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〔深読み米国株〕アップルなど6銘柄に売り必至…ナスダック100の特別リバランス

2023年07月12日 17時00分

EPA=時事EPA=時事

 ナスダック証券取引所を運営するナスダックは7月14日、ナスダック100指数(NDX)の特別リバランス(構成比の調整)の結果を公表する。アップル(APPL)など5社6銘柄は構成比引き下げによる売りが予想される一方、売却代金は他銘柄の買いに充てられるため、現金フローは中立だ。リバランスの詳細は発表待ちの段階だが、構成比下位銘柄には思惑的な買いが向かう可能性がありそうだ。

 特別リバランスは2011年5月以来およそ12年ぶり。今回は7月7日発表された。少数の特定銘柄への「過度な集中に対処」するため、7月24日の取引開始前に実施するという。

 ナスダック100はナスダック証券取引所に上場する米国内外100の大型銘柄で構成し、世界の成長(グロース)株の指標として日本や欧州、アジアなど他国の株式市場にも絶大な影響力を持つ。毎年12月に銘柄を見直し、四半期ごとに微調整するが、臨時見直しの今回は銘柄の採用・除外がなく、構成比だけが変わる。

 一方、アップルやマイクロソフト(MSFT)、テスラ(TSLA)などグレート・セブンと呼ばれる7銘柄は株価上昇が著しく、5月26日配信の本連載記事「ナスダック100だけ急伸=上位7銘柄で構成比55%」は、アップルなどグレート・セブンへの資金の集中ぶりを取り上げた。7銘柄で変動の大半を説明できるようでは、わざわざ100銘柄を対象に指数を算出する意味は薄く、ナスダックの決定はむしろ遅すぎた感がある。

 7月11日の取引終了時点のナスダック100構成比はアップルが15%と最も大きく、次にマイクロソフトが12.5%、アルファベット株で議決権のないクラスC(GOOG)が7.6%など。

 ナスダック100についての公式説明文では、構成比4.5%超の銘柄の構成比合計が48%を超える場合、構成比合計は40%に調整される。7月11日時点で構成比4.5%超に該当するのはアップル、マクロソフト、アルファベット・クラスC、同クラスA(GOOGL)、アマゾン・ドット・コム(AMZN)、エヌビディア(NVDA)の5社6銘柄。合計でナスダック100の54.6%を占める。テスラは4.3%で「4.5%ルール」の適用外とみられる。

 6銘柄のナスダック100反映分を40%へ引き下げると、ETFなどナスダック100連動商品から指数構成比の低下に沿って機械的に売りが出てくることになる。ナスダック100はベンチマーク(運用評価やポートフォリオ設計の基準)としても利用され、巨大ETFとして知られるインベスコQQQトラストシリーズ1(QQQ)だけで純資産は2040億ドル(1ドル=140円換算で28兆5600億円)もあり、アップルなどに大量の売りが集中する恐れがある。

 米国株メディア「バロンズ・ダイジェスト」は7月11日に「ナスダックのリバランス、巨大ハイテク銘柄には弱材料」と題する記事を掲載。

 もっとも、指数内のリバランスのため、アップルなど高構成比銘柄の売却代金は他銘柄の買いに充てられる。11日はルーシッド・グループ(LCID)が2.4%高、シリウスXMホールディングス(SIRI)が3.7%高と、ナスダック100の0.5%高を上回る大幅高だった。いずれもナスダック100採用銘柄だが、構成比は0.1%に満たず、今回のリバランスに伴うパッシブ型ファンドへの先回り買いとみられる。(編集委員・伊藤幸二)(了)

 

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