〔記者ノート〕商品アナリスト検定廃止も「知識の普及啓発は強化」=東商取・山岡氏
2020年08月20日 10時54分
▽上場商品に関する専門的知識を試す東京商品取引所の検定試験「専門性向上試験」が7月27日付で廃止された。合格者は「商品アナリスト・東京商品取引所認定」の名称を名刺などで使うことが許されていた。試験開始時から中心的な役割を果たしてきた山岡博士・総合業務室上席企画役は「少し寂しいが、商品先物の知識の普及啓発は強化していきたい」と決意を新たにしている。
▽試験は、東商取の前身である旧東京工業品取引所が金先物オプションを上場する際、商品先物業者の外務員らに知識の定着を図ることを目的として、講習会の後に実施する形で、2004年度からスタート。最終的には、貴金属、エネルギー、ゴム、農産物、オプションの5科目で実施してきた。山岡氏は「問題を作るのが大変で、特に間違いがないかチェックするのにすごく時間がかかった」と振り返る一方、「回を重ねるごとに合格率が上がっていき、商先業者や当業者などの知識レベル向上の手応えを感じていた」と話す。
▽東商取は廃止を検討するに当たり、同社が日本取引所グループ(JPX)の子会社になり、同じJPX傘下の大阪取引所に貴金属などの市場が移管されることになったのを機に、商先業者などにアンケートを実施。山岡氏によると、「東商取の職員が作成していた試験用のテキストは、社員研修などで使えるので残してほしい。だが、『商品アナリスト』の資格は知名度がいまひとつで、顧客に伝えても反応が鈍い」との声が多かったという。こうしたアンケートの結果に加え、情報化社会の中でテキスト内容の陳腐化が速まっていることから、検定試験の廃止に踏み切った。
▽テキストは今後、時代が流れても変化しにくい経済の基礎的条件(ファンダメンタルズ)の解説に重点を置いた内容に改訂。新テキストは来年秋にホームページに掲載する考えだ。一方、タイムリーな情報に関しては、セミナーなどで逐一伝え、それぞれの長所を生かした普及啓発を進める方針だ。山岡氏は「日本の商品先物市場で流動性を高めないと、先物価格が指標にならず、それを基に現物価格が形成されることもない。国内の需給を反映しない価格で輸入しなければならない事態になる恐れがあり、産業政策上問題だ」と指摘。その上で「国内商品市場の活性化のため、普及啓発にずっと取り組んできたし、今後も続けていく」と力を込めた。〈代〉