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〔週間外為見通し〕安倍首相の健康状態を円が気遣う展開=岡三オンライン証・武部氏

2020年08月21日 16時12分

首相官邸に入る安倍晋三首相=20日午後、東京・永田町
首相官邸に入る安倍晋三首相=20日午後、東京・永田町

 武部力也・岡三オンライン証券投資情報部長兼シニアストラテジスト=「日本の首相が病院で検診」-。これは17日に海外に伝わった安倍首相の動向だ。時間軸をさかのぼると4日に一部週刊誌が報じた安倍首相の健康状態を不安視する内容に対し菅官房長官が「全く問題ない」と一蹴。12日に自民党の甘利税制調査会長が、15日には麻生副総理兼財務相がそれぞれ約1時間の会談を安倍首相と行ったと伝わり、16日に甘利税制調査会長がテレビで「ちょっと休んでもらいたい。責任感が強く、自分が休むことは罪だとの意識まで持っている」と発言。そして前出の17日午前に安倍首相は(定期診断として)大学病院で検査を受けている、と報じられた。同夜、麻生副総理兼財務相は、安倍首相が新型コロナウイルスへの対応などで147日連続での執務を挙げ「あれだけ休まなかったら、普通だったら体調おかしくなるんじゃないの」と麻生節をうならせた。確かに一国のトップとはいえハード過ぎる、と思う一方で検診入院前に側近の甘利氏、閣内重鎮の麻生氏との会談は、政権運営を巡っての課題を協議(期間限定の減税案や秋の改造内閣人事、との観測も)し、安倍首相の健康不安説の打ち消しに回ったとの臆測が永田町関係者らから広がった。折しも17日朝に内閣府が4~6月期実質GDP速報値を前期比年率27.8%減で発表。新型コロナ感染拡大を抑制するため4月に政府から緊急事態宣言が出され、その後、経済活動が極度に制限されたことでの結果を金融市場は織り込み済みだった。しかし、一般報では「統計開始以降、最大の落ち込み」「リーマン・ショックを超え、戦後最悪」「マイナス成長は3四半期連続」「回復は数年先」と扇情的見出しが躍った。これに対しても安倍首相の心労が一層強まったのでは、との観測も一部では推考されていた。

 ◇安倍首相の公務再開で確認すべきこと

 結局、安倍首相は3日間の夏季休暇を終え、19日から公務を再開。「体調管理に万全を期すために、おととい検査を受けた。これから再び仕事に復帰して頑張っていきたい」と述べている。そこで今般の安倍首相健康問題をめぐっての市場反応を確認しておきたい。それは①第一報に対し海外投資家は現政権継続の不安とアベノミクス頓挫に警戒を覚え②ドル・円オプション市場では円コールの大量購入で変動率が大幅続伸。リスクリバーサルでは円コールスプレッドが連日拡大(※将来、ドルを売って円を買う権利・ドルプット(円コール)オーバーの数値は高くなるほど市場は円高傾向を見込んでいる)③1ドル=107円台突破難と対主要通貨でのドル売りに乗じて17日正午ごろは1ドル106円50銭圏だったのが8/19午前9時ごろは105円台割れの動きをうかがわせた、である。もっとも節目の1ドル105円ちょうど水準ではオプション設定での防戦観測や機関投資家によるドル買い円売り意欲が指摘され、前出の安倍首相の公務再開で直物・オプション市場での円買い仕掛けは撤退を余儀なくされた格好だ。では、今後の焦点は何か。やはり、国内勢による円高の臨界点、下限イメージとなろう。政府と通貨当局の一体化、政治動向を肌感覚で知る国内市場参加者の逆張り・買い待機の思考だ。ドル円売買比率を見ると7月下旬時同様、今般もドルの買い持ち高(円売り)が急増。FX個人投資家の総称「ミセスワタナベ」の投資行動も日本の政治事情としても過度な円高は受け入れ難いと読みドル円“逆張り買い”戦略が反映させているようにうかがえる。仮に安倍政権退陣でほかの自民党有力者に政権が「禅譲」された場合でも日銀黒田総裁の任期は2023年4月までだ。また、黒田総裁までもが途中退任し、「ポスト黒田」に緊急登板した総裁も2%物価目標の旗を直ちに降ろして大規模緩和終了を宣言するとは現実的には考え難く、また金融政策の大幅修正との思惑は円急騰を招きかねず、それを通貨当局が看過するとも思っていないのだろう。つまり国内政治・政局をめぐる局面では、海外勢の円買いに対してFX投資家は当面、円売りで対峙(たいじ)する可能性が極めて高そうだ。円高急進を抑止する重要な担い手となる。8 /27-28はジャクソンホールでカンザスシテイ連銀のシンポジウム会合がオンラインで開催される予定だ。筆者は11月大統領選挙に向けてトランプ現職大統領・バイデン前副大統領の両陣営から本格的な動きがなされ始めると想像しているが対してパウエル議長は今般のシンポジウムでも双方にくみしないとした中立姿勢を取るものと読んでおり、今後の金融政策に対しても深掘りの示唆は示さない可能性で考察している。

 ◇8/24週ドル円焦点

 上値焦点は8/13-14高値圏107.05-06、7/21-23の高値水準107.20-40圏への回復力、7/20高値107.535。超えれば7/7-8高値圏107.72-80意識。テクニカル観点では日足雲帯(106.762-107.963)の圧迫意識。下値焦点は8/19安値105.09。割れると7/31安値104.18(午前11:45頃)後、財務省と金融庁、日銀の3者会合、岡村財務官のけん制発言が伝わり始めての上昇起点104.30からの上昇価格帯が注視され104.85-80、104.70、104.55を意識。104円台維持が最終橋頭保。
【来週のドル円予想レンジ】104円50~107円00銭(了)

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〔週間外為見通し〕について
外為市場担当記者による翌週のマーケット展望記事です。市場の動きに影響を与えそうな経済統計などの予定を押さえながら、次週の動きを予測。毎週末に配信しています。銀行や証券、外為ブローカーの専門家による市場予測記事も配信しています。

 

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