〔深読み米国株〕◎米国株に逆張りの誘惑=S&P500、高値から7%安
2023年10月20日 19時10分
10月19日のS&P500指数は昨年終値を11%上回るが、7月に付けた今年最高値比で約7%下落している。含み益はあるが、高値からの上げ幅縮小も気になり、投資家の目が他銘柄に向かいやすい株価水準でもある。
今年最高値から7%安はハイテク銘柄が大半を占めるナスダック総合指数も同じ。こちらは昨年末比35%高で、含み益がたっぷりと乗っている様子がうかがえる。
米国株投資ではこれまで、右肩上がりで推移するハイテク銘柄の順張りが利益を生んできた。このため、ハイテク銘柄からの乗り換え先を選ぶには、ハイテク以外の銘柄に逆張りで投資することがリスク分散の観点から一考に値しそうだ。
米国では今年、アマゾン・ドット・コム(AMZN)やアップル(AAPL)など大型銘柄の躍進が目立つ。しかし、市場全体で見れば苦戦気味だ。
ニューヨーク証券取引所に上場する全銘柄の値動きを示すNYSE総合指数(NYA)は昨年末比0.1%高。NYAは時価総額を基にした加重平均で算出するため、アマゾンなど超大型銘柄を除けばマイナス圏で低迷している計算になる。逆張り候補は数ある低迷銘柄の中に埋もれている可能性がある。
米国株メディア「バロンズ・ダイジェスト」はこのところ、逆張り候補の銘柄を次々と紹介している。現地アナリストの目線が値下がりした銘柄の安値拾いに向かっていることを映したものだ。
10月13日配信の「高値から大幅下落の8銘柄は買い」では、飲料・スナック菓子のペプシコ(PEP)が5月の高値から17%安の一方、需要減退観測を覆して直近の売上高や1株利益が市場予想を上回ったことなどを紹介した。17日配信の「低迷する消費者株、逆張り候補の3銘柄」が取り上げたのはP&G(PG)など。19日の記事「返り咲きが近い医療機器6銘柄」では肥満症治療薬による疾病が減少するとの見方が医療機器メーカー株に大幅安をもたらしたと分析し、先行きの不透明な状況は銘柄選びのチャンスを意味するとしている。例えば同記事が取り上げた装置型インスリン管理システムを販売するインスレット(PODD)は、アナリストの目標株価の平均が時価を75%上回っているという。
日本の株式市場には「天底一致」という考え方がある。ある市場や銘柄が天井を打つ局面では、別の業種や銘柄が底値を付けているというもので、一目均衡表を作り上げた一目山人氏の発案だ。ペプシコなど売られ過ぎ銘柄の反騰とハイテク銘柄の下落が同時進行する局面が訪れた時に「天底一致」を思い返してみたい。(編集委員・伊藤幸二)(了)