〔深読み米国株〕イスラエル不安で防衛株急騰=それでも投資先はS&P500か
2023年10月13日 18時50分
イスラエルがパレスチナ自治区ガザでの「地上作戦」を予告し、ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスとの大規模な軍事衝突は避けられない情勢になってきた。一方、米国市場の株価は堅調に推移し、リスクオフの動きは限定的だ。
ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスのイスラエル侵攻は10月7日。イスラエル軍も報復に動き、現地の状況は緊迫の度合いを増すばかりだ。
一方、ハマス侵攻開始前の10月6日から12日までにS&P500、ナスダック総合指数はともに約1%上昇した。S&P500などの堅調は長期金利低下の恩恵が大きい。アマゾン・ドット・コム(AMZN)やアップル(AAPL)といった金利低下が買い材料になる大型IT銘柄の構成比が大きいためだ。10年物国債の利回りは連邦準備制度理事会(FRB)高官の追加利上げに慎重な発言などを受けて、10月3日の4.8%超から11日には4.5%台まで低下している。
ただ、個別銘柄ベースでは凹凸がある。6日から12日にかけての最大値上がり率は、ノースロップ・グラマン(NOC)が最大13.3%と値を飛ばしたほか、ロッキード・マーチン(LMT)が10.5%、ハンティントン・インガルス・インダストリーズ(HII)が10.0%、L3ハリス・テクノロジーズ(LHX)が7.9%などと急騰している。
「バロンズ・ダイジェスト」は11日配信した記事「中東紛争、防衛株上昇が続くと考える理由」で、現地アナリストが防衛株について「ハマスのイスラエル攻撃で株価が上昇したにもかかわらず、まだ過熱していない」とする見解を紹介している。
一方、デルタ航空(DAL)、アメリカン航空(AAL)、ユナイテッド航空(UAL)など大手航空会社株が急落し、航空株に連動するUSグローバル・ジェット投資信託(JETS)は年初来安値を付けた。燃料費高騰のリスクは旅行業界に飛び火し、クルーズ船運航大手カーバル(CCL)やコンチネンタル・ホテルズ・グループ(IHG)も売られた。
個別株の投資家であれば防衛関連株の上昇トレンドを追うか、戦争終結とその後の原油価格安定を見越して航空株の押し目を拾うかになりそうだが、どちらもリスクの大きい賭けだろう。予算膨張をめぐる米連邦議会の対立は根深く、ロッキードなどを潤す防衛費は投資家の期待ほど増えない可能性がある。原油価格はロシアとサウジアラビアの減産による供給不安でイスラエル侵攻前から高止まりしており、戦争終結が原油安に直結する保証はない。
イスラエルでの戦争に起因するリスクを敬遠するのであれば、アマゾンなど大型IT株が左右するS&P500など、金利動向に対して素直に反応するインデックス型商品が無難かも知れない。値動きの分かりやすさは投資家にとって心強いものだ。(編集委員・伊藤幸二)(了)