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〔潮流底流〕東証新市場の「顔」出そろう=企業価値向上が最重要課題―将来退場も

2022年01月11日 18時41分

4月に発足する新市場への上場企業を公表し、スピーチする東京証券取引所の山道裕己社長=11日午後、東京都中央区4月に発足する新市場への上場企業を公表し、スピーチする東京証券取引所の山道裕己社長=11日午後、東京都中央区

 今年4月に発足する新しい東京証券取引所3市場の上場企業が11日、出そろった。グローバル企業が顔を並べる最上位「プライム市場」には東証1部企業の8割超が移行。大幅な絞り込みには至らなかったものの、厳格化された基準に達していない場合、将来退場を迫られかねない。各社は価値向上に向けた取り組みが最重要課題となる。

 ◇「スタートライン」強調

 「企業価値向上に向けた長い道のりのスタートラインだ」。東証の山道裕己社長は11日、新市場の所属企業公表に合わせてスピーチし、成長する企業とそれを支える投資家の好循環の形成を目指す考えを強調した。

 再編は各市場の特性を明確化し、企業に持続的な成長を促すことで、国内外の投資を呼び込むのが狙いだ。2013年の大阪証券取引所(現大阪取引所)と東証の経営統合後、二つの新興市場が併存し、東証1部には6割もの企業が集中。投資家にとって利便性が低いとの批判は強く、見直しが急務となっていた。

 今回の再編で、東証は海外投資家が重視する流動性が高い株式の比重を重視。プライム企業には流通株式時価総額100億円以上などの厳しい基準を設けた。

 市場選択で難しい判断を強いられたのは、プライム基準に達していない東証1部の617社だ。発表では、296社が「適合計画書」を提出すれば当面はプライムに上場できる「経過措置」の適用を選択。321社は中堅向け「スタンダード市場」を選んだ。

 最上位の看板は資金調達や採用に有利とされ、ブランドにこだわる企業は多い。そうした中で、再編を成長の好機ととらえた企業もある。

 建材などの専門商社「高島」<8007>は、社内で議論の末、プライムを選択した。流通株式時価総額は基準の5割弱、一日の平均売買代金(基準は2000万円)も3割余だが、今後の投資額や中間配当の実施、英文での情報開示などの具体策を計画書で表明。担当者は「成長基盤のある会社を残すいい機会と判断した」と話す。

 新型コロナ禍で打撃を受け、スタンダードを選んだ企業もある。福島県いわき市で温泉リゾート「スパリゾートハワイアンズ」を運営する常磐興産<9675>は流通株の時価総額がハードルとなった。担当者は「基準を満たすには利益水準を上げ、株価を高くする必要がある。まずは赤字脱却に集中するべきだとの結論になった」と明かす。近畿日本ツーリストを傘下に持つKNT-CTホールディングス<9726>はプライム基準をクリアしていたが、維持する負担を考慮し「保守的に判断」(担当者)。業績回復後のプライム入りを目指す。

 ◇効果は中長期に

 再編について、海外投資家からは「スピード感がない」「改善が小幅すぎる」(米資産運用会社)との批判も聞かれる。東証1部企業の大半がプライムに移る上、基準未達企業に対する「経過措置」期間が不明なためだ。

 東証は企業の対応状況を見ながら、経過措置期間を決める方針で、措置終了による企業の絞り込みには数年を要しそうだ。ただ、基準未達の企業は計画の進捗(しんちょく)状況の毎年の開示によって、投資家のふるいにかけられる可能性がある。

 基準未達が続けば上場廃止となる制度変更の効果を期待する声もある。大和総研の神尾篤史主任研究員は「企業は持続的成長を常に意識した行動が求められるようになる。中長期的には市場に影響が及ぶ」と指摘する。(了)

 

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