〔深読み米国株〕◆利上げで急落説に異論…真因はGAFAM+Tのバリュー株化?
2022年12月28日 14時00分
2023年はアップルなど大型IT株とテスラを総称する「GAFAM+T」の成長株からバリュー株への転換が市場参加者の関心事になりそうだ。米国金利とGAFAM+Tの株価の動き次第では、2022年の米国株安の原因が本当に連続利上げだったか検証することにもなる。
GAFAMはグーグル(アルファベット)、アップル、フェイスブック(メタ・プラットフォームズ)、アマゾン、マイクロソフトの頭文字をつなげた略称。これにテスラを含めたGAFAM+Tの6銘柄の時価総額は合計6兆5347億ドル(1ドル=135円換算で882兆円)に上り、米国市場全体に大きく影響する。
3連休明け27日の米国市場では、ダウ工業株30種平均が昨年末比8.5%安の一方、ナスダック総合指数は33.8%安と値崩れが著しい。GAFAM+Tでは、テスラが昨年末比7割安と値を消し、アマゾンはほぼ半値。時価総額が米国最大のアップルは26.8%安だが、これでも傷は浅い方だ。
米国株投資メディア「バロンズ・ダイジェスト」が12月26日付で配信した「テスラがグロース株からバリュー株に変身?」では、テスラの2023年の予想株価収益率(PER)が約22倍に低下したことを紹介。現地アナリストによる「2023年にはグロース(成長)株ではなくバリュー(割安)株になる可能性がある」「長期投資家には非常に魅力的な水準に近づいている」とするテスラ株への見解について議論を展開している。
テスラは2010年の上場以来、グロース株と位置付けられてきた。PERは50倍超えが常態化し、世界首位の電気自動車販売台数が高いPERを正当化してきた。
しかし、テスラの予想PER22倍はS&P500の約17倍を上回っているが、Russell2000の22.6倍には届かない。PERを見る限り、テスラはすでにグロース株を卒業したように映る。
GAFAM+Tの昨年までの高株価は投資家の熱烈な成長期待がPERを押し上げることで成り立っていた。しかし、電気自動車でいえば2022年7月に中国BYDの販売台数がテスラを抜いたことが話題になった。トヨタや独フォルクスワーゲンの追い上げは技術面でも生産面でも著しい。上場当初のような独走状態から量産化による激しい価格競争へとテスラを取り巻く事業環境は明らかに変化している。アップルなど巨大IT企業もすでに十分大きく、高PERを正当化する連続2けた成長はかなりハードルが高そうだ。
10年物米国債の利回りは10月に4%台半ばまで上昇したが、足元では3%台後半で推移している。2023年にインフレが沈静化して米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを停止するとのシナリオを織り込んだ水準だ。
市場の見立て通りインフレが収まり、株価に影響する長期金利が低下に向かった時にGAFAM+TのPERが再上昇して株価が回復するのか、それとも市場全体のPER上昇に取り残されるのか。投資家によるGAFAM+Tの位置づけが成長株なのか割安株なのかで大きな違いが出てくるだろう。FRBの利上げ休止や金利低下がナスダック総合指数などの反転に直結しないリスクを意識しておく必要がありそうだ。(編集委員・伊藤幸二)