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ソフトバンクG、アーム売却で投資事業てこ入れ=株式非公開化観測も

2020年09月14日 16時53分

株主総会で財務改善策を説明するソフトバンクグループの孫正義会長兼社長=6月25日(オンライン中継画面より)
株主総会で財務改善策を説明するソフトバンクグループの孫正義会長兼社長=6月25日(オンライン中継画面より)

 ソフトバンクグループ(SBG)<9984>は14日、傘下の英半導体設計大手アームについて、米半導体大手エヌビディアへの売却で合意したと発表した。売却額は最大400億ドル(約4.2兆円)。IT事業戦略の中核企業を手放し、膨らむ手元資金で低迷する投資事業のてこ入れを図る。だが、具体的な次の一手は見えづらく、金融市場ではSBGが株式非公開化を検討するとの観測も出てきた。

 アームの売却手続きは2022年3月の完了を目指す。このうち、少なくとも215億ドル(約2.3兆円)相当はエヌビディア株を対価に売却。SBGは6.7~8.1%程度を取得する見通しで、孫正義会長兼社長は「エヌビディアの主要株主として、アームの長期にわたる成功に投資していく」と表明した。

 SBGは10兆円規模を運用する「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)」が低迷しており、今年に入り負債圧縮と自社株買いに向けた資産売却を加速させた。8月末時点で6兆円規模の調達にめどを付けており、アーム売却で2兆円近い現金が上積みされる見通しだ。

 しかし、新型コロナウイルス感染拡大で経済環境は激変。米国と中国の分離も加速する中、中国・字節跳動(バイトダンス)などSVF既存投資企業も不透明さが増している。

 SBGは今年半ばごろから、米ハイテク株の取得やデリバティブ(金融派生商品)取引に向かったが、株式市場から十分な評価を得られていない。株式評価額が保有資産(時価)の半値程度にとどまっており、英メディアなどは14日までに「SBGが経営陣による自社買収(MBO)を検討している」と報じた。

 孫氏にとって、株式を非公開化すれば、市場の短期評価に影響されない次世代投資の環境が整うだけに、「一連の資産売却はその布石」(投資銀行幹部)との見方も根強い。だが、SBGの時価総額は13.5兆円に上り、MBO資金の調達は容易ではない。日本の株式市場でトヨタ自動車に次ぐ時価総額2位のSBGが上場廃止となれば打撃は大きく、MBO観測は波紋を広げている。(了)

 

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