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〔深読み米国株〕弱気相場は最終段階へ…「金利より景気」で逆業績相場の色合い

2023年01月20日 15時10分

AFP=時事AFP=時事

 ダウ工業株30種平均は1月19日までの3日続落で合計1258.05ドル安と下げ足を速めた。株価は相変わらず不安定だが、中長期的な騰落サイクルの最終段階とされる「逆業績相場入り」をうかがわせ、相場局面の変化を示唆している。

 株式市場は大局的に、金利低下をはやす「金融相場」で上昇を開始し、景気や企業業績拡大を評価する「業績相場」で天井を付けるとされる。その後は昨年のような金融引き締めを嫌う「逆金融相場」を経て、景気や業績悪化がダメ押しになる「逆業績相場」で1サイクル完了とされる。

 超短期トレーダーでもない限り、投資家は足元の相場がどの局面にあるかを把握しておく必要がある。逆金融相場の渦中であれば下落余地が大きく、押し目買いはいたずらに含み損ポジションを膨らませるリスクが大きい。しかし、逆業績相場なら長い下落局面の折り返し点を通過した可能性があり、資金量と相談しながら買い下がりを考え、将来の金融相場入りに備える好機になり得る。

 今週18日は典型的な逆業績相場の展開だった。ダウが613.89ドル安と下げ足を速める一方、10年物国債の利回りは3.3%台後半と昨年末を約0.5%下回る水準に低下した。株価は金利に影響される予想PER(株価収益率)と景気や業績動向を反映する予想EPS(1株利益)の積に分解される。このため、金利低下によるPER押し上げ効果を吹き飛ばしてダウが急落したのは、将来の業績悪化を織り込み、予想EPS低下が本格化したためと推測される。

 同日発表された昨年12月の経済統計は軒並み低調だった。商務省発表の小売売上高は前月比1.1%減と2カ月連続で減少し、全米小売業協会が集計した昨年11、12月の小売売上高は同協会予想を下回った。卸売物価指数や鉱工業生産も市場コンセンサスに届かなかった。米国では決算発表の集中期を控えており、昨年12月の景気減速は2023年の業績悪化懸念に直結し、株価の下押し圧力が一気に強まることになった。

 同日はセントルイス連銀のブラード総裁とクリーブランド連銀のメスター総裁がインフレ抑制に5%超までの利上げが必要だと強調したが、債券市場は金利低下で反応した。市場の関心は金融政策から景気や企業業績に移りつつあるようだ。

 米国株の日本語媒体「バロンズ・ダイジェスト」は19日、「ソフトランディングで注目すべき6銘柄」「ハードランディングで注目すべき7銘柄」と題する記事2本を配信した。景気が軟着陸するシナリオでは、「どんな景気循環株でも買えばいいというものではない」と注意喚起した上で、住宅や商業施設の床材を製造するモホーク・インダストリーズなどを紹介。景気失速シナリオでも「業績が未達となっても株価が上昇する可能性がある」などの特長を持つ7銘柄を挙げている。(編集委員・伊藤幸二)

 

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