中国企業、シンガポールに相次ぎ拠点=リスク分散が狙いか
2020年09月15日 16時56分
【シンガポール時事】インターネットサービス大手の騰訊(テンセント、広東省深セン市)など中国のIT大手各社が、シンガポールでの地域拠点開設や投資拡大を探る動きを活発化させている。米国などで逆風が強まる中、事業の一部を中国や米国などから東南アジアへ移転させ、リスク分散を図る狙いもあるとみられる。
テンセントは東南アジアの地域統括拠点をシンガポールに開設する。ブルームバーグ通信が15日伝えた。テンセントは新オフィス開設について「東南アジアや他の地域での成長事業を支援するため」と説明。域内では既にマレーシアやインドネシア、タイに事業所がある。ハイテク関連や事業開発をはじめとする各種職種で人材募集を進めている。
ある関係者はブルームバーグ通信に、経営陣の中でシンガポールはかねて地域拠点の候補地だったが、地政学的緊張の高まりで計画が早まったと話した。テンセントは国際ゲーム出版事業など、運営の一部を中国国外に移転する検討を進めているという。
トランプ米大統領は8月6日、テンセントが運営する対話アプリ「微信(ウィーチャット)」や、中国のIT企業・字節跳動(バイトダンス)の短編動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」に関連する取引を45日後に禁じる大統領令に署名した。
ロイター通信によれば、バイトダンスもシンガポールに東南アジアの拠点を設ける計画。数十億ドルを投資し、数百人を雇用することを計画している。
不測の事態に備え、米国に置くデータをバックアップするために、シンガポールでサーバーの購入を拡大させているという。
一方で中国電子商取引最大手の阿里巴巴(アリババ)集団は、シンガポールの配車サービス大手グラブへの出資に向けて交渉を進めていると報じられた。出資額は30億米ドルと、グラブの企業価値(推定140億米ドル)の2割強に相当するもよう。
グラブはマレーシアやインドネシア、ベトナム、タイなど東南アジア各国で、配車サービスやフードデリバリー、電子決済、金融サービス事業を展開する。アリババはグラブへの出資を通じ、東南アジア事業の拡充を図りたい考えとみられる。(了)