〔月間マーケットサマリー〕(2022年12月)
2023年01月04日 11時25分
【為替】
◆ドル円、一時131円台半ば=「日銀ショック」で急落
ドル/円(日銀) ユーロ/円(日銀)
月初 137円34~38銭 143円15~19銭
高値 138円11銭(1日) 146円54銭(16日)
安値 131円50銭(21日) 140円09銭(21日)
終値 132円13~15銭 140円74~78銭
12月の外国為替市場のドルの対円相場は、日銀が19~20日に開催した金融政策決定会合で長期金利の許容変動幅を従来のプラスマイナス0.25%から同0.5%に拡大することを決定したことなどを受け急落した。市場では、日銀が大規模金融緩和策を修正したとの思惑からドル売り・円買いの動きが強まり、20日には約4カ月ぶり安値水準となる132円台前半を付けた。「日銀ショック」の余韻を受けた売りは翌21日も続き、一時131円50銭台まで値位置を切り下げた。
月初は、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が11月末の講演で、12月15日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ幅縮小を示唆したことや、10月の米個人消費支出(PCE)物価指数や11月の米ISM製造業購買担当者景況指数(PMI)が市場予想より弱い内容だったことを受け米長期金利が低下、ドル円は137円台前半から134円50銭台まで大幅下落した。
一方、日銀は20日の金融政策決定会合終了後に長期金利の許容変動幅の拡大を発表。これを受け、市場では日銀が出口戦略の第一歩を踏み出したとの見方が台頭、ドル円は日米金利差縮小が意識される形で、133円台前半に急落した。翌21日もドル売り・円買いの流れは継続し、131円台半ばまで下押した。
日銀の黒田東彦総裁は、20日の会見で「出口戦略の一歩ではない」と否定したが、市場関係者からは「市場との対話を軽視した事実上の『サプライズ利上げ』に他ならない」(FX業者)との指摘が聞かれた。日銀は長短金利操作を柱とする金融緩和策の枠組みは維持したものの、FRBの利上げペース減速も相まって、日米金利差の縮小観測が強まる結果となった。
月末にかけては、持ち高調整の動きが強まり、133円台を中心とした水準で推移。ただ、「日銀のさらなる政策修正に対する思惑が後退したわけではない」(大手証券)との見方から戻りは鈍く、132円台前半で年内の取引を終えた。
【株式】
◆日経平均、円高で一時2万6000円割れ=NYダウも景気後退不安で軟調
日経平均 NYダウ
始値 2万8273円13銭 3万4533.59ドル
高値 2万8423円46銭(1日) 3万4712.28ドル(13日)
安値 2万5953円92銭(29日) 3万2573.43ドル(22日)
終値 2万6094円50銭 3万3147.25ドル
【国内株式】12月の東京株式市場の日経平均株価は、世界的な金融引き締めが景気後退を招くとの不安感に加え、日銀による「事実上の利上げ」を受けた円高進行が嫌気され、徐々に水準を切り下げた。2万6000円を割り込んだ水準では、自律反発狙いの買いも見られたが、株価の戻りは鈍いまま年内の取引を終えた。
月初は米長期金利の低下を受けた円高・ドル安の流れが嫌気され、自動車を中心とした輸出関連株売りが相場全体の足を引っ張った。注目された11月の米消費者物価指数(CPI)の伸びが鈍化し、米国のインフレが収束に向かうとの期待感を背景に、14日には終値で2週間ぶりとなる2万8000円台を回復。しかし、同水準での売り圧力は強かった上、11月の小売売上高などのさえない米経済指標を受け、一転して16日の下落幅は500円を超えるなど、株価は乱高下した。
畳みかけるように、日銀による長期金利の許容上限の拡大が20日に決まると、市場は「日銀ショック」に見舞われた。大きく円高に振れた為替相場になびき、輸出株が売り込まれた結果、日経平均は終値で2万7000円を割り込んだ。結局、翌21日まで5営業日続落し、この間の下落幅は1800円近くとなった。最終的には、日銀も主要中銀の引き締め競争に加わる格好となり、市場は早々と、金融緩和修正やその先にあるイールドカーブ・コントロールの撤廃まで見込み始めた。
さらに、中国での新型コロナ感染の急拡大もあり、29日は取引時間中に3カ月ぶりに2万5000円台まで下押した。大納会は3日ぶりに小反発し、一段安は回避したものの、4年ぶりに前年水準を下回った。
