政策効果が発現、世界経済は底堅く推移=2026年の世界経済見通し-ステート・ストリートの新原氏
2025年12月22日 08時30分

米系大手運用会社ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントのチーフ・インベストメント・オフィサーの新原謙介氏は、時事通信社のインタビューに応じ、2026年の経済見通しについて「これまでに決定された財政による景気刺激策の効果が顕在化し、欧米で利下げが実施される中で、世界経済は慎重さを伴いながら成長が続くだろう」と予想した。主な発言は以下の通り。
2025年は政策の不透明性や地政学リスクが一つ一つクリアにされてきた。その結果、2026年はさまざまなインベントにおいて明確な懸念事項がすぐに列挙できる状況ではなく、視界が良好になってきたと言えるだろう。政策的なものよりも、経済ファンダメンタルズや企業業績をしっかり見守っていきたい。
◆米国
まず米国経済だが、雇用面で減速が見込まれるものの、経済の基調は決して弱くなく、景気はソフトランディングすることを予想している。2026年の注目ポイントは、これまで実施されてきた政策の効果が顕在化してくることだ。例えば「一つの大きく美しい法案(One Big Beautiful Bil Act、OBBBA)」では、さまざまな分野で税額控除や減税の延長などの景気刺激策が実施されるため、経済が大きく減速することはないだろう。
米国の個人消費については、所得の高い世帯と低い世帯で違いが見られる。ただ、26年後半には米中間選挙が控えていることに加えて、金融面でも米連邦準備制度理事会(FRB)が複数回の利下げを実施すると予想しており、経済成長をサポートするだろう。
◆欧州、日本
欧州経済においても、例えばドイツが5000億ユーロ規模の財政パッケージで、防衛・インフラ投資を推進している。2026年は、そうした政策の効果が試される時期になると、ポジティブな見方をしている。
日本も、財政的な支援が行われる中で、2026年は、潜在成長率を超える成長を達成するだろう。日銀は、今年12月と来年2回の利上げを行い、政策金利は1.25%に引き上げられるだろう、利上げより円安が止まることを想定している。物価が落ち着くことで、実質所得がプラスに転じて、経済成長を支えるというシナリオを描いている。
このように、2026年のグローバル経済は、慎重さを伴いながらも成長が続く見通しを持っている。
◆2026年のマーケット
株式市場に大きなネガティブな材料が見えるわけではない。米国株は、株価上昇によりバリュエーションが上昇したが、企業収益が拡大しているため、株価が大きく割高ということではない。
2026年については、2025年のような加速度的な上昇は見込めないだろうが、バランスの良い上昇が期待される。小型株はバリュエーションが割安だ。遅れて出てくる財政・金融政策の効果により、業績が改善し、魅力が高まると見ている。
2026年の日本株は、米国株の上昇を背景に、上昇期待をキープしていくだろう。2026年末には、日経平均株価が5万2500円を中心に、上値では5万5000円にトライすることもあるだろう。
セクター別には、米国のAIブームの波及効果を受ける半導体企業に加えて、賃金が上昇し消費が拡大する中でAIを使って効率性を高め価格形成力を強めている内需関連企業や、金利上昇の恩恵を受ける銀行株が魅力を増すだろう。
米国株はグロース(成長株)が中心の市場であるのに対して、日本は内需関連のバリュー(割安株)が注目される市場だ。日本経済がデフレからインフレに転換する中で、企業収益や効率性が改善する内需関連企業やバリュー企業に投資する意義は大きい。
米国の短期金利については、利下げを十分に織り込んでおり、ここから短期金利が大きく低下する環境ではないと見ている。一方で、米国の長期金利については、利下げによって4%台から3%台に低下すると予想しており、利回りの低下(債券価格の上場)が投資機会になるだろう。
ステート・ストリートは、世界最大の金(ゴールド)のETF(上場投信)を米国に上場している。11月には、東証に金を含む5本のETFを上場した。2025年の金市場は、構造的な投資家である中央銀行に加えて、新規の買い手として機関投資家や個人投資家が加わり、投資家層が広がった。2026年も金価格は強含む展開になると見ている。



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