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〔深読み米国株〕◎株式市場への牽制球?…パウエルFRB議長が追加利上げ示唆

2023年06月15日 17時30分

AFP=時事AFP=時事

 米連邦準備制度理事会(FRB)は14日、政策金利を据え置くと発表した。連邦公開市場委員会(FOMC)の結果発表後、パウエルFRB議長は年内の追加利上げを示唆したが、利上げの確度について市場の見方が分かれており、利下げ期待を膨らませる株式市場に向けてFRBがけん制球を投げた可能性もありそうだ。

 2022年3月のゼロ金利解除から今年5月会合まで、FOMCでは10回連続で利上げを決めてきたが、今回は政策金利を年5.00~5.25%で据え置いた。一方、FOMC委員による政策金利見通しの分布を示すドット・チャートの中央値は2023年末が5.50~5.75%(3月時点5.00~5.25%)に引き上げられた。ドット・チャートに従えば、年内あと4回のFOMCで、0.25%利上げが2回実施される。パウエル議長は労働市場の急回復を指摘し、インフレリスクの根強さを強調。「FOMC参加者のほぼ全員が年末までにいくらかの追加利上げが適切だと予想している」と述べ、利上げに積極的な「タカ派」色を一段と強めた形だ。

 ただ、FF金利先物が織り込む将来の政策金利を示す「CMEFedWatch」のデータは年内2回利上げに懐疑的な市場の雰囲気を伝えている。次回FOMC(7月25~26日)では、0.25%利上げ予想は約7割にとどまり、2回連続の金利据え置き予想が3割を占める。年末FOMC(12月12~13日)まで2回以上の利上げ予想は1割にとどまり、利下げ予想も6%ほどある。

 大和総研の末廣徹チーフエコノミストはFRBのタカ派姿勢に対して「ブラフ(はったり)ではないか」と疑っている。末廣氏は「(金融緩和志向の強い)ハト派色が強まらないように利上げ見通しを引き上げたのでないか」との見方を披露している。

 SMBC日興証券の森田長太郎シニアフェローは6月15日付の「JGBモーニングコメント」で、FRBが「政策自由度を引き上げることに成功した」と指摘する。FRBが6月FOMCで金利据え置きと金利見通し引き上げたことで、利上げの間隔がFOMC1回か2回か、年末までの利上げ幅が0.25%か0.50%かの選択が可能になった形だという。

 仮に、ドット・チャート通りに年末まで0.50%利上げなら、株式市場にとってある程度織り込み済みとなる。0.25%利上げや金利据え置きならポジティブサプライズとなりそうだ。大和証券の末廣氏は「ドットチャートはブラフであると高をくくってリスクオンに進めば、結果的にFRBが追加利上げに動く可能性はある」としたうえで、「FRBが市場を壊すような利上げに動く可能性は低いだろう」とみている。

 米国株の日本語媒体「バロンズ・ダイジェスト」は6月15日配信した「まだ上昇余地がある6銘柄」とする記事で、アルファベットなどを取り上げている。また、14日配信記事「アップル、時価総額3兆ドル目前」では、アップル株が内包する強弱それぞれの材料を紹介している。アルファベットやアップルがさらに上値を追うとすれば、足元のナスダック銘柄主導の上げ相場継続が期待できそうだ。(編集委員・伊藤幸二)(了)

 

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