述べた。主なポイントは以下の通り。
◆日本株式の現状と投資チャンス
「Man Japan CoreAlpha」は、来年1月でファンドの設定から20周年を迎える。私はこのファンドのポートフォリオ・マネジャーの1人だ。他に4人の運用チームメンバーがいる。英国北部のヨークに拠点を置いて運用している。
本日は、日本株に対する外国人投資家の視点を紹介するとともに、「Man Japan CoreAlpha」の投資哲学であるコントラリアン(逆張り投資家)の考え方が、どのように他の投資家と異なっているか-、について話したい。
日本株式はここ数年、人工知能(AI)、防衛、ゲーム等に関連する少数の銘柄群が市場の牽引役となって上昇してきた。日経平均株価指数に対する銘柄ごとの寄与度を見ると、一部の銘柄に集中度が高まっていることが見て取れる。
この状況は、指数が史上最高値を更新しているにもかかわらず、市場に極めて魅力的な『逆張りの投資』のチャンスが存在していることを意味している。注目分野として、自動車、証券会社、価格が大きく下落した一部の成長株、国内ディフェンシブ株を挙げることができる。
例えば、自動車セクターは、中国との競争激化、電気自動車(EV)への移行などで厳しい数年間を経験してきた。4月にはトランプ米大統領が相互関税を発表したことが、さらなる売り圧力となった。7月の日米貿易協定の合意により、短期的に株価は上昇したが、自動車セクターは「出遅れ株」になっている。
◆関税および日米貿易協定の影響
投資家は不確実性の存在を嫌う。今年初めは、貿易をめぐって多くの不確実性が生まれた。しかし、7月に日米貿易協定が合意されたことで、投資家心理や企業のビジネス計画の立案の後押しになることを期待している。
10月下旬に実施されたトランプ米大統領の日本訪問は、高市早苗氏が新首相に選出されたばかりであることを考えると、良いタイミングだった。トランプ氏との関係は、今後数年にわたって重要であり、将来の貿易協定の変更に大きな影響を与える可能性がある。
◆インフレ動向と日銀の金融政策
日本の消費者物価指数(CPI)は上昇しており、企業や家計のインフレ期待も高まっている。日本経済がデフレを脱却したことは明らかであり、これは構造的な変化だ。この状況は、株式市場や実物資産の価格にポジティブだ。
しかし短期的には、負の側面が出ている。デフレ脱却における初期の副作用として、実質的な生活水準が低下している。賃上げが最高水準であるにもかかわらず、インフレに追いついていないためだ。これは、政治的な不安につながり、衆院選で与党自民党の支持率低下につながった。国民が新首相に求める最も重要な施策は、インフレ対策だ。
円相場は非常に低い水準にあるので、輸入コストインフレが顕著になっている。日銀は、利上げと金融政策の正常化において、後手にまわっていると考えている。最低でも政策金利を1%程度まで引き上げることが必要だ。年内に1回、来年初めにもう1回の利上げを予想している。その先については、その時点の経済データ次第だろう。
◆コーポレートガバナンス改革と株主アクティビズム
私たちは、長期的なコーポレートガバナンス改革について、非常にポジティブだ。先進国の中で、このストーリーは日本に特有のものであり、今後数年間、株式市場に大きな上昇余地を提供する可能性がある。
既に、企業価値向上に関して、経営陣の姿勢と行動に大きな改善があった。私たちが面談する全ての企業は、10年前よりも、より良く経営されていると信じている。改善は、アベノミクスからスタートし、東証改革で加速した。
アクティビストの関与は、株式市場の健全な発展に資するものであり、ポジティブな変化を促進する助けになってきた。ただ、私たちは短期的な利益を企業に求めるのではなく、長期的なエンゲージメントにより、資本効率やビジネスポートフォリオを段階的に改善することが大切だと信じている。



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