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〔深読み米国株〕上値追い継続か=大量の待機資金が買い時を待つ

2023年12月26日 11時35分

AFP=時事AFP=時事

 例年この時期は来年の相場予想が市場参加者の関心を集める。2024年は米国を含む世界景気減速への懸念が強いことに加え、上値を追ってきた大型IT銘柄の反動安リスクも警戒されている。しかし、こうした不安要因を踏み越えて、来年も米国株は上昇を続ける可能性がありそうだ。

 12月22日時点の主要株価指数の上昇率はナスダック総合指数が22年末比43%、S&P500が24%、ダウ工業株30種類平均が13%など。23年最後の連邦公開市場委員会(FOMC)を終えた12月13日以降は早期利下げ観測を背景に買いが強まり、ダウが19日まで5日連続で史上最高値を更新するなど華々しい年末ラリーになった。

 FOMCメンバーによる政策金利予想の分布を示すドット・プロットでは、24年に0.75%の利下げが予想されている。金利先物が織り込む将来の金利水準を示すCMEのFedウオッチツールでは、24年12月FOMCまでの利下げ幅がドット・プロットの0.75%かそれ未満にとどまる確率は1%に満たない。1.5%以上の大幅利下げ確率は8割を超える。年末ラリーは連邦準備制度理事会(FRB)による連続大幅利下げを土台に成り立っていたようだ。利下げ観測の裏側には、景気の減速観測がある。

 もっとも、金利や景気だけが株価を決めるものではない。資産運用で世界最大級の米ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ(SSGA)は直近のマクロ経済見通しで、24年は世界的に低成長が継続すると予想。米国は経済成長率が23年の2.0%から24年には1.1%に減速するとみている。ただ、6月時点での0.5%成長からは上方修正されており、市場に広がる経済のソフトランディング期待と整合的だ。

 株式は景気減速と高金利浸透による資本コスト上昇が業績の下押し圧力となり、不透明感が強いという。こうした外部環境悪化の影響は中小型株に強く出るものだ。一方、今年のS&P500指数の上昇を主導したアップル(AAPL)やアマゾン・ドット・コム(AMZN)など大型IT銘柄については、1株利益の下方修正が少なく「相対的に業績の耐久性が強い」(SSGA)とみられる。

 相場がどのような局面にあっても、最大の株価材料は需給だ。米国株の日本語メディア「バロンズ・ダイジェスト」は12月24日に「株式市場への参加が遅過ぎではない理由」と題する記事を掲載。投資に向けて待機している資金量の目安となるマネー・マーケット・ファンドの総資産が約6兆1000億ドル(1ドル=140円換算で854兆円)と、コロナ禍前を3割上回って過去最高に近い水準に膨らんでいることを紹介した。

 バンク・オブ・アメリカの調査では株式をオーバーウエイトしているファンドマネジャーは15%と、過去のピーク時の60%強を大幅に下回っている。買い増しの余地はまだ大きいようだ。

 12月17日配信の「2024年の株式も今年と同様に予想外の好調か」では、現地ストラテジストや最高投資責任者(CIO)ら6人による株価予想や注目業種・銘柄を紹介している。多くの専門家がバランスシート、利益率、競争力に優れた「クオリティ」株に注目している。大量の待機資金による大型IT株の上値追いが今のところ市場の最大公約数なのだろう。(編集委員・伊藤幸二)

 

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