【海外株式】12月の米株式市場は、2023年も米欧の積極利上げが続き、米国経済の「軟着陸」が困難との見方が優勢となったことで、下落基調が鮮明となった。米長期金利が低下傾向を強めたにもかかわらず、IT関連銘柄で構成されるナスダック総合指数すらも軟調地合いをたどり、投資家心理の冷え込みを反映する相場展開となった。
上旬は、堅調な11月の米雇用統計を受け、米連邦準備制度理事会(FRB)の高金利政策の長期化やターミナルレート(政策金利の最終到達点)の引き上げを巡る懸念が先行し、5日のNYダウは終値で3万4000ドル割れとなった。注目の米CPIの伸び率が市場予想を下回り、短期筋による押し目買いも誘われたが、14日まで2日間開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)がタカ派姿勢を強めた一方、弱い内容となった小売売上高をきっかけに、15日は700ドル超の大幅安に見舞われ、19日までの4営業日での下げ幅は1400ドル近くに達した。12月の米消費者信頼感指数の上振れを材料に、21日はいったん戻りに転じたが、上値は重く、その後は3万3000ドルを挟んだ一進一退で、23年への警戒が色濃く現れる取引が続いた。
年間ベースで見れば、ダウは4年ぶりに前年末の水準を下回った。下落率は約9%と、リーマン・ショックのあった08年(34%)以来、14年ぶりの大きさとなった。
【債券】
◆長期金利「日銀ショック」で一時0.480%に=米金利は持ち直す
新発長期国債利回り(BB) 米10年物国債利回り(米財務省、終値)
始値 0.250% 3.53%
高値 0.245%(9日) 3.42%(7日)
安値 0.480%(21日) 3.88%(28、30日)
終値 0.410% 3.88%
【国内債券】12月の東京債券市場は、超低金利政策を掲げてきた日銀が大規模緩和策の修正を突如決めたことで、パニック売りが殺到し、10年債利回りは一時0.480%に急上昇。日銀は連日のオペを繰り出し、売り圧力を幾分和らげたが、一度広がった金融緩和の修正観測は収まらず、追い込まれた日銀の印象を強く残した。
12月は月初から10年物国債の取引不成立の日が続き、市場機能の低下がうかがわれる展開となった。出合いがあっても、日銀の許容上限の0.250%で張り付く状態となり、海外勢の一部による根強い日銀の政策修正の思惑が反映された。ただ、米物価の上昇が峠を越えた可能性が取り沙汰される中、日銀による金融引き締めは企業の借り入れや利払いの増加につながるとの指摘もあっただけに、大勢は19、20日の金融政策決定会合の現状維持、「無風通過」を見込んでいた。
ところが、主要中銀の利上げ競争にも「不動」を貫いてきた日銀は20日、長期金利の上限を「0.25%程度」から「0.5%程度」へと拡大すると発表。市場は「実質的な利上げ」と受け止め、利回りは発表当日に0.460%、翌21日には0.480%と、いずれも2015年7月以来の水準に跳ね上がった。月末にはマイナス金利の解除まで見越して上昇し始めた中期債利回りに対し、日銀は2年物や5年物も指し値オペの対象に加え、金利高圧力の抑制姿勢を強めた。もっとも、下落幅は限られ、新たな上限となった0.5%近辺での攻防が年明け以降に強まる「催促相場」のシナリオをにじませながら、年内の取引を終えた。
【海外債券】12月の米債券市場では、月初は過度な利上げリスクを意識した買いが先行し、10年債利回りは3.50%近辺で推移した。ただ、中盤以降は「日銀ショック」の波及や中国政府による新型コロナウイルス規制緩和などを背景に、利回りは徐々に上昇した。
市場は、月内に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げペースの減速を織り込んでいたものの、金融引き締めの長期化そのものが招く景気悪化に意識が向かい始めたことから、10年債利回りは2日に一時3.49%と9月中旬以来の水準を付け、7日には3.42%まで低下した。しかし、22日に発表された2022年7~9月期の実質GDP(国内総生産)確定値が上方修正されると、米経済の「軟着陸」の素地がそろいつつあるとの思惑が強まり、債券売りに転じた。日銀の唐突な政策修正が世界的な引き締め警戒を高める一因となったほか、中国政府による新型コロナ感染にかかわる水際対策の大幅見直しが伝わったことも、投資家のリスク選好を誘い、27日からは10年債利回りの3.80%台が定着する流れとなった。
一方、利上げ停止も視野に入った米国と異なり、今後も引き締め継続を示す欧州中央銀行(ECB)の政策姿勢を眺め、独債券利回りは終盤にかけて上昇基調を強めた。とりわけ、金利見通しを反映する2年債の利回りは、27日に2.714%に上昇。ロイター通信によれば、08年以来の高水準だった。年内最終取引日だった30日はこれも上回り、2.736%を記録した。(了